第70話 ミストの切り札
またまた一カ月ぶりになってしまいました。
最低二週間に一回は更新できるように頑張ります。
あずさの言った事をだんだんと理解した後、それがかなりヤバイ能力だと思い冷や汗をかく。
だってそうだろう? 樹液をなめた者の魔力を強制的に暴走へと導き、挙句の果てにそれを回復させないための呪いまであるのだ。
俺がなめたらどうなるのか分からないが、もし仮に暴走へと至り万が一にも爆発してしまったら……。
その被害は、確実に途方もなく広がりーー最悪星が滅ぶかもしれない。
……今更だけど神竜から地帝竜の名を貰っている者として、また植物魔法に適正がある者としてこの世界に一体どんな植物が生えてるのか精密に調査するべきかもしれない。以前は、軽く趣味程度だったが次からは本気で。
とはいえ、今考えることじゃないな。今は目の前の事に集中だ。
そう考え一度頭を振り、あずさの話に再度集中していく。
「……どうやら、二人とも意識がこっちに戻ってきたようね」
だが、集中した途端こう言われてしまった。
どうやら俺が別の事を考えていたのを見抜かれていたようだ。
後、二人って言ってたから目の前のミロア国王レッジも同じような感じだったっぽい。
「悪い悪い。……改めて話の続きを頼むよ」
「はあ~、まったく……。まあ、いいわ。それでその呪いの効果なのだけれど、それはずばり言って〝存在への書き込み〟よ」
「?」
俺達に対して呆れたように頭を振ってから話された内容に、俺の頭には思いっきり?がついた。
「あの、もうちょい分かりやすく……」
「ああゴメン。これじゃ流石に分かりにくいわね。つまりは、樹液を体内に取り込んだ者、その存在の内面部分である魂と外面部分である肉体。その両方に治癒不可の呪いをかけるの。そしてその強さは、取り込んだ量に比例する。……まあ、今回は薬の原料の一部ってことでそんなに量を摂取してなかったっぽいから一時的ではあっても回復できたようだけれど」
「……内面と外面の両方に呪いって」
「……ええ、正直かなり強力でなおかつかなり厄介だわ。肉体だけならまだしも魂が関わってくるのなら普通の魔法じゃなくて、それ専用の魔法が必要になってくる。ぶっちゃけヤバい」
あずさの言葉に俺は思わず、うわあ……っと顔を覆いたくなった。
ただその反面、どこかその説明に納得もしている。
なにせあの治癒魔法を上回る程の効果なのだ。これが普通の魔法や能力だったといわれたら、それこそこの世界大丈夫か? と思わなければならない所だった。……最もこれからの調査次第では、こういった物がバンバン出てくる可能性もあるので覚悟が必要なのだが。
「とにかく、この樹液はヤバいしそれを使った薬ももちろんヤバい。……それは分かったかしら?」
そう言ってあずさは、その顔を国王レッジへと向けた。
それに対しレッジはーー
「ああ、十分だ。十分なほどに分かったよ。……元々出来てそれを実験した時点でヤバいものだとは分かっていたが、なぜこんな効果になってしまうのか分からなかったんだ。その理由がこうしてはっきりと分かったからにはもう使おうなんて考えねえよ。……まあ、はなから最後の手段ではあったんだが」
そう言うと一つため息を吐いたのだった。
「あなたが賢明で何よりだわ。それはこの戦争が終わったら早急に処分して頂戴。もちろん樹液そのものも、ね。そちらで処分が難しいのだったら私たちがやってもいい」
完全に肩の力を抜きーーもともと力を入れることは出来なかったがーー戦意喪失した様子のレッジを見て、俺達もほっとする。
そしてあずさが処分するように伝えるとレッジもうなずく。
「分かった。そうしよう。ーーところでで今更ではあるが俺を殺さないのか? 俺はあんたらにケンカを売ったんだぞ?」
「ん? いいわよ別にそういうのは。どうでもいいわ。……それにあなたには国に帰ってやるべきことがあるでしょう?」
「--っ! ああ、そうだな。しかし、どうでもいいわ、か。あんたたちにとっては、俺達なんて取るに足らない存在なんだろうし実際そうなんだが。ったくなんでこんな存在にケンカ売っちまったんだか」
そう言ってガックリとうつむいてしまったレッジに、俺達はなんて言おうか迷う。下手な慰めは余計にみじめだろうから。
しかし、俺達は何かを言う必要はなかった。
なぜならーー
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
「「「!!」」」
唐突に凄まじい鳴き声と共に凄まじい魔力の奔流が迸ったからだ。
その気配は俺たちの右方向ーーつまりはミスト軍と夏葉の居る方向から。
俺とあずさ、それにレッジは急いでそっちの方向を見やる。
するとそこにはーー
土色の肌を持ち、強靭な四肢、その指の先には兵士が振るう剣のように鋭い爪がついており、ごつごつとした体躯の先には大木がと見間違うかのような太く長く先端に直径一メートルほどの鉄球がついた尾。
極めつけはトカゲのような顔に一対の体表と同じ土色の翼。
全長は俺達より一回り小さいくらいの大きさではあるが現れたのは、まぎれもなく俺達と同じーードラゴンだった。
「な、なんであんなのがここに!?」
そうレッジがうろたえるのも分かる。
今の今まであれほどの存在が居る気配もなかったし、近づいてくる気配もなかった。
普通あれほどの魔力を宿していれば分かるハズなのにも関わらず。
とーー
『二人とも今すぐこっちに来て!!』
夏葉からの念話が届く。
『! 夏葉、一体これはどういう状況なんだ! 何故突然こんなものが!?」
『分からないよ! ……急に魔法使いたちが懐に手を突っ込んで取り出した何かを頭上に掲げたのは分かったけど。それ以外は本当に何も!』
俺の質問に答える夏葉の声も相当焦っている。
俺は一つだけチッと、意味が分からないままに進み始めた状況に舌打ちすると、ちらりとレンジの方を向いて
「とにかくお前は、残った兵たちを集めてどっかに逃げろ。巻き込まれるぞ!」
と言い残して、一気に地を蹴り飛び立つ。
後方で、あずさが再度レッジに忠告しているのを尻目に俺は前を向いて急行する。
一体何がどうなってるんだ? と疑問を抱きながら。




