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三頭と二十三人への転生記  作者: 水渡
第三章 三国戦争
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第52話 再びミストへ

皆様明けましておめでとうございます。

新年一発目いつもより多くなっております。


そして相変わらず説明役ポジションのあずさの言葉が多くなってしまう……。早く同じポジションの人が出したいです。

 「300年ぶりかここに来るのは……。本当に久しぶりだな」

 

 今、俺はあの丘に立っている。そう、最初にミストを隠し見たあの丘だ。


 だけど、その風景はこの300年で様変わりしていた。

 草が生えるだけで何もない殺風景だった丘には、今では俺の腰くらいの大きさの石で作られ側面には様々な装飾が彫られた優美な台座が置かれ、ミストから丘へは背後の森を通る形で簡素ながらもしっかりとならされた道が続いている。


 ちなみに何故ミストから丘へと最短距離で道を結ばないのかといえば、丘の前面が崖とは言わないまでもそこそこ険しくなっており道を繋げないからだ。最初来た時はちょっと降りにくいなって程度だったけど、この300年の間に地震に見舞われたり、風雨にさらされたりで徐々に削られたんだと思う。


 閑話休題


 「もりっち~、そろそろ行くよ」

 「ああ、分かった」


 俺がミストを見下ろしていると夏葉からそう声がかかった。その隣にはあずさも居る。

 その二人の恰好は、いつものような前世と同じものではなく、頭からくるぶしくらいまでを覆うローブを纏っており、その上からあずさは槍を背負い、夏葉は双剣を左腰に帯びている。俺の恰好も同じで全身をすっぽりローブで覆い、刀を左腰に差している。ちなみにローブは俺が創った植物から作った。


 「しっかし、前とだいぶ違うな。これもあずさとの約束を果たすためか?」

 「ええ、最初の数年は以前のままで受け渡しをしてたのよ。待ちきれなくて置かれる当日にすぐここに来てた私も悪いんだけど、わざわざ来なくていいって言ってるのにプロトスが自分で来てね。……でも、次第にミストの女王としての仕事が忙しくなってきて来れなくなってきたみたいで、いい機会だから元の約束通り丘に置いておくだけでいいって念押ししたの。私もここに来るのは次の日にするからって言って。それじゃあ代わりにってことで、あの台座を作ったのよ。道の方を作ったのは、絵を運ぶ人たちが通いやすいようにって理由ね」

 「道の方は大変だったろうな。いくら魔法を覚えたからといって魔物がはびこる外は人間達にとって危険すぎる」

 「そうね。確か十年くらいかけてゆっくり作ってたわ。でも森下君も見たでしょう? 丘の前面が崩落してるの。最初の道はそこを通ってたから使えなくなっちゃって、後から今の道を作ったのよ」

 「へえ~~、そりゃ大へ「もう、二人共早くしてよ!!」……夏葉がご機嫌斜めだし、行くか」

 「そうね」


 そして、俺達はミストに向かって歩き出した。


 ところで何で俺達がまた、ミストに向かっているのか。……それは数時間前にさかのぼる。


~~~

 数時間前 あずさの住処にて

 

 「なんだよ二人共。急に呼び出して」


 俺は今、あずさの所に来ている。理由は簡単で、あずさからの急な呼び出しがあったからだ。しかも「内容は後で知らせるからとにかくすぐに来て、夏葉はもういるから」というなんとも厄介ごとの匂いしかしない念話でだ。正直めんどくさい。


 「ゴメンね、もりっち。でも本当に緊急なの」

 「いや、別にいいよ。俺も暇だし。……それで内容は?」

 「今から話すわ。まずはこれを見て」


 そう言ってあずさは、幾つかの紙を石製の机の上に広げた。ちなみに紙は俺の魔法によって紙の材料となる植物を洞窟内に生やしてあるから、それを使って作られている。この世界にはまだ存在しない物だ。

 ……話が逸れた。


 「これは? ……なるほど、よく分かった」


 紙に書かれていた内容を要略すればこうなる。


 一、ミストとミスルニア、ミロアの三カ国それぞれの敵対感情の増加傾向が著しいこと

 二、各国の軍および魔法研究機関の動きの活発化

 三、ミストの周辺でたびたび地震が発生。しかし、その周期は短く自然現象である可能性は低い。そのため何かしらの大規模魔法の実験の可能性あり


 「ちなみに、このミスルニアとミロアってのは?」

 「ミスルニアとミロアという国は、ミストからの独立国よ。

  今から、およそ100年くらい前、次の王の座を巡って熾烈な継承権争いが勃発してね。それまでも似たような争いはあったにはあったんだけどその時のは、今までの比じゃなかったの。なにせ三兄弟だったんだけど三人それぞれ、一番目は政治能力が、二番目は魔法の能力、三番目は武力が突出して高くて、しかもそれぞれが国民からの信が厚く、さらには自分こそが次の王だっていう野心も持ち合わせていたのよ。そのせいで上層部だけじゃなく一般国民まで巻き込むまでの争いになってしまって、国は荒廃していったわ。この時代にまだ選挙なんて概念はないから、平和的に解決も出来なくてね。結局当時の王は、苦肉の策として国を分けることを選んだの。もちろんそれが、愚かな選択だとは王も理解していたけど、このまま国を荒廃に向かわすよりはっていう事ね。そうして分かれたのが二番目の国ミスルニアと三番目の国ミロアよ。後、それぞれ二番目には魔法研究機関の人間が、三番目の所には兵士がたくさんついていったわね。各々が、自分の得意な分野の者を優遇すると言っていたから。ちなみにこの情報は直接精霊が見聞きしたから間違いないわ」

 「なるほどね」

 「で、そんな経緯からか今も三国は仲が悪い。この100年は、小競り合い程度で済んでいたけどね。でもどうやらきな臭い感じになってるわ。どこも積極的に軍事方面が活性化してる」

 「ああ、今聞いた感じじゃ恐らく、いや確実に……」

 「戦争が始まるね」


 (はあ、こりゃ本当に一大事だな。あずさと夏葉に対しては精霊使って何してんだよと思わなくもないけど。まあ、今回はそのおかげで詳しく分かったんだけどさ)


 「それで、今回集まってもらったのはその事についてよ。かなり近く起こるであろうこの戦争にどう対応するかって事」

 「ああ、理解した。そういう事か」

 「私としては、戦争は嫌だな。たとえ自分が関わらなくても。だから無理矢理にでも止めたい」

 「私は夏葉に半分賛成。戦争は嫌。でもこれは人間達の問題であって私達が出るべきじゃないと思う自分もどこかに居るわ。……プロトスには悪いけどね」

 「俺は……。うん、俺もどっちかというとあずさ寄りかな。確かに戦争に忌避感はあるけど、俺達が出しゃばってもどうにもならない感じがする。100年の時間は人間達にとってはすごく長い。それぞれがそれぞれへの嫌悪感がこびりついていて、たとえ今力づくで止めたとしてもすぐに同じ出来事が起きそうだ」

 「え、じゃあ二人は止めなくても良いって言うの!?」

 「いや、そうは言ってないよ、夏葉。ただ、俺達が出ていって力で止めようとした所で、相手が他の国から俺達に変わるだけの可能性が高い。それなら力以外で止めなきゃならない」

 「でもどうやって?」

 「それが分からないから、悩んでるのよ」

 「というかさ、ここで悩んでてもしょうがないんじゃないか。それなら一回自分の目で直接見てみるってのも手だぞ」

 「……なる程良いかもね。だって私達今の所精霊達に間接的にしか聞いてないんだしさ。一回自分で見てみるってのは良いかも。ねえ、あずさはどう思う?」

 「ええ、良いんじゃないかしら。言ってる事ももっともだわ。……そうと決まれば、早速行きましょう。いつ始まるか分からないのだし」

 「なら各自準備を整えて、あの丘に集合ね」

 「「了解」」


~~~


 とまあ、こんな事があったからだ。


 「だいぶ近づいてきたしこの辺で良いかな」


 俺達は今、さっきの丘の前面部分から飛び降りて、最短距離を進んでいた。ときたま魔物に襲われたがサクッと切り伏せている。


 「それじゃあ、二人共私の近くに寄って」

 「? 夏葉何すんの?」

 「いいから。よし集まったね。じゃあ、光魔法≪光学迷彩≫。さらに風魔法≪無臭化≫」


 夏葉がそう唱えた瞬間、俺達の体が極めて透明に近くなっていく。さすがに完全に透明という程ではないが、それでも背後の景色が透けて見えている。


 「夏葉これは?」

 「疑似的な透明化と臭いを薄くする魔法だよ。ただ、まだ不完全だから完璧にってわけじゃないけど。その代わり、効果はかなり長い間続くから大丈夫」

 「なるほど」

 「じゃあ次は、私ね。音魔法≪サイレント・サウンド≫」

 「(この魔法の効果は……って声が出てない?)」

 『この魔法は、対象の音をかき消すっていう効果よ。だからこれからは念話を使ってね』

 『ああ、分かった』

 『よっしゃ、準備完了だね。それじゃ行くよ。隠密侵入作戦スタートだ~!!』

 『何その作戦名』

 『アホッぽいわね』

 『ちょっ、バカにすんな~!!』

 

 こうして俺達の作戦名も無事?決まり、ミストへの道を再び進みだした。


 ……大丈夫かな、ホントに。

 

 

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