第48話 群れ
隠れていた茂みから飛び出した俺は、白狼と対峙する。
(さて、気づかれたから飛び出したはいいが……。この後どうするかまったく決めれてないな)
「グルルル……」
俺と相対する白狼はといえば、うなり声をあげ、全身の毛を逆立て威嚇してきている。少しでも隙を見せれば襲い掛かってくることは明白だ。
(……こりゃ、戦いは避けられそうにないか。なら、しょうがない。叩っ斬……!?)
俺が戦うことを決め、一歩を踏み出そうとしたその瞬間、目の前の白狼と同じくらいの魔力量を持つ存在が森に入ってきたのを感じた。
(なんだ? この気配。随分と目の前の白狼と似てる気が……。しかも、こっちに一直線に向かってきてる? まさか……)
嫌な予感がした俺は、魔力を感じた方に千里眼を向ける。すると……
(くそ、やっぱ同じ種類か。しかも、森の外にも複数いるな。ということは、もしかして目の前のコイツは斥候役か?)
思った通りこちらに向かってきているのは白狼だった。しかも、それだけじゃなく森のすぐ外には約10頭ほどが待機している。その中には、子供っぽいのも二、三頭いるがなにより目立つのはその群れの中央にいる白狼だ。周りの白狼よりもさらに二回り程大きく、強そうだ。おそらくこいつがボスだろう。
ふと千里眼をやめ、目の前の白狼に視線を戻すと俺の動揺を悟ったかニヤリと口角を上げたように見えた。……イラッ。
(……さすがに人間状態では無理だな。ここは潔く元の姿に戻ろう)
イラッとしたとはいえ無理にそのまま挑んだりせず、俺は元の姿にさっさと戻ることにした。まあ、当然だろう。一頭でも精霊王と互角クラスの奴が約10頭と明らかにそれ以上の奴一頭を相手にただでさえ軒並み能力が弱くなる人間状態では分が悪い、というか無い。
とりあえず持っていた刀を転移魔法で飛ばすと同時に念話を使い、リーフィアに刀をしまっておくこと、中心部に防御結界を張っておくように頼んだ。リーフィアから了解の返答が届いたのを確認した俺は元の姿に戻った。服? それに関してはなんか知らないけど、元の姿に戻ったら消えるし人間の姿になったら普通に着ているという謎仕様で分からないのだ。後であずさにでも、聞いてみよう。
閑話休題
俺が元の姿に戻るにつれ、周囲の大木達をなぎ倒していく。せっかく大きくなった樹々を俺自身で倒してしまうのは忍びなかったが致し方ないだろう。まあ、目の前の白狼にしたらそんなことより、目の前に突然小山が出来たというインパクトの方が余裕で大きいだろうが。もちろん小山とは俺の事だ。
「ガ……ガウッ……」
先程までこちらを威嚇していた姿はどこにやら。今の白狼の姿といえば、逆立っていた全身の毛は元に戻り、ピンと立っていた耳はペタンと倒れ、尾は股の間に丸まってしまっていた。さっきまでの威風堂々、覇気溢れる姿は吹っ飛びまさしく負け犬といった有り様だ。ざまあみろ。
「ワオオオオン!! ワオ……オ……ン……」
ついでに、こっちに駆けてきていた白狼が俺達の元に到達したが、こいつも近づいてきていた時は威勢よく吠えていたものの、俺の姿を見た途端負け犬の仲間入りを果す。お前はなんというか……ドンマイ。
(……さて、次は森の外にいるボスをどうにかしないと。……あ、こいつらも連れてくか。放置もまずいだろうし)
そう思った俺は、まず植物魔法≪纏ワル大蔓≫を発動した。
この魔法は、その名の通り大きな蔓を生み出し対象へと絡ませる拘束用の魔法だ。
その魔法を俺の体に生える無数の植物に絡ませるように二本発動すると、そのまま蔓はクネクネとうねりながらも素早い動きで、それぞれ負け犬に絡みついて拘束する。
「キャウ!?」
「ワ、ワウ」
どちらも拘束から逃れようともがくが、一向に外れる気配は無い。
(よし。拘束も問題ないみたいだし跳ぶか)
そして、俺は負け犬二頭と共に転移魔法で群れのボスの元へと跳んだ。
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ボス視点
我は、この群れのボスである。
我の群れは、この世界をずっと旅してきた。その理由は単純。より良い狩場を求めてだ。
この大地には、魔力が通っている。そして大地にはときたま魔力がたまる地があり、その地に暮らす魔物や動物は、なぜだか他の地と比べ格段に味も良くなる。さらに食らった時には己の力が増すのだ。まあ、それに比例して魔力量も力も強くなるから、狩りにくくはなるがな。
我らは本当に色々な所に行った。ある時は一面が砂で埋め尽くされる場所、またある時はすさまじく高い山にも行った。だが、いずれの場所も我を満足させる場所では無かった。
しかし、ついに見つけたのだ。
長きに渡る旅の末にようやく。
それが今眼下に広がる大森林だ。今までこの森林より広いところもあったはあった。が、ここまで一本一本が巨大な森は見たことがない。それに土地に宿る魔力もすごい量だ。
この森を見た瞬間、我はここに住もうと思った。だが、ここまでの森だ。既に支配者が居る可能性が高い。そして、大概新参者と支配者は争いになってしまうのだ。
だから、我は先じて群れの中でも一番の俊足の持ち主を森の様子見へと行かせた。
そして我の予想通り居たのだろう、支配者が。
様子見へと行かせてしばらくすると、突如ここからでも感じられる巨大な魔力を感じたのだ。
それも今まで常勝無敗を誇る我すらも軽々と上回る圧倒的な……そうまるで大地にたまる膨大な魔力だまりそのものが意思を得て動き出したような、ぞんな魔力だった。
これはまずい、我がそう感じてほとんど経たぬうちにその魔力は一瞬にして消え、そしてーー目の前に現れたのだった。
ちなみに、最初に地帝竜は森の外縁部から数十キロ離れた中心部に居たのでボスも感知できませんでした。




