超物理耐性を持つスライムもゴリ押しで倒す
隊商の護衛たちがモンスターの群れと戦いを繰り広げている。
一抱えほどある、半透明のぶよぶよしたかたまり。意志を持って動く水の塊のような生き物だ。それがうずたかく積みあがって、道をふさいでいる。
群れの中から何体かが、隊商の馬車に向かってぶよぶよと近づいていく。
「あれは……スライムですね。危険度は低く割とどこにでもいるモンスターですが、あの量は異常です。しかも、厄介な特性があって……」
少し離れて様子を伺うモミジにコロンが説明する。
隊商の護衛は3人。剣士2人がスライムを斬り、盾使いがスライムの体当たりを受け止めて押し返していく。
しかし、真っ二つにされたライムは動きを止めない。ぶよぶよと動きながら片割れとくっつき、何事もなかったかのようにまた馬車に向かって動き始める。
「ええい、下がれ2人とも! クソ、このままじゃらちが明かない……どうすれば!」
リーダーらしき盾使いが剣士2人に指示する。
「へいお兄さん! どうしました? 何かお困りごとー?」
そこへ、凄まじい勢いでスライムを蹴とばしながらモミジが颯爽と現れる。
蹴られたスライムは水しぶきのように飛び散って、辺りの地面や木にへばりつく。
「な、なんて威力だ……!」
護衛のリーダーの盾使いが驚いて尻もちをつく。剣士2人は言葉も出せずぽかんとしていた。
バラバラにされたスライムの破片が動き出す。破片1つ1つが動き出して破片同士がくっつき、あっという間に元の1つのスライムに戻った。
そしてまたモミジたちに向かって近づいてくる。
「モミジ様、これがスライムの厄介な特性です。自己再生するので、物理攻撃はほぼ意味がないのです。隊商の護衛の方々、メンバーに魔法使いはいないのですか!?」
「あ、ああ。実は今回、仲間の魔法使いが怪我で参加できなくてな。物理攻撃しかできるメンバーがいないから、スライムの群れに手も足も出なくて困ってたところなんだ」
盾使いが困った顔で答える。
「魔法使いさえいればこの程度のスライムの群れ、なんてことはないんだが。今の俺たちではどうしようもない。一旦クオーツ王国まで引き返して、魔法使いを臨時で雇ってから出直すしか……」
「ちょっと待ってくださいリーダー! そんなことしたら丸1日以上遅れてしまいます! 俺たちが運んでる荷物の中には、一刻も早く患者に届けきゃいけない薬もあるんですよ! 引き返したりして手遅れになったらどうするんですか!」
「だがスライム相手には俺達では手も足も出んのだ! ほかに方法はない」
「――いや、ここでスライムを倒して通ろう」
モミジがスライムの群れに向き合う。回し蹴りを叩き込み、スライム10体をまとめて吹っ飛ばす。
「あ、あんた何を!?」
「見ての通り、物理でゴリ押す! 何十回も叩き潰せば、そのうち再生しなくなるでしょ、きっと!」
モミジが拳と蹴りの連打をスライムの山に叩き込む。たまにスライムが体当たりで反撃してくるが、モミジにはまるで効いていない。
そうしているうちに、何体かのスライムが動かなくなった。
「あ! そういえば聞いたことがありますモミジ様! スライムには小さな核があって、それを潰されると再生しなくなると! 普通は魔法で倒すので気にしたことはありませんでしたが……」
「なるほど、核を潰せばいいのか。それなら!」
モミジがクレハの盾でスライムを叩き始める。
「面積が広い分こっちのほうが核を潰せる確率が高いでしょ!」
何度も盾を叩きつけていく内に、すこしづつスライムが減っていく。
「す、すげぇ。本当に物理ゴリ押しでスライムを倒してる……!」
「魔法を使わずにスライムと戦うなんて、考えたことなかったぜ」
隊商の護衛達はあっけにとられていた。
「モミジ様、微力ながら私も手伝います!」
コロンも近くにあった木の枝でスライムを叩き始める。それを見て隊商の護衛達も剣や盾でスライムを攻撃し始める。 こうしてスライムの除去作業を続け、ついに道が開け始める。
「今だ!」
モミジが残っているスライムの塊に向かって、盾を構えて突撃する。
「とりゃあああああー!」
除雪車のようにスライムを盾で弾き飛ばしながらモミジが道を駆けぬける。
「さあ行って、スライムが戻ってこないうちに!」
「あ、あの! ありがとうございます! いつかこのお礼はさせていただきます!」
スライムが一時的にいなくなった道を、5台の馬車が最高速度で駆け抜けていく。
そしてその5分後。遂にモミジ達はすべてのスライムの駆除を終えた。
「お疲れ様でした! きっとこれだけスライムを魔法なしで倒したのはモミジ様が初めてですよ! 新記録です!」
そして何とか日暮れ前に、最初の目的地であるトパーズ王国へと辿り着くことができた。
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