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三頭と二十三人への転生記  作者: 水渡
第三章 三国戦争
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第69話 反動

ほぼ一カ月ぶり……すみません。

それとどこで切ろうか迷いまくってかなり長くなってしまってます。

 「……ふう。なんとかなったはいいが、結局今のは何だったんだ?」


 ミロア軍が一斉に沈黙したのを見渡しながら俺はそう呟いた。


 「分からないわ。……ただ、なんらかの魔法かなにかを使ったのだとは思うのだけれど」


 俺の独り言にそう反応したのは、いつの間にかすぐ近くまで寄ってきていたあずさだ。

 ちなみに夏葉はミスト相手に軽く魔法を放って牽制している。


 「そうか……」


 そう言葉を返し、俺は先程の光景を思い出す。



 本当に突然だった。

 あずさからの注意を受け、振りかえってみれば衝撃が走り、それを耐え切って周りを見渡せば明らかに異常なミロア軍にまた衝撃を受ける。赤い目に、異常な肉体と魔力。なにもかもがおかしかった。


 (本当になんだったんだ?)


 ーーと、思考がそれに集中する中、それは起こった。


 「グッウウウ、アアアアアアアア!!」

 

 「な、なんだ!?」

 「! 森下君、あれ!」

 「え? ……なっ!?」


 突如として響き渡る絶叫に一瞬で思考を現実に戻され困惑しているとあずさからの鋭い声。

 すぐさま周りを見渡すと、再びの異常が目に映った。


 それは、凄まじい光景だった。


 そこに居るのは眠らされたミロアの兵士達だ。魔法により眠らされたためにあずさからの許可がなければ起きることはできないはずの。

 だが、そんな彼らが絶叫をあげていたのだ。

 さらにそれだけではない。ある者は、身体中から血を噴き出し、またある者は、全身から魔力が迸りそのあまりの大きさに肉体の方が耐えきれず徐々に崩壊していく。


 そんな現象がミロア軍全てで起こっていたのだ。


 「一体何が!?」

 「分からないわ。でもとりあえずーー広域回復魔法≪全癒の聖域≫!」


 その状況にすかさず、あずさが回復魔法をかける。

 

 広域回復魔法≪全癒の聖域≫


 昔、あずさに説明されたことがあるこの魔法は、広範囲にわたって入っただけで回復をもたらすエリアを作成するもので、広範囲を治癒する魔法としてはあずさ自身が作り出したなかではーーこの世界であずさ以上に魔法開発が得意な者は、おそらくだがいないことを考えれば世界でーー最上位のものということ。

 魔法に込める魔力量により、その回復量、範囲、速度は増減するが、それもあずさが用いればトップクラスのはずだ。それこぞ〝全癒〟の名の通りにあらゆる傷を治すほどに。


 そんな魔法がミロア軍全てを範囲に収めるように展開された。睡眠魔法によって眠らせている今なら、たとえ怪我を全快させた所で問題はない。

 ミロア軍の兵士たちは、魔法の効果を受けすぐさま回復を始める。がーー


 「嘘、なんで……?」


 そうあずさの小さなつぶやきが耳に入る。


 だがそう思わず言葉に出してしまうのも納得の光景が現在広がっているのだ。

 なぜなら兵士達の怪我は、良くなるばかりか逆に悪化しているのだから。

 確かに回復魔法は効いてはいる。謎の現象により負ったダメージが瞬く間に回復していく様がここからでも見える程に。

 しかし、いくら回復してもその次の瞬間には再び身体が傷ついていくのだ。さらに次第に傷を治すスピードをダメージを負うスピードが凌駕していく。神竜より力を授けられたあずさの魔法よりも、だ。

 

 「くっ! 怪我のスピードが速すぎる!」

 「あずさ、俺も魔力を注ぐ! それなら」

 「いえ、はっきり言っていくら注げば注ぐほど効果が増すと言っても私達二人がかりだと今度は、魔法の方が魔力過多で暴発しかねないわ!」

 「ならどうすれ……はっ! あずさ!」

 「!?」


 対応策が浮かばず俺達が苦心するなか、さらに事態は動く。


 一人の兵士の魔力が一瞬にして膨張した次の瞬間、跡形もなく消し飛んだのだ。さらに、それは他の場所で見られだし瞬く間に広がっていきーーついにはほんのわずかしか数人を残っていなかった。


 「……」

 「……」


 俺達の間に沈黙が降りる。


 とーー


 「ぐっ……」

 「「!」」


 わずかに残った内の一人が、かすかにうめき声をあげた。


 それを聞き取った俺達は、一直線にそいつの元に向かった。


 「おい、そこの人間」


 到着するやいなや、そう声をかける。

 俺の声に一瞬ぴくっと反応すると、その男はゆっくりと辺りを見回し、やがて俺達を見つけると大きく目を見開く。


 「はあ、はあ、はあ……。ちっ、やっぱり俺は生き残ったか。兵たちに申し訳が立たんな……」


 目を見開いた男は、そう言うと力を抜いた。

 それに対し俺は


 「兵たちに、か。その言葉を聞くにお前はかなり高位の人間みたいだな」


 そう言いながら男を観察する。

 屈強そうな肉体にそれを覆う重そうな鎧。銀色に輝くそれはミスト国のそれよりも武骨で、なおかつ頑丈そうだ。それにミロアの兵卒たちが使う物よりも上質な物に感じられる。

 さらにその男の横には、一本の剣が落ちていた。

 剣はおよそ長さ1.5メートルほどの長さで幅は広く、厚みもだいぶある大剣だ。その重さは、恐らくかなりの物になるはずで使うものをかなり選ぶのではないだろうか。そして、この大剣もまた上質な業物と思われる。


 ただ、ミロアを監視していたのは夏葉のためこの人物が確実に誰とは言えないのだ。


 「……ああ、そうだ。俺の名はレッジ。ミロアの祖ミレッドの血を受け継ぐ者にしてミロア国第5代国王を務める者だ」


 その言葉に俺は納得する。確かに国王ならこの装備を使っていてもおかしくないし先程の言葉とも辻褄が取れているからだ。

 そしてなによりこれは朗報でもある。国王ならば先程の異常ーーつまりは兵士たちの力の上昇やそれ以降の事について一番知っているであろう人物が生きていたのだから。

 俺は、彼が生き残っていたことに少しばかりの感謝と不謹慎ながら自らの幸運に感謝しながらレッジに質問を始める。……まだミストが残ってはいるが夏葉がいるから大丈夫だろう。


 「そうか……。ならば聞こう。先程のあれはなんだ? 急に兵士が強くなったと思ったら最後には爆ぜて消えていったあれは」

 「そうね。私も知りたいわ。あれは何? 状況を見る限りは、何かしらのドーピングとそれの副作用って感じだったけれど」

 「……さすがに分かってしまうか。〝どーぴんぐ〟という言葉は知らんが、恐らくは貴女が言いたいであろうことは正しい」


 少しの間だけ沈黙したレッジだったが、あずさに対してそう答えた。

 さらにーー


 「俺たちは、あの薬を〝鬼の薬〟と呼んでいる。元々は、3代国王の時に兵士たちの魔力や体力を回復する薬を開発した際に出来た副次品。その効果は一時だけだが飲んだ者の腕力に耐久力、さらには魔力を凄まじく上昇させることが出来る薬だ。ただその反面、強化の一時が過ぎると飲んだ者に凄まじい副作用をもたらすのだ。幾度か犯罪者を使った実験を行い分かっているのは、飲んだ者の耐久値や魔力量などによって副作用にも変化が生じること。仮にそれらが低い者が飲めば、凄まじい激痛に襲われるほか最悪の場合には増幅した魔力を制御できず暴走し、肉体を巻き込み爆発して死に至る。また、それらが高い者でも全身の倦怠感に一時的な痺れ、魔力の不安定化に魔力量自体の低下など様々なことが副作用が起きるのだ。 ……実際、俺も今は体全体がまったく動かせんし、こうしてしゃべることすらかなりツライものがある」


 そう言いきると、レッジは荒い息を吐いた。


 対してその説明を聞いた俺やあずさは考え込んでしまった。

 今の説明を聞きーー中には非人道的な話もあったが今のこの世界にそんな価値観はないのだし、しょうがないと割り切るーーいろいろと、先程の事に関して思うことがあったからだ。


 『今の話を聞いてどう思う?』

 

 少しの間だけ考えると、少し上空で浮いているあずさにそう念話をする。


 『……そうね。とりあえず嘘はついてないと思うわ。さっき見た光景とも一致してるし。ただーー』

 『ただ?』

 『いくら副作用としても、回復が出来なかったことーー正確には、してもすぐに悪化するということに関しては納得がいかないわね。だって、ただの副作用程度ならあの魔法で治せるもの』

 『なるほど……』


 「ねえ、国王レッジ。あの薬は、一体何から出来ているの?」


 俺に納得がいかないことを伝えるとあずさはそう問うた。


 「……あの薬にはいろいろなものが混ぜてある。東の巨山の中腹にある洞窟に生える魔草に西の大砂漠にいるサソリの尻尾、それからーー南にある黒と白のまだら模様に染まる大樹の樹液に「待って!」……何だ?」

 「南にあるその大樹ってこんな感じ?」


 一瞬、話していいのかを考えたであろう逡巡のあと、レッジは薬の原料を話していく。

 それを聞いたあずさは、その言葉を唐突にさえぎると水を器用に操り空中に絵を描いていく。この星に来たときに魔力スポットを説明するために使った時のあれだ。


 それは、なんだか変な形の絵だった。

 幹は太く、それでいて所々穴が開いておりその上にはたくさんの枝があるが全てが垂れ下がっていた。 その上で土をうまく活用してまだら模様が作られている。


 「あ、ああ、そうだが? これがどうかしたのか? 我々は、魔力を高める効果として使っていたのだが」

 「……最悪ね」

 「最悪?」


 レッジの言葉を聞いたあずさの口から嫌な言葉が漏れ、それに思わず問い返す。


 「ええ、ホントに。その大樹は何千年か前に私も少し研究したことがあるから。その効果には、確かに魔力を高める効果もあるわ。だけどそれだけじゃない(・・・・・・・・)。あれの本当の効果はーー効率的に餌を得るための罠よ」

 「罠?」

 「あの大樹は、魔力を吸収して育つ魔食いの木。普段は、空気や地中にある魔力を吸収しているけれどより吸収効率が良い餌として魔物や人間など魔力をその身に宿す者を捕まえることがある。そのために利用されるのがあの樹液。幻覚成分を含んだ樹液から漂う匂いは、かいだ者に自らの好物が近くにあると錯覚させ引き寄せる。そして樹液をなめさせるの。だけどそれが罠。樹液には大樹が餌となる魔力をより得られるように食べた者の魔力量を増加させ続ける効果がある。……それも際限なく。それにより最終的には魔力を制御出来ずに暴走状態に至る。だけど大樹にとっては餌が無限に湧いてくるのと同意。だから暴走状態を回復させないためにーーある種の呪いがかかっているのよ、その樹液には」

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