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三頭と二十三人への転生記  作者: 水渡
第二章 人類登場
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第40話 ミストを後に

 「うん、大体皆一つは魔法使えるようになったわね」


 俺達が考えた呪文を教えたことでほとんどの人間が魔法を使えるようになった。

 ここに来る前には、人間達が魔法を習得できるか未知数だったことを考えると非常に良い成果だ。


 「さて、魔法を教えるっていう最初の目的は達成したわけだけど……これからどうする?」

 「う~ん、そういや後の事考えてなかったな」

 「それならもう帰る?最初はそういう予定だったしね」

 

 「皆さんもう帰られるのですか?」

 

 俺達が今後の方針を考えていると、プロトスがそう言いながら近づいてきた。


 「まあそうだね~。この国に来た理由が魔法を教えるってことだったし」

 「ええ。一応基本的なものを一つずつとはいえ、目的は達成できたわけだしね。……それに幾ら薄れたとはいえ私達の事、まだ怖いでしょうし」

 「!! ……やはり気づかれてましたか。魔法という力をもらっておきながら大変申し訳ないとは思ってはいるのです。しかし、未だに魔物から受けた傷は完全には癒えてはいません。むしのいいことを、と思われるかもしれませんが何卒ご理解いただけないでしょうか」


 そう言うとプロトスは俺達に頭を下げた。


 「わ、わ、頭上げてよ。なんか私達がいじめてるみたいじゃん!」

 「夏葉の言う通りよ。それに女王の立場にある者が、そう簡単に頭を下げるべきではないわ。……特に、国民が不安を覚えているときはなおさらね」

 「ですが、こちらは頂いてばかり。その上に早く帰れと言っているようなものなのです。何か渡す物があればまだいいのですが、それも特にこれといった物もなし。なら、せめて頭を下げて非礼を詫び、なおかつ感謝するしかありません」

 「でも……」

 

 う~ん、これは、どっちかが折れるまで収拾つかないパターンだな。

 ……しょうがない。長引いてもメンドイし、割り込むか。


 「なら、俺達が何かもらえばいいのか?」


 俺がそう言って割って入ると、


 『ちょっと、もりっち急に何言ってるの!!』

 

 夏葉からの念話が飛んできた。しかも結構強めに。


 『でも、こっちが何かもらうでもしないと多分、女王今の態度崩さないぞ』

 『それはそうだけど……。見た感じこの国疲弊してる。そんな国から何もらうっての?』

 『ねえ、二人共。それなら私がお願いしてもいいかしら?』

 『あずさ?お願いって?』

 『実は、前の特訓中に見つけてちょっと良いなって思ってたのがあって。何かの機会にでも、もらえないかな~、なんてね』

 『……あずさって意外と抜け目ないね。まあ私はかまわないんだけど』

 『俺も別にいいぞ。特にほしいものないし』

 『アハハハ、ゴメンね?』


 「あ、あの皆さま? どうされたのですか?」


 あ、やべ。肝心の女王置き去りにしてた。


 「いや、なんでもないわ。それより女王プロトス。実はこの国にほしい物があってね」

 「ほしい物ですか。御恩もありますし、出来るだけ頑張りますが、先程も言ったようにこの国に余裕はなくあまりに難しい物は用意できるかどうか分かりません」

 「大丈夫、難しいものじゃないと思うわ。それで欲しいものはね…… 絵よ」

 「「?」」

 「? 絵、ですか?」

 「そう、絵よ。実はあなたたちの生活を観察してみたことがあってね。その時に何人かの人が集まって近くの洞窟に入っていくのを見つけたの。わざわざ危ない壁の外になんで?って思って追ってみたら、その人達が絵を描いてるじゃない。それで試しにその絵を観てみたら素敵だと思って。出来たら欲しいな~って」


 あ~、なるほど。あずさが言ってる絵って壁画のことか。

 そういや、地球で古代の人が描いた壁画とかよく発見されてたな~。この世界でも描かれてるのか。

 ……そういえばこのミストで文字を見たことってないな。それなら彼らにとって絵こそが後世に記録を残すための手段っていうことなのか。


 「なるほど。しかしあそこに描いている絵はずっと先の世代に私達の知恵を伝えるために描いているものなので、あれ自体を差し上げることは出来ません。ですが同じようなものならご用意できます」

 「ええ、それでいいわ。何枚か土で作った板を渡すからそれに描いて」

 「分かりました。少し時間がかかりますが大丈夫ですか」

 「大丈夫よ。そうね……一週間、いや、まだ暦はないのか。じゃあ今日から数えて七回目に太陽が昇った時にあそこに見える丘の上に置いてくれる?私達が皆を怖がらせないためにもね」


 そう言ってあずさは俺達が隠れて国を見ていた丘を指さした。


 「分かりました。それから数回絵を描いて、はいお終い、では申し訳ありませんし、これからずっと続けさせていただきます」

 「え?いや、いくらなんでもそこまでしてもらわないでも……」

 「こちらは遠い先まで己の身を守る手段を頂いたのです。これくらい当然です」

 「そ、そう……。なら最初に置いていく数枚以外は一年に一回でいいわ。あまりペース早くてもぶっちゃけ保管に困るし。一応三日前には空に魔法を放って合図するわ」

 

 結局プロトスとあずさの間でこの件は決まったようだ。


 それから、土魔法で作った板をプロトスに渡した俺達は、人間達による最初の国ミストを後にした。


~~~

 しかし、俺達は忘れていたのだ。

 いや、それはしょうがなかったのかもしれない。だって俺達が≪人間≫だったのは遥か昔なのだから。

 だが、それでも忘れるべきではなかった。


 -ー人という存在は、無限の欲を持つ存在であるということを。

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