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三頭と二十三人への転生記  作者: 水渡
第三章 三国戦争
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第54話 穴あけ

前話が53話のはずが57話になってましたすみません。

 『二人共、おまたせ。分析完了よ』


 その言葉に、辺りを見回っていた俺達はすぐに反応した。


 『お疲れ様。で、あずさ結果は?』

 

 夏葉があずさをねぎらいながらも、結果を話すように急かした。まあ、はっきり言ってひまだったから早く中に入りたいんだろうな。……俺も同じだし。


 『結果としては、結界の効果は或る程度の防御機能、それを超えてきた侵入者の感知と術者への通報。そして、この結界なら破れるという事が分かったわ』

 『術者? ……この規模の結界を維持し続けられる人間が居るのか?』

 

 この結界は、いまやかなりの広さとなったミスト全体をまんべんなく覆っている。そして、結界というものは、張り続けなければ意味がない。攻撃を防ぐため、最低限その瞬間に張れていればOKの障壁とはわけが違うのだ。また、当然ながらその規模が大きくなればなる程魔力の消費量は格段に上がっていく。住処の結界を何年も張り続けていられるのは、俺達の莫大すぎる魔力量があってこそだ。それと同じことを魔力量で圧倒的に劣る人間が、出来るのだろうか?


 『ごめん、言い方が悪かったわね。正しくは、結界を管理する人間ってことよ。まあ、それが個人か団体かは、分からないけれど』

 『管理?』

 『そうよ。恐らく、結界に異常がないかを見て回ってあるようなら補修を施す、そんなところじゃないかしら。人間の魔力量でこれを維持できるわけがないし、維持するための魔力は何か別の物で補ってるんだと思うわ』

 『なる程な』

 『さて、じゃあ説明も済んだし私はこれから結界に穴をあける作業に入るわ。色々細工しながらやるから時間がかかると思う。だからその間の見張りをお願いね』

 『『了解』』


 俺達にそう言い残すと、あずさは再び結界へと近づいていった。


~~~


 あずさが結界の穴開け作業に入って、少し経った頃。


 (……ん? これは……まずいな)


 現在俺と夏葉は、穴あけ作業中のあずさを中間としてそれぞれ左と右におよそ百メートルずつ離れて見張りをしていた。そしてたった今、魔力感知によって近づいてくる魔力を二つ感じ取ったのだった。


 (数は、二人か)


 魔力を感知した後に、そちらに千里眼を発動し向けてみればやはり、二人の人間がこちらに向かってきていた。装備は金属製らしき胸当てと、腕や足に同じく金属製らしい防具を付けていた。そして、手にはそれぞれ槍を一本ずつ持っている。それからして、300年前も居た防壁守護の兵士だろう。だが、その二人は歩きで向かってきていることから見て、こちらに気づいた訳ではなくただの見回りのようだ。


 (さてと、どうするか。こっちは、ほとんど透明な上に消音と無臭化までしているから気づかれることは無いと思うけど、万が一ってこともある)


 仮に見つかったとしても、俺達なら余裕で切り抜けられる。とはいえ、見つかって逃げたとしても怪しい奴が居たと報告されたら面倒なことになるし、倒したとしたらそうしたで、他の兵に見つかったら厄介になる上にうまく隠せても兵士が戻ってこないことに不審を抱いた他の兵がわんさか出てくるだろう。結局面倒ごとになることしか想像できない。


 (……やっぱ見つかんないのが一番だな。よし)


 『夏葉』

 『うん? どうしたのもりっち』

 『こっちに兵士が二人向かってきてる。幻術かけてくれないか』

 『OK。今行くよ』


 幻術ーーつまり幻惑魔法は、いくつか種類がある。一つは無属性で幻惑に特化した幻惑魔法というカテゴリーに属するもの。この特徴としては、それに特化したことで豊富な種類と強い効果を発揮できる。しかし、弱点として術者よりも魔力量が多い相手には、効きにくいという事に加え、精神を持たない相手には全く意味をなさないということだ。 そしてそうなった場合、この魔法は全く役に立たないばかりか無駄に魔力ーーしかも性質上結構な量ーーを消費してしまうというデメリットがある。

 二つ目が、それ以外の属性によって結果的に幻惑と同じ効果を出す物だ。

 例えば、音ならそれを対象に聞かせたり、そのままぶつけて干渉するのだ。メリットとしては、たとえ幻惑が効かなかったとしても即座に戦術を切り換えられることに加え、大抵が適正属性で行うため魔力消費も効率が良い。逆にデメリットとしては種類が少ない上に、あまり強力ではない。というかむしろ弱く、完全に補助用と言って良い。さらに効果が属性に引っ張られやすいことも挙げられる。結局は、どちらも一長一短というわけだ。


 『よいしょ。……あ~、確かに居るね』

 『だろ。それで見つかるといろいろと面倒くさいから、幻術でそのまま素通りさせてほしい』

 『分かった』


 転移で跳んできた夏葉に俺はそう頼んだ。……いや俺が自分でやればいいんだろうが、これにはわけがある。第一に俺にはそういうのが向いていない。そんな面倒くさいことするくらいなら、直接殴ったほうが早いとどうしても思ってしまうのだ。第二に、根本的に俺と相性が悪い。精神面とかそういうのではなく適正属性の話だ。俺の属性はどれもこれも幻術には向いておらず、植物ならまだいけるんじゃないかと思って花粉をばらまいてみたが、風に流されて全く予期しない所で予期しない相手が引っかかってしまったりと色々と大変だったのでやめた。風魔法使えばいいじゃんと夏葉に言われ、やってみたこともあるが威力が強過ぎて逆に拡散するという事態が起きてしまったのだ。自分ではこんなに不器用な覚えはなかったが、色々と被害がデカくなるという理由で二人に幻術禁止令を出されてしまったのだった。


 『……だいぶ近づいて来たね。それじゃあ行ってくる』


 そう言った夏葉は、また転移で跳んだ。


 その行き先を感知で探ろうとした時、すでに夏葉は戻ってきた。


 『速っ!!』

 『へへん。でしょ』


 夏葉が戻ってきて、しばらくすると兵士達が俺達のすぐ近くまで来た。

 そして、俺達には目を向けることさえせず、前を向いて歩いていき通り過ぎていった。

 俺は、知らず知らずの内に固く握りしめ汗を搔いていた手から力を抜く。


 『ふぅ~』

 『……やっぱ、見つかるわけないと思っても緊張するね』


 横を見れば、夏葉もまた力を抜いて息を吐いていた。


~~~


 兵士をやり過ごしてから、またしばらく経ち……


 『二人ともOKよ』


 あずさから、声がかかり急いで近寄る。


 『穴を開けたわ。ただ、結界を騙すためにもあまり長くは開けてられないから、兎に角急いで入って』


 そう言うと、あずさは眼前を指さした。

 そこには、見た所穴なんてものはないがあずさがあるというのならあるんだろう。まあ、もともと結界に色なんてないから分からないのは当然なんだけども。


 『分かった。私が先に入るよ』


 既に待ちきれなかったのだろう。夏葉が一番に穴に入っていった。


 『よし、行くか』

 『早く!!』

 『うおっ』

 

 夏葉の後に、くぐろうとした俺をあずさが蹴りいれた。

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