第43話 その後2
「()」←これは、小声の意味です。
バッサバッサバッサ……
俺が住処で過ごしているとそんな音が聞こえてきた。
(ん? なんだこの音……上か?)
そういって見上げてみると、
「お~い、もりっち~」
上から、夏葉の声が降ってきた。
よく見てみると、竜の姿で夏葉が降りてくるところだった。どうやら、先程の音は翼で羽ばたく音のようだ。
ちなみに、あずさが開発した転移魔法は夏葉にも教えられており、それを使える。じゃあ、なぜそれを使わないで、わざわざ飛んでくるのか。
その理由というか原因というかは夏葉自身にある。それは夏葉が転移魔法を教えられてから、それを速攻でイタズラに使ったためである。前にあずさにイタズラに使うでしょうと言われ、使わないと反論していたにも関わらず、だ。それを後で問い詰めたら、夏葉の奴は
「いや~、やるなと言われたら逆にやりたくなっちゃって(笑)」
とか抜かしやがった。
それで、そのイタズラというのは俺が住処でくつろいでいる時に、いきなり目の前に現れるというかなりシンプルなものだった。が、突然小山程の大きさの存在が目の前に現れれば誰でもびっくりするわけで、俺もそれに漏れず、思いっきり「うおっ」っと声を上げてしまった。それを見た夏葉は笑いながら転移魔法で逃げていったのだ。それにイラッと来た俺は、同じことをやり返そうとしたわけだが、ご丁寧にも転移魔法と一緒に教えてもらった転移防止結界をその凄まじい魔力量を生かして住処の火山島全体に張っていたらしく俺はあえなく弾かれてしまった。この結界は、任意の存在(大抵は張った本人だけだが)の転移については通し、それ以外は弾くという事が出来る優れものであり、その結果結界に弾かれその外に転移した俺をその内側からニヤニヤと俺を見る夏葉というこれまたイラッと来る光景を作り出していた。
こういった経緯があって、設置がメンドイという理由で放っていた(それがイタズラを許してしまった原因なのだが)転移防止結界を直径およそ百キロ以上ある森全体にかけ転移で来れないようにしたのだ。まあ、森のすぐ近くに転移して歩いて結界を超えた所で、改めて転移という方法も出来ることは出来るが夏葉のような膨大な魔力を持つ存在が森に入れば、すぐに感知できるので突然出現するといったようなイタズラには対処できる。
「お~い、もりっち~?」
俺がそんな事を考えている間に、気づけばすぐ近くまで夏葉が降りてきていた。
「ああ、聞こえてるよ。それより、そのまま降りるなよ。夏葉が纏ってる炎で森に火が付いたらヤバいからな」
そう言いながら俺は、土魔法で夏葉が乗ってもつぶれない程の固さと大きさを持つ岩を作り出した。
「わ~かってるって」
そう言って夏葉は、その大岩に着陸する。
「とこで夏葉、今日はどうしたんだ? いつもみたいにまた模擬戦か?」
ちなみに、この模擬戦というのは人間達の国を離れた後に一気に暇に戻ってしまった夏葉が提案したもので人間状態で一体一で戦闘訓練することだ。思い返してみれば、それぞれ修行したは良いがお互いに刃を交わしたことが無いことに気づいた俺達は良い機会だという事で行うことにしたのだ。なお、本来の姿でやらないのは、ただ単純に地形やら気候やらが無茶苦茶になる事が容易に想像出来るからである。
「ううん、今日は違うよ。実はこれからあずさの所に行ってコレクションを見せてもらおうかな~と思ってさ。もりっちもどうかなと」
「あ~、そういやあれからずいぶんと経ったからな。少なく見積もっても百は超える数が集まってるのか」
「で、どう?」
「う~ん……、いいよ、行こうか」
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夏葉の誘いにOKを出した俺は、早速夏葉と共に海まで転移した。
……言い忘れていたが、この魔法には一つ欠点がある。それは一回行った場所しか行けないということだ。で、俺はあずさの住処に行ったことが無く(出不精のせい)転移が使えないのだ。まあ、使えたとしてもしっかり張ってある(夏葉のイタズラ失敗の経験より把握)転移防止結界で弾かれるだけども。
「ねえ~、もりっち。あずさの住処に直接とはいかないまでも、近くに転移したほうが楽なんじゃないの? 私、一回行ったことあるから跳べるよ?」
「それはやめといた方が良いと思うぞ。あずさの住処は海溝の一番底って話だろ。この体だから、水圧はまあ大丈夫だとしても、いきなり真っ暗な海底に跳べば混乱するだろうし、なにより転移の座標ミスって崖や地面の中に跳んじゃいましたじゃ、目も当てられないから」
「う~、確かに……」
「(それに夏葉に任せたんじゃ不安だし……)」
「うん? 何か言った?」
「……いや、何も」
「……まあいいや。ここに居てもなんだからさっさと行こう」
「(セーフ)」
「うん?」
「なんでもない」
そう言って、俺は逃げるように海に飛び込んだ。




