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三頭と二十三人への転生記  作者: 水渡
第三章 三国戦争
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第53話 潜入ミッションスタート

前から言っていた新作、出しました。タイトルは「NoA~数字持つ獣たち~」です。興味ある方は、ぜひ。本日中に、そちらの二話目を更新する予定(もしかしたら、明日になるかもですが)

 夏葉とあずさによって、魔法がかけられてから少しして俺達は、ミストを囲む防壁のそばまでたどり着いた。


 近くに来た俺は、その防壁を見上げる。


 (明らかに前より高くなってる……)


 前来た時は本当に数メートル程度の高さだったはずだ。それが今では、およそ十五メートル。しかも、前の防壁は所々脆そうな箇所もあったのに、現在ではどこも均一になっている。この300年という歳月がここまでの変化を生んだのだろう。今や俺にとって数日くらいの感覚になってしまっているこの年月が、普通の生物にとっていかに長いのかを、改めて叩きつけられた気分だ。

 

 『よし、ここまでは無事に近づけたわね』

 『精霊からの情報じゃ、警備が強化されてるって話だったからね』

 『ちょっと待て。その情報、俺初耳だぞ』

 『え、もりっち何言ってるの? 普通戦争の準備してる国が警備緩いわけないじゃん』

 『そうよ。考えたらわかるでしょう?』

 『……うん、今ので俺がおちょくられてるのは分かった』


 明らかにわざとだ……。ていうか、夏葉はともかくして、いつの間にあずさはこんな悪い子になったんだ?ぶっちゃけ前と変わりすぎだろ。


 『もりっち? 今私の事何気にバカにしてた? 思考が駄々漏れだったからね?』

 『いや? 俺は常識しか言ってないけど?』

 『ちょっ……』

 『そうね、常識だわ』

 『あずさが裏切った!?』

 『さて、お遊びはここまでにして、と』

 『『……』』

 『何?』

 『『なんでもない』』


 ……なんかあずさが怖い。


 『コホン。それではここからの事を説明します』

 『念話なのに咳払いする必要あっ……イテッ!?』


 茶化そうとした夏葉が、あずさにデコピンを食らって悶えている。ざまあみろ。


 『……森下君もされたい?』

 『いや、結構です。ゴメンナサイ』


 ……やっぱ、あずさがなんか怖いんだけど。なんで?


 『あずさ、仲良かったプロトスの国の行き先が心配でちょっと今不安定なんだよ』

 『なるほど』


 だから普段はしないような悪乗りをしたり、少し威圧的になってるのか。


 『コホン。いいかしら?』

 『『は~い』』

 『……何よ、その生暖かい目は? ……まあ、いいわ。作戦についての話よ。まず、私達はこのまま防壁から侵入するわ。門は東と西に一つずつあるんだけど、今の状況じゃ完全に閉じている。もちろん警備の目もかなり厳しい。通ろうとすれば十中八九騒ぎになって潜入どころじゃない。だから、私たちはこの防壁から中に入る。夏葉が風魔法で全員を上に運ぶ係で、私は防壁の上に張ってある結界に細工をする、森下君は索敵ね』

 『結界? ……ああ、なるほど確かにあるな。でも、大丈夫か。失敗したら大騒ぎだぞ』

 

 確かに防壁の上をよく見てみれば、結界が貼られている。ただ、何の効果を持っているのかは分からない。

。 

 

 『舐めないでよ。だれがこの星で一番魔法に触れてると思ってるの?』


 俺の疑問に、あずさが少し怒りながら反応した。


 『疑って悪かったって。だから怒んなよ』

 『別に怒っては……』

 『まあまあ、少し落ち着きなって。あずさ、不安なのは分かるし、私も同じ気持ちだけど今焦った所で何かが良くなるわけじゃないんだよ。冷静にいこう? ね?』

 『……まさか、夏葉に諭される日が来るなんてね。長く生きてみるものだわ』

 『ちょっ、今のタイミングで普通にバカにする!?』

 『あ、ごめんなさい。でも、おかげで少し冷静になれたわ。その、ありがとね』

 『ふふん。ど~いたしまして』


 ……なんとか落ち着いたみたいだな。やっぱりこういうのは、女子同士の方が話が通じるものなんだろうな。


 『さてと。では改めて、作戦開始ね。夏葉お願い』

 『了解。風魔法≪アップドラフト≫』


 夏葉がそう唱えるとふいに、俺達の周りに風が渦を巻きだした。渦は次第に大きくなっていき、俺達を完全に包み込む程の大きさになると段々と上に昇っていく。それに引っ張られる形で、俺達も地を離れ上がっていく。


 『夏葉、これは?』

 『この魔法は、上昇気流を作る魔法だよ。主に移動用の魔法だね。同系統の魔法で、もっと威力が強いのがあって、そっちが攻撃用の魔法。……ちなみにこの≪アップドラフト≫、もりっちも一回見たことあるよ。思い出さない?』

 『え。…………あ、もしかして以前に俺を受け止めた奴?』


 俺が思い出したのは、初めてミストに来た時のこと。あの時、目立たないように人型で降りてくるように言われ、そうした俺を包み込んで無事着陸させたあの風だ。


 『当たり。あの時は、徐々に威力を下げていったの。だからこの魔法は、上下どちらの移動にも使えて便利で私のお気に入り』

 『なるほど、確かに便利だ。俺も覚えようかな、夏葉みたいに自由自在には使いこなせないかもだけど』 

 そんな事を話している間に防壁の上まで来たようだ。段々と俺達を包む風が弱くなり防壁の上に足を降ろした瞬間、風は霧散した。


 『無事到着だね』

 『ああ、お疲れ』


 夏葉に返事をしながら、俺は辺りを見渡す。

 防壁の上は、特になにかが置いてあることは無く、両側の壁がせりあがって疑似的な通路になっているだけのシンプルなもので、外側の壁には一定の感覚で穴が開いていた。そして、肝心の結界は町側の壁に沿うように張られていて、防壁の上はその範囲外となっている。


 『夏葉お疲れ様。さて、次は私ね。森下君、誰か来ないかだけ頼むわね』

 『了解』


 あずさは、そう俺に声をかけると早速結界に近寄り、分析を始めた。


 『これは……、うん、そういう仕組みね。で、効果は……これは侵入者を術者に伝えるタイプか。いや、それだけじゃないわね』


 (あずさの奴、念話を切り忘れてるな……)


 完全に結界の分析に夢中になっているあずさから、時よりぶつぶつと思考が伝わってくる。


 (普段はこんなミスしないだろうし、やっぱりまだ本調子じゃないんだろうな)


 先程は、落ち着いたと言っていたが、やはりそう簡単ではないらしい。夏葉に目をやれば、どうやら同じことを思っているらしく、目が合った瞬間に頷いてきた。


 『こりゃ、俺達でしっかりフォローしなきゃだな』

 『だね』


 俺達は、再び頷き合った。

 

 

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