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真実

 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! 俺はジョーカーに言われて尾行者を捕らえたはいいが、そこに捕らわれていたのは知り合いである美少女二人だった。な……何を言ってるのか分からねーと思うが、俺も訳が分からん……。

 ……は、いかん。あまりの混乱にあの状態になってしまった。

『ほぉら、鬼がいましたよねぇ?』

 ジョーカーがいつも以上のしたり顔でそう言ってきた。うう、むかつくがその通りだ。

「えっと……こんにちは?」

 俺は内心でジョーカーに感謝の言葉を述べながら、とりあえず、二人に話しかけて見ることにした。警戒は解かないけどな。

「挨拶してる場合じゃないですよぅ……」

「あんたってどこか変よね……」

 うん、自分でも混乱しているのがよく分かる。リリアは口を尖らせて、エリスはジト目でそれぞれ俺にそう言った。

「……で、何で尾行してたんだ?」

 ジョーカーに言われなければ気付かなかったが、二人は俺の事を尾行していたようだ。

「あんたのことが気になったから……じゃダメ?」

 エリスがとぼけた顔でそんなことを言った。リリアも知らん顔だ。なんというか、この二人は図太いな。エリスは別として、リリアは御淑やかなイメージからは想像できないな。

「女の子に気にかけて貰えるなんて光栄だが、それとこれとは話が別だろ……」

 今度は俺がジト目を返す番だ。二人はそれでいったん沈黙してしまう。どれ、ここは一つカードを切るか。

「尾行の理由は、もしかしてお前らが『初心者じゃない』ことと関係があるのか?」

「「…………」」

 俺の問いかけに二人はとぼけたような顔で無言。しかし、目は口ほどにものを言うのだ。目からは動揺が読み取れる。

 そう、二人は『初心者ではない』のだ。自己紹介で初心者だ、と言っていたがどっこい。目は嘘をついているときの目だ。このおかげで、二人の印象は始めからあまりよくなかった。

 手品師は、人の心の動きに敏感だ。だから、目を見れば嘘をついているかいないかぐらいは分かる。

「沈黙は肯定と受け取るぞ。さて……全て話してくれると嬉しいんだけどな」

 俺は頭を掻きながらそう言って見せる。その後、しばらく沈黙が続くが……

「エリスさん、仕方ありません。話してしまいましょう」

「そうね。別に悪いことではないし」

 二人は観念したようにそう相談した。

「いやぁありがたい」

 俺もため息を吐いてそう言った。これで話してくれなかったらどうしようかと思っていたところだ。

「まずは、そうね……素直に最初から話すわ」

 と言って、エリスは話し始めた。

「まず、最初の段階では、あたしたちは最近あの辺に出ている野盗退治に来ていたわ。作戦としては、装備を悪いものにして初心者の振りをし、野盗を誘い出して返り討ち、といったところかしら」

 なるほど。あの段階から演技は始まっていたわけだ。さすがに、あのレベルだと俺は声だけでは演技かどうかは聞き分けられないな。耳はかなりいい方だと自負はしているが、この二人は声の演技力が抜群の様だ。または、俺が衰えていたか、だな。となると……俺はあそこで介入しなくても良かったじゃん。

「そこに、ユウスケさんが通って、加勢してくれたんです。その戦いぶりは冒険者にすらなっていないにしては中々のものだったので、別の仕事に移ることにしました」

 リリアがそう言って、腰のポーチから紙を取り出す。

「それは、将来有望な新人の教育です。これはある程度のところまで進んだ冒険者にギルドからお願いされるものです。一応、ギルドクエスト扱いですね」

 その紙を受け取ってみると、なるほど、そういった旨の内容が書いてあった。

「あたしたちはその仕事を、ユウスケで済ませようと思ったわけ。別に強制力がない『お願い』程度のものだけど、やっとくに越したことはないしね。で、この仕事は教育する新人に正体を知られちゃいけないから嘘をついていたってわけよ。何はともあれ、嘘をついて悪かったわ」

「私からも、遅くはありますが謝らせてください。申し訳ございませんでした」

 二人は本当に罪悪感を覚えているようだ。

「なるほどね……嘘はついていないみたいだし、これで一つすっきりしたよ。ああ、それと嘘をつかれていたとはいえ、それが決まりなんだし、俺にとって悪い話じゃなかったから謝らなくても良かったのに」

 俺はすっきりした気分でそう言った。さっきまでの警戒はもう解いて、『アースバインド』も解除した。目を見ても嘘はついていなさそうだし、信用してもいいだろう。

「あ、てことは尾行していた理由は俺が死なないように見張っててくれてたのか。いやぁ、むしろ済まなかったなぁ。ありがとう」

 俺は今気づいたことを口にだし、感謝の言葉を言う。そんな人を俺は縛り付けていたわけだ。うんうん、悪いことをしたなぁ。

「「…………」」

 二人は、照れたような感じの一方で、俺の事を変なものを見る様な目で見ている。え、えっと……俺、何かおかしいことをした?

「まぁいいわ……」

「それで、これからどうしますか?」

 しばらくの沈黙ののち、エリスは諦めたように首を振り、リリアは俺に問いかけてきた。

「まぁ、この後夕方ぐらいまで狩りだな」

 俺は即答した。このまま少しでも多く狩って金を稼ぎたい。二人の様子は気になるところだが、触れたらいけない気がする。

「そう分かったわ。……あ、そうだ。ねぇ、一緒について行っていい?」

 エリスがいきなりそんなことを言い出した。

「えーと……なして?」

 俺は混乱して反問してしまう。

「そ、そうですよぉ……これ以上迷惑をかけるわけには……」

 リリアが何故か涙目でエリスを説得している。なんか、俺の方を怯えたような目でちらちら見てきているのはなぜだろう。さっきまでの図太い様子とは嘘みたいだ。うーん、そういえば初対面の時からちょいちょいこんな反応を見たような気がするな。

「あー、ユウスケ。この子、男恐怖症なのよね。悪い子ではないから気分悪くしないであげてね」

「え、エリスさん!」

 ああ、なるほど。男性恐怖症か。だからこれ以上そばにいるのを良しとしないのか。ちょっと悲しくはあるが、仕方ないよな。

「ほら、もうばれちゃったんだし。どうせなら遠慮なく間近で品定めさして貰いましょ」

「う、ううう……分かりましたよ」

 どうやら結論が出たようだ。でも、俺は正直勘弁してほしい。だって、『ストレージ』が使えなくなってしまうからだ。そうなると素材が回収できないのがもったいない。ん? まてよ……前々から見られていたということは……。

「それと、あんたのその魔術は何かしら?あの魔物の素材とかを一瞬で消したり出したりするあれよ」

 やっぱりそうだあああ! だろうと思ったよ! 早速俺の特異性がばれてるぞ!

 さて、これで断る理由が無くなってしまった。……仕方ないな。

「はぁ……勝手にどうぞ」

 俺はそう言って、乾いてきた喉を水で潤す。ふぅ、落ち着いた。とりえず……

「狩り再開だな」

 俺はそう言って、近くに来ていたゴブリン五匹を『カマイタチ』で両断した。


                ■


 夕方まで狩りをして回って、最終的に薬草三十枚、ハウンドドッグ八十匹、ゴブリン七十匹を仕留めた。しかも素材は全部回収した。

 あの二人の前でも、もう遠慮なく『ストレージ』を使うことにした。考えてみれば、ジャリスさんも『ストレージ』はばれても仕方がないから別にいいだろう、と言っていた気がする。

「うーん、本当にそれって便利よね」

「そ、そうですよね。お、教えていただけなのは残念ですが……」

 二人は俺が荷物をしまっている様子を見てそう言っている。リリアは相変わらずどもっているが。というか、昨日までよく演技出来たな。

 この世界は、オリジナル魔術を人に教えないことが多い。というか、教えない人が9割だ。俺の場合は頑張って練習した甲斐があって無詠唱で使用できるため、魔術の名前すら知られない。あの二人から見れば俺は風と地属性に適性があるから、そのどちらかの属性と言う事は見当をつけられるだろう。だが、実際はおおはずれで、『ストレージ』は無属性だ。

「これは教えるわけにはいかないからなぁ」

 俺は村への帰り道を進んでいく。あ、そういえば、

「お前らってさっきそこそこの冒険者だから後輩育てを依頼されたんだろ?ランクはいくつよ?」

 俺は二人に問いかけてみる。確か、Dが一人前、Cが凡人の限界、B以上が天才の領域らしい。となると、二人はDとかCだろうか。Bとか行っちゃうかもな。

「わ、私たちはどっちもAランクです」

「で、称号も貰ってたりするわね」

 二人はそう言ってギルドカードを見せてくれた。うん、Aランクですって。……しかも称号持ち。

「あたしの称号は『金閃剣』よ。カッコいいわよね!」

「わ、私は『銀爪牙』です。……本当はもっと可愛いんが良かったのですが……」

 どっかで聞いたこと……あ、ギルドのルールブックだ。うっわ、この二人超有名人かつ凄い人じゃん。一般的に、年齢に応じて魔力や経験が積み重なって強くなっていくのだ。となると、二人はこの若さにしてAランクに君臨しているわけだ。偉いなぁ。

「そうかぁ。俺とそんなに年齢が変わらないのに凄いんだなぁ」

 俺はついつい感心したように褒めてしまう。

「……な、何か勘違いしていらっしゃいませんか?」

 すると、リリアがおずおずと俺に聞いてきた。俺が頭の上にはてなマークを浮かべていると、

「あー、一応聞いとくけど、あんたは何歳?」

 とエリスが問いかけてきた。

「ん? 十六歳だぞ。それがどうかしたのか?」

 俺は普通に答えてみせる。すると、二人の表情が納得したようになった。

「あたしたちはどっちも百四歳よ」

「はっ?」

 ぱ、パードゥン?い、いやぁ~、き、聞き間違いかなぁ?

「その顔は戸惑っている顔ね。もう一度言うわ。百四歳」

 百四歳? 十四歳じゃなくて?……。

「あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! 俺は二人が同い年かしたぐらいだと思っていたのに、どうやら二人は「何言ってんの?」すまん何でもない」

 いかんいかん、ついつい混乱でまたあの状態になってしまった。途中でエリスが止めてくれて助かった。

 ふむ、それにしても百四歳か。嘘をついている様子もないし、それならAランクというのも頷けるよな。若くて、長命……あ、あれかも。

「もしかして、エルフか妖精族フェアリー?」

 人に似ていて、長命。それはこの二つに当てはまる。だが、その割には身体的特徴がない。例えば、エルフは耳がとがっているし、妖精族は常に淡く発光しているはずだ。

「半分正解ね。あたしはエルフと人族のハーフよ」

「私は妖精族と人族のハーフです」

 なるほど。だから見た目の特徴は人族に似ているわけか。その一方で長命なのはそれぞれのを遺伝しているというわけか。となると、リリアがちょっと小さいのは妖精族の特徴なのか。この部分だけ特徴が出るとはな。

 さて、今までの話しを統合しよう。簡潔にまとめると、二人はAランクで百四歳のベテランだと。……。

「今までの非礼をどうかひらにご容赦ください」

「ふ、ふぇっ!?」

「ちょっ!? いきなり何やってんの!?」

 俺は即座に、両手をついて頭を地面にこすり付けていた。そう、これぞジャパニーズ・土下座だ。とてつもなく情けない格好だし、ジョーカーが俺を指さして不快な声で爆笑しているが、そんなの関係ない。

「はるかに年上な上に立派な先輩にタメ語を使って申し訳ございませんでした。これからは誠意をこめて敬語で話させていただきますので、どうか今までの非礼をお許しください」

 俺の偽らざる本音だ。強い・有名・年上・大先輩。そんな人にタメ語だったりとかはとにかくいかん。部活動に入ったばかりのころに、先輩を同級生と間違えてタメ語で話してしまったときの気まずさが思い出される。

「あぁもう! いいから! 別に口調ぐらい気にしなくたっていいわよ!」

「そ、そうですよ。私たちはき、気にしないのでっ!」

「い、いや、で、でも、そういうわけには……」

 二人はああいってくれるが、部活動で先輩にタメ語でいいよ、とか言われた後輩の心境だ。あれって迷惑だよね。乗るべきか突っ込むべきか迷うんだもん。

「はい、じゃあ先輩命令! 敬語禁止! 気軽にタメ語! 遠慮もダメ! これでいいでしょ?」

「あ、あまり畏まられると困りますので。あ、わ、私はそのう、癖と言いますか、敬語が普段の話し方なのでき、気にしないでください」

「そうです……そうか。ありがとうご……ありがとな」

 二人の優しい言葉に、俺は敬語で話しそうになりつつもお礼をする。

「はぁ、もう、何なのよ。あんたってほんと変わってるわね」

「わ、悪い方ではないんでしょうけど」

 二人は疲れたような声でそう言った。

 そんなこんなで、俺たちは村への帰路を歩んでいた。


                ■


「は、初めてのクエストでこの成果は素晴らしいですね」

 受付嬢にギルドカードを渡して報酬を貰おうとすると、そう言われた。討伐数はギルドカードに記録されるので不正は出来ない。

「いやぁ、運が良かったですね」

 俺はそうにこやかに濁す。

「えっと、ハウンドドッグ八十匹で大銀貨四枚、ゴブリン七十匹で大銀貨五枚と銀貨六枚、薬草は三十枚で大銅貨三枚ですね。合計大銀貨九枚、銀貨六枚、大銅貨三枚になります」

 一日働いただけで十万円弱相当を稼いだ。これは幸先がいいな。

「あ、それと素材の買い取りをお願いしていいですか?」

「はい、こちらにどうぞ」

 俺が問いかけると、受付嬢は裏庭に案内してくれた。そこには、椅子に座っていた暇そうな老人がいた。

「ん? 鑑定じゃな。どれどれ」

 その老人はよっこらせ、とか言いながら腰を上げて近づいてくる。

「じゃあ、これらをお願いします」

 俺は、『ストレージ』で一気に素材を目の前に置いた。

「ほげ!?」

「っ!?」

 受付嬢と鑑定士の老人が驚くのが分かる。

「……オリジナル魔術、ですか?」

「驚いたのう。こりゃあ便利そうじゃ」

 しかし、二人は思いのほか驚かず、そのまま平然と鑑定をし始めた。

「便利な魔術ですね。ハウンドドッグの素材は一匹大銅貨一枚で合計銀貨八枚、ゴブリンの素材は一匹銅貨五枚で合計銀貨三枚と大銅貨五枚、合計で銀貨十一枚と大銅貨五枚ですね」

 ハウンドドッグとゴブリンの素材は滅茶苦茶安い。肉も食用に適さない、臭い、素材も大して質が良くないということだ。精々皮が超々安物の服になるぐらいだ。だから、余計な部分は回収せずに解体したのだ。

 だが、ちりも積もればってやつでこれだけ集めればそこそこの金になる。

 今日一日で十万円レベルの稼ぎを出した俺は、意気揚々と受付に戻った後にその報酬を貰う。

「これでユウスケ様はFからEにランクアップいたしました。おめでとうございます」

 受付嬢はそう言ったあと、ギルドカードを渡すように言ってきた。渡すと、何かの結晶に当てた後に戻ってきた。ギルドカードにはEランクと書いてある。

「ありがとうございます」

 俺はそう言って、あるクエストを受注した後にギルドから出た。その後、直接昨日と同じ飲食店に行って食事をし、宿に帰るとちょっと魔術の練習をしてすぐに寝た。明日はそこそこ早いからな。しっかり寝とかなければ。

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