第33話 ドル
人間視点
俺の名前は、ドル。
女王プロトス様が統べる国ミストに生まれ育った俺は、現在では魔物どもに襲われないように築かれた防壁を守る仕事についている。
俺の爺さんから聞いた話では、ずっと昔から俺たち人族は魔物に襲われ続けていたらしい。
そのたびに人族は武器を持って立ち向かっていたらしいが、強靭な力を持ち、さらには不思議な現象を操る魔物たちに手も足も出ず、結局徐々に数を減らしながら逃げ回っていたそうだ。
そんな時、このままでは人族が滅びると危惧したプロトス様の父上が中心となりこの地に壁を築き始めた。
もちろん、その間に魔物に襲われなかったわけでは無く、幾度もの襲撃にあったそうだ。
そのたびに、この地を奪われるわけにはいかないと決死の覚悟で防衛を行い退けていったそうだ。
その戦いの中で発見された不思議なエネルギーを手のひらに集めて飛ばすという技も、魔物を退けるのに一役買ったらしい。
もし、ここを失ったならもう自分達に未来は無いと皆分かっていて、だから命を賭して戦ったんだと爺さんは言っていた。
その決死の戦いの末に、ついに壁は完成し中に家を建てていき現在の形になっているそうだ。
しかし、壁が完成してからそう経たない内にプロトス様の父上は病にかかってしまい、リーダーの座から退かれた。そのため娘であるプロトス様がその座につき、俺たちは女王として彼女を崇めるようになった。
もちろん、最初は前リーダーの娘だといっても納得できないといった声や若すぎるといった声があったが、彼女の実力は本物で次第に皆に認められ、今では誰もが尊敬する方だ。かくいう俺もその一人。なんといってもあの美しさ、ホントに素晴らしい……。ああ、プロトス様~。
閑話休題
……コホン。と、まあそんな経緯を経て築かれた防壁だが残念ながら完璧というわけでは無い。
防壁の高さはそこまで高くないため跳躍力のある魔物なら入れてしまうし、飛べる魔物に対しては完全に無防備だからだ。
そのための対策として、俺のような防壁を守る兵士が置かれているわけだ。
といっても、ずっと壁の近くに待機しているわけでもなく、数人の見張り番を除いて全員他の仕事に従事している。ここにはまだ、いろいろ足りない物があり、それを補うためにも誰一人として遊ばせておけないのだ。
この見張り番は、当番制になっており今日は俺の担当日だった。
その日は俺たち人族の歴史上一番の驚愕の日となるであろう日だった。
「お~い、そっちは問題ないか~?」
「お~う大丈夫だ。問題ないぞ~」
それは、少し離れている所で見張りについている同僚と現状報告をしている時だった。
カンカンカンカンカンカン……
「!? これは緊急用の鐘の音……。敵襲か!!」
「おい、ドル急ぐぞ!!」
気づけば、さっきまで話していた同僚がすぐそばまで駆け寄っており、俺にそう言うとそのまま駆けていった。
俺も急いで後を追う。
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「はあああああ」
雄たけびを上げながら、俺は槍を突き出す。この槍には、さっきも言った不思議なエネルギーを纏わせている。これにより、武器の強度が上がるのだ。先祖代々伝わっている技術である。
が……。
「くっそ。なんでこんなに固いんだよ!!」
襲い来る魔物の皮膚に突きたてようとした槍はあっけなくはじかれる。
見た目からは、とてもそんな固さを持つようには見えないにも関わらず、だ。
魔物の襲撃現場に駆け付けた時から、もうずっと同じような光景が続いている。
周りを見渡してみれば、俺と同じように武器が通らず防戦一方の仲間たちが見て取れる。
奴らには、手から打ち出す弾も武器も何一つ効かないのだ。
どうやら今回襲ってきた魔物どもは、一体一体の強さが高いようだ。
(やばい。このままだと壁の内側に入られる!!)
内心そう焦ってみるものの、それで急に槍が効くようになるわけもなく……。
もう壁の内側に入られ、蹂躙されるのは時間の問題と思われたその時、奴らは来た。
(なんだ、あいつらは!!)
初め見たときの俺の感想といえば、こんな感じだった。
見たこともない服に身を包み、見慣れない色の髪をしている三人組が突然現れ、赤や青や緑に光る武器を抜き放って、魔物どもを次々と切り捨てていっていた。
俺たちが死ぬ気で放っていた攻撃をものともしない奴らを、だ。
それを見た俺は茫然として、動けなくなってしまった。仲間たちもそうだろう。
だって、俺の、いやこれまでの人族がやってきたことは、一体何だったのか。三人組の戦いはそう俺達に問いかけている気がした。
三人組は、そんな俺達を気にもせず、魔物どもを瞬く間に駆逐した。
その状況を見て、ハッと我に返り俺は武器を三人組に向けた。
助けられはしたが、素性がまったく分からないのだ。警戒しない理由が無い。
とはいえ、襲われれば太刀打ちはできない。背中に冷や汗が流れる。
だが、三人組はそんな俺達を見ると逃げ出していった。
それを見た俺は、気づけば腰が抜けていた。




