第64話 結託
すみません、結構遅れました。
『さ~て、どうするかな……』
現在、俺達はあずさの攻撃を人間達が防ぐという予想外の光景を目の当たりにして悩んでいた。
『さっきより威力上げてみたら?』
『それはダメ。たぶん威力高すぎて殺しちゃうわ』
『う~、微妙な強さを持ってると大変だよ~……』
そうなんだよな~。
前より力は持ってるようだけど、だからといって俺達の攻撃を全部しのぎきるような力はないだろうし。無駄に手加減が難しくなってるんだよな……。どうしよう、マジで。
と、
『あっ、二人共見て! 人間達が動きだしてる』
『何?』
『……ホントだ。人間達が動きだして……あれは、編隊を組み直してるのか?』
夏葉からの念話を聞き視線を下に向けると、確かにさっきまで浮足立っていた人間達がきっちりと隊列を組み移動していた。
それは、段々と形を成していき……あれ?
『なんか人間達、全員こっち向いてないか?』
『そうね……。しかも、一国だけじゃなくて三カ国全部』
『……だね。あっ、何人か進み出てきた』
状況が分からず、戸惑い気味の俺達の前に何人かの人間が歩み出てきた。三カ国の陣営から一人づつ、計三人だ。服装は他の兵士達と変わらないから、立場が上の者ではないだろう。伝令か何かだろうか?
その三人をジーッと見つめていると、三人組は一度お互いに目を合わせ頷きあい、再度こちらを向くと
全員が右手を口の前に持っていく。すると、何かの魔法が発動した気配がした。それと同時にあずさから『音の魔法……拡声器みたいな物かしら』という思念が漏れてきた。
そして彼ら三人は一度深呼吸をし、その後ーー
「「「御身らは、偉大なる〝原初の竜王〟とお見受けいたします。この度は、どのようなご用件でそのお姿を現しになられたかは存じませんが、此度の戦は我ら人間にとって真に重要なもの。もし、それを防ぐ目的で現れになったのならいらぬ世話でございます故、御引取願いたく存じます。御引き取りいただけない場合は、無理矢理にでも帰って頂きます」」」
ーーと、宣言したのだった。
『『『……』』』
一瞬、俺らの間に沈黙が流れる。
『へ~』
『なるほど、そういう態度を取るわけね』
『へっ? えっと、二人共……なんか怒ってる? お恥ずかしながら、意味がよく理解出来なかったので意味を教えていただけるとうれしいんだけど』
おっと、思わずイラッとしたのが出てしまったようだ。まさか、夏葉に気づかれるとは。一旦クールダウン、クールダウン。
よし、え~っと、夏葉が意味を教えてほしいんだったか。
『いや、夏葉。あいつらはただ単純に回りくどく言ってるだけだから、実際はそんな難しいことは言ってない。そうだな、まあ、超簡単に略するならーー俺達人間の戦争に勝手に関わってくんな、引っ込んでろってトコだ』
『はっ? 何それ、もしかしなくてもケンカ売られてる?』
『売られてるわ、完全に。しかも、帰らないようなら実力行使するとまで言ってる』
『……やっちゃう?』
『やっちゃうかどうかはともかくとして、このまますごすごと帰れないのは確かね』
「「「お返事はいかがなさいますか」」」
と、俺達の間で不穏な空気が流れているのを知ってか知らずか、再び伝令たちからの声が響いた。
「一つ問いましょう。……先程の言葉について私達の聞き間違いでなければ、さっさと引っ込んでろ、という解釈でよかったですか?」
あずさの返答に、再び顔を見合わせる伝令たち。
二、三言話し合っている。
そして意見がまとまったのか再び魔法を発動しようとしたその直前、新たに一人が歩み出てきた。
よく見ればミストの国王だ。
国王が伝令に何かを告げると即座に伝令たちは、自らの陣へと戻っていき国王のみが残った。
そして、自ら魔法を発動させこちらに話しかけてきた。
「偉大なる〝原初の竜王〟よ。我はミスト国王レンドである。さて、先程の問いかけでございますがーー単刀直入に言えばその通りにございます。出来るだけさっさと御帰り願いたい」
……ほんとに単刀直入に言ってきやがったなコイツ。
しかも、後ろに居るミストの兵士達は自分達の国王の言葉に歓喜の表情を浮かべてるところから見て、自分への崇拝を高めるためにも利用してやがるな。どんな巨大な敵にも一歩も引かない勇気ある国王、そんな感じに見せたいんだろう。
「なりません。今はどうやら……まとまっているようだけれど、もし私達が帰ったら再び戦をするのでしょう?」
再びあずさがそう答える。
「……さようでございますか。ならば致し方なし。……者共、こやつらは悪しき邪竜なり。よって今、この場で討ち果たすのだ!!」
「おおおおおおおおおお!!」
「ミスルニアも加勢する、いくぞ!!」
「おおおおおおおおおお!!」
「ミロアもだ。者共、雄叫びを上げろ! 突き進め! 我がミロアの武勇を見せるのだ!」
「おおおおおおおおおおおおっ!!」
ミスト国王の号令を皮切りにミスルニア、ミロアからも雄叫びがあがる。
どうやら、マジでやる気らしい。
『……はあ、ホントにやるみたいね』
『どんだけ戦いたいんだ、こいつら』
『結局私達が引いても引かなくても結果は同じなら、やるしかないんだよ。ってことでやります。イラついてるし』
確かに夏葉のいう事にも一理ある。
しょうがない。
『さくっと終わらせて反省させよう』
『OK』
『私から行くよ!』
こうして〝原初の竜王〟VS人間連合軍、後に〝人竜戦争〟といわれ神話として語られることになる神代の戦争の火ぶたが切って落とされたのだった。




