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三頭と二十三人への転生記  作者: 水渡
第三章 三国戦争
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第68話 鬼の薬

 『!? 森下君、前!』

 「グッ!!」


 突如としてあずさからの切羽詰まった声が頭に響き、急いで前を向いた途端凄まじい衝撃が襲いかかってきた。

 その衝撃に驚きながら数歩後ずさって下を見てみれば、数人の人間達。


 (……嘘だろ、たった数人で竜状態の俺に衝撃を与えたのか)


 その事実に先程とは別の衝撃を受けながら、改めてその男たちを見、そしてその異常性に気づいた。


 (うげっ、腕や足がヤバいことに……。それに……目が、赤い)


 その男たちを見てみれば、その誰もが腕か足に軽くない怪我を負っており、ひどいものでは皮膚から骨が突き出ていて、はっきり言って正視に耐えない。だが、それでもなお俺の視線を逸らさせない原因が二つ。


 一つがそれほどの怪我を負っているにも関わらず、なんの反応を示していないことだ。普通ならそのあまりの痛みに転げまわっていったっておかしくないし、そうじゃなくたって苦痛を少しは顔に出すはずだ。にも関わらずその男たちは平然としている。


 そして二つ目、これが最大の異常。その男たちの目が赤いのだ。まるで血に染まったように(・・・・・・・・・)

 今まではっきりと見たことは無かったが、少なくとも赤いということはなかったハズだ。それなのに何故?


 『森下君、前を見て!』

 「? ……なっ!?」


 観察していた俺の頭に再びあずさの声が届き前を向いてーーほんの一瞬固まってしまった。

 

 そこに居るのは、いや居た(・・)はずなのはミロアの国の軍隊。皆が皆、何かの得物を持った筋骨隆々の男たちだった。


 しかしーー


 「グゥウウウウウウ!!」

 「ガアアアアアアッ!!」


 今、俺の目に映るのは、獣のように唸り声を上げている姿。

 その様相は、最早〝軍隊〟などではなく〝群れ〟。理性など全くといって見受けられない。

 そして、その目は皆一様に赤い。


 『な、なんだこれ!?』

 『分からない。ただ、気を付けて。さっきと比べて感じる魔力が桁外れに大きくなっているわ。やられるとは思わないけど足元をすくわれる可能性がある』

 『……了解』


 あずさの忠告に気を引き締め直して、目の前の人間達に集中する。


 「「「グゥオオオオオオオオオオオオッ!!」


 ーーと、それを待ちわびたかの様に赤目の男たちは一斉に吠え叫び、そして襲いかかってきた!


 ある者は手にした槍を手に一直線に突っ込み、またある者は重槌を両手に一つずつ持つという人の筋肉量的にありえないことをしながら迫り、またある者は大剣を手に十メートル以上跳び上がって切りつけてくる。


 「くっ!?」


 スピード、パワー他そのどれもが先程見た男たちと比べて違いすぎる。

 

 その差に思わずひるみながらも、右前足を大きく上げ勢いよく振り降ろす!


 それによって、衝撃が生まれ近くに居た者は吹っ飛び、そうでなくても揺れる大地に足を取られ、攻勢を止めることに成功した。ちなみに踏んではいないハズだ。……たぶんだけど。


 「グオ、オオオオオオオオ!」

 「ガアアアアアア!」

 「嘘ぉ!?」


 だが、俺は敵の異常性を侮っていたようだ。

 何メートルも地面の上を吹っ飛び、良くて戦闘不能、普通に死という状況にも関わらず唸り声を上げながらその男たちは立ちあがってきたのだ。

 そして、よく見れば男たちの決して浅くない傷がシュウシュウと音をたて煙を上げていた。


 それを見て、ふとはるか過去の前世で読んだ漫画のワンシーンが蘇ってくる。それのシーンは、何の因果か目の前の状況に非常に酷似していてーーはっきり言って冷や汗が止まらない。


 内心やめてくれよ……と思いながら、その傷をよく見ていく。

 だが現実は無情だった。


 見るはしからどんどんと男たちの傷が治っていくのだ。それもさっき俺の踏みつけでダメージを負った全員が。


 (やっぱりか、やっぱりなのか!? くそ、自己治癒持ち、しかもこの感じじゃ全員じゃねえかよ!確かミロア軍は……二千人くらいだったハズ。……ああもう、面倒ごとが増えた!)


 結構な治癒能力持ち+異常な剛力+急激に増した魔力の人間たち、その数二千。

 その現実に若干眩暈がする。最初の目的では出来るだけ死者を減らし、けが人も出さないようにと思っていたんだが……まじでどうやってこれ止めようかな。


 ……いや、ここは死なす確率が減ったということで喜ぼう。殺す感じでちょうどいいくらいになったんだし、むしろ好都合だ、うんうん。


 『……もりっち、何一人で頷いてんの?』

 『……気にしないでくれ。そう思わないとやってられないんだよ!』


 よし、とりあえず潰す。


 「若干殺す気でーー雷魔法≪ヒュージサンダー≫!」


 一気に魔力を高め魔法を発動。使ったのは空に雷雲を出現させ、そこから雷を降らす魔法だ。

 ちなみにこれの最上位互換が、俺の持つ雷魔法では最強の威力になる。まあ、ここで使ったら、人間みな即死確実で、下手したら夏葉とあずさにも大ダメージがいくから使わんけども。


 俺の前方頭上で放たれた≪ヒュージサンダー≫は、俺の制御によりミロア軍近くの無人地帯に着弾。

 それによりーー


 「「「ウ、ガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」」」


 ーー地を伝った電撃がミロア軍たちを襲う!


 ミスルニアやミスト軍は、雷を見て防御を整えたようだが理性を失ったミロアはそうはいかない。

 次々に電撃にやられ地に伏していく。


 だが、それでもミロア兵からは、シュウウという音。急速に怪我が治っていく。この感じだとじきにまた立ちあがるだろう。


 (ちっ、これは直接当てるしかないか? いや、でも直接ぶっこんだら、いくら治癒能力ありとはいえ即死だろうし、くそっ、どうすれば……)


 しかし、そんな悩みもすぐに解決された。なぜならーー


 『森下君、任せて! 今度は、さっきより強力な睡眠魔法をかけるわ!』

 『! 任せた!』


 あずさがそう言ってきてくれたからだ。


 「睡眠魔法≪眠王の裁定≫!」


 魔力を高めたあずさの声が高らかに空に響いた途端、空中に突如として巨大な人型が出現した。

 でっぷりとした体形を豪奢な服で着飾り、されど髪は寝癖だらけになっておりそこにこれまた豪奢な王冠を被るというなんともアンバランスないで立ちの男の人型。


 その男が手に持つ軍配を大きく振ると同時に、強烈な魔力の波動が降り注いだ。

 その波動は、倒れ伏すミロア軍へと一直線に伸び、兵たちを捉えーーその瞬間、立ちあがろうとしていた男たちは皆一斉に眠りへと落ちその意識を手放したのだった。


 『睡眠魔法≪眠王の裁定≫。眠王という王を作り出し、その王を媒介として眠らせる魔法よ。〝眠らせる〟という点は、≪微睡の春風≫と同じだけど強力さは全然違うわ。この魔法は、術者つまりは私が良いというか死ぬまでは絶対に起きることが出来ない魔法。効果からして絶対に起こしたくない相手や殺せない相手の行動を封じるから〝封印〟とすら言い換えてもいいかもね』

 『……なるほど』


 さっきまで凶暴そのものだったミロア兵たちを見ていた俺に、そうあずさからの解説が入った。

 その説明に対し、俺が思ったのはーー






 --効果がエグイ!! である。

ちなみにあずさと夏葉は空を飛んでて、自分は雷に強いというかほぼ無効といっていい耐性を持つので雷がききませんでした。


……なお、戦闘中あずさと夏葉は何してたかというと……何してたんでしょうね(笑)

作者の中では、ミストを眠らせようとしてたりなんかしていたハズですが。


後、最近ほかに書いてる小説の感じに引っ張られてるかも。まあ、あまり変わってないハズ。

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