第61話 急変
訂正
前回のミスルニアの移動の所で
魔法の補助を使って、の部分を削除しました。
『ど……う……いう、ことなんだ、あずさ!?』
ミストが、このままじゃ挟み撃ちに遭う?
……待ってくれ。それじゃあまるで……。
『……完全にやられたわ。初めからグルだったのよ、ミスルニアとミロアは!』
くそっ、やっぱりか!
『嘘……。で、でも私達が集めた情報の中に、そんなものは……』
『なかったわね。でも、もし彼らが私達が知らない連絡手段を持っていたら?』
『! ……そっか、油断してたのかな。どうせ人間は私達を出し抜けないって……』
『……今は、反省は後よ。とにかくまずは、この状況をなんとかしないと!』
しかし、状況は俺達を待ってはくれなかった。
『おい、ヤバいって! ミストの軍が展開を完了しちまった。これじゃ、すぐには動けないぞ!』
俺が視線を軍に戻すと、最前列に歩兵部隊、次に騎馬部隊、最も後方に魔法部隊を展開し終わっていた。
今から、隊列を組み直そうにも時間がかかってしまう。
『! マズイわ! こっちも後、十分程で到着しちゃ……いや、遠距離魔法の存在を考えれば、猶予はその半分もない!』
『え、ちょ、ほんとにヤバいじゃん! 挟み撃ちなんかくらったらいくら数で多いとはいえすぐにやられちゃうよ!』
ミスト軍三千七百に対し、ミロアは二千、ミスルニアは千五百程。
個別に戦えばミストに軍配が上がるだろうが、ミロアとミスルニアが手を組めばその差はほとんどない。 そればかりか挟み撃ちが出来る分ミストは圧倒的不利になるだろう。
その結果が、どうなるか。それはもう想像もしたくない。
『くっそ、詰んでるじゃねえか』
『……こうなったら、最終手段よ! 森下君、夏葉、聞いて!』
『うん、分かった!』
『俺も分かったけど……その最終手段って大丈夫なものなのか?』
『一応、私の中では成功確率10%よ! あ、先に言っとくわ。失敗したらホントにゴメン!』
『っておい、それダメじゃん! ほぼ失敗するってことじゃん!?』
『はいもうスト~ップ!! 二人してコントしないでよ! 時間やばいの忘れたの!?』
『『……ゴメン』』
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ミスルニア視点
「国王陛下、あとわずかでミストの後方を抑えられる位置に到着いたします」
伝達兵からの言葉を聞いたミスルニア国軍第一大隊長であり、我の側近も務めるリニアスが私ーーミスルニア第5代国王モールにそう報告してきた。
「うむ。ミロアへの伝達の準備を致せ」
「分かりました」
現在私達は、軍の統率が乱れない限界ギリギリのスピードで山の中を駆け抜けている。
とはいっても、自らの足で駆けているわけではない。
私達が持てる魔法技術の粋を集めて完成した魔法、その名も≪使役魔法≫と≪無生物創成魔法≫によって作り出した物に乗っているのだ。
≪無生物創成魔法≫とは、その名の通り生物でないものーー例えば土や水などーーに任意の生物の形を与える魔法で、私達はそうして作り出した疑似生物を〝ゴーレム〟と名付けた。
しかし、この魔法には欠点がある。
作り出したゴーレムを操れないのだ。
その欠点を初めて聞いた私は、何をバカなことを言って……っと思ったものだが、よく考えればそれも道理だった。
なにせ外見だけは生物の恰好をとってはいるが、精神や心がないのだ。何か物事を考えるとか命令を聞くとかできるわけがなかった。
そこでその欠点を補うために≪使役魔法≫が使われた。
この魔法を開発した元々の目的は、魔物を利用するためだったり、犯罪人を奴隷として使うためだったが≪無生物創成魔法≫が開発された時にその流用が提案されたのだ。
その結果は、大成功だった。
魔法をかけられた瞬間、ゴーレムは見事に動き出し、こちらの指示に完璧に答えるようになった。
また、≪無生物創成魔法≫でゴーレムを作るときに≪使役魔法≫を魔石(魔物の心臓付近にある石)に刻み、核として埋め込めば簡単な命令だけではあるが新たに≪使役魔法≫をかけなくても持続的に命令通りの動きをさせ続けることにも成功した。
今回の戦争でも、かなりの役に立つことだろう。
「国王陛下、今更ではありますが、その、ミロアは本当に大丈夫なのでありますか?」
リニアスが伝達役の兵士に伝えるために私の元を離れるとふと、声がかかった。
横を見ると私の側近の一人であるミスルニア軍第二大隊長ミュレンが寄ってきていた。
「ミュレンか。確かにおぬしが不安を抱くのも最もだ。しかし、私たちは協力しなければミストには勝てないというのも事実なのだ」
出兵するまでの間偵察部隊から上がってきていた報告によればミストの軍は、私達ミスルニアの倍以上になるだろうとのこと。さすがに長い間続いて来た国であるため、様々な物が安定しており国民も一番多いから当然だ。
こちらには、多くの優秀な魔法使いやゴーレムに魔法、さらにはとっておきもある。
しかし、それは向こうも同じこと。はっきり言って、ミスルニアだけでは負ける公算が高いというのが私の見立てだった。
これまで私たちは攻めるべきか、それとも守りに徹し相手の疲労を待つ作戦を取るべきか、他の国との緊張が続く中で様々な作戦を考えてきたが、どれもこれも確実性に欠けていたのが正直なところだった。
そしてもたらされたミストがついに出兵するという情報。
これを聞いたときに私達が焦ったのはいうまでもない。
が、スパイが持ってきた情報は、これだけでは無かったのだ。
それがーー
--ミロアもミスト出兵の情報を得た可能性が高いということ。
どうやら、潜入中にミロアのスパイもミストに入っていることをつかんだらしい。
これを知った後に、すぐミロアへとスパイを向かわせた。万が一にも失敗しないように最新の魔物除け用魔法具も持たせて。内容は、ミスルニアとミロアの一時休戦及び対ミストでの共闘だ。
そして、ミロアもそれに乗ってきた。
こちらと同じように、ミストに対してどう立ち向かうか悩んでいたらしい。
こうして、ミスルニア・ミロア共同戦線が成立したわけだ。
「今の状況では、決してミロアは私達を裏切れぬ。ミストとの戦力差では一対一になった時点で確実に負けるからな。それに、ミストがミロアと組む理由もない。さっき言ったように彼我の実力が離れているからだ。奴らにとってミロアと組むメリットなど、せいぜいが私達との戦いで兵の消耗が少なくてすむくらいだろう。だが、それもミロアと戦うことになったら関係ないからな。結局のところメリットがないのだ」
「なるほど。……分かりました、国王様。私のような考えたらずの意見で時間を取らせてしまい申し訳ありません」
「良い。家臣がどのように考えているのか知るよい機会だったからな。今後も意見や質問があるときは言うがよい」
「はっ!」
「国王さま! あと、七百メートルで遠距離魔法の射程にミストが入ります! ミロアへの伝達魔法も即時使用できる状態です!」
「良し。ミロアへの伝達をせよ。皆の者は、遠距離魔法の用意を! 私から順に放って行く。良いな!」
「「「はっ!」」」
再び戻ってきたリニアスが伝えてきた情報を元にして軍に指示を出す。
「リニアス、カウントを!」
「はっ!」
「残り五百メートル!」
リニアスの声を聞き、魔法を放つべく魔力を練り上げる。
後ろを少し探れば、部下たちも魔力を練り上げているのが感じ取れる。
「残り三百メートル!」
良し、まずはこのくらいか……。
後ろからは、
「水よ、我の願いに応じて敵を……」
「吹きすさぶ風よ、今……」
「焔火よ、我の願いに……」
続々と詠唱の声が聞こえる。
「残り、百メートル、七十、五十、三十……」
さあ、まずはミストに私が最も得意な火魔法をお見舞いしてやる。
存分に味わえよ!
「五、四、三、n」
ーーそれは、ミストに大打撃を与えようと私が魔法を発動しようとし、リニアスがカウントを終えようとする直前に起こった。
グラグラグラグラグラグラグラグラグラグラッ!!
「ぬおっ!」
「国王様!」
突如としてかなり大きな地揺れが起こったのだ。
それによりゴーレムの制御を誤ってしまった私は、大きく地面に投げ出されてしまった。
「国王様、大丈夫ですか!?」
「慌てるな、リニアス。大丈夫だ。……しかし、なんだ今の揺れは?」
「分かりません。ただなんとなくですが自然に起こったものでは無い気が……」
「こ、国王様! 大変です!」
「どうしたのだ、ミュレン?」
「落ち着け。普段冷静なお前らしくないじゃないか?」
「大変なのです。我らは今、今……!」
「「今?」」
「地面ごと浮いているのです!」
「「はっ?」」




