第二話 悪魔化
大切な人を亡くす。それは愛されなくなることだと思います。
主様をバンッと突き放した。
それが最後の僕の抵抗だった。
悪魔化してしまったら、もう考えたくもない___
「う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛」
「テティ!だめ!戻ってきて。」
悪魔化してしまった。テティが。
離れなくては、そう分かっていても体は動かない。足が竦む、そして私の心がここに居ろと言っている。
天使の証が消滅した。燃え尽きるように輪が消えたのだ。
その代わり綺麗なテティの目は赤黒くなり、忌々しい角が生えている。
「主様!逃げてください!」
天使が私を呼びに来た。
私は分かっていた。分かっていたの。
テティが天使達に虐められていること。
でも助けられなかった。私が1番の加害者だ。
私に責任がある。
テティに静かに近付いた。そして誓った。
貴方に人生を差し出す。
「駄目です!主様!下がってください。今神父を呼びました。」
私の何かがプツンと音を立てて切れた。
「貴方達でしょ?テティをこんな悪魔にしたのは。」
「え?何言って。」
天使は偽の笑顔で言った。最後まで自分が大事らしい。
まあ当たり前と言ったら当たり前か。
天使は私の手を引こうとした。
「ね?主様行きましょう。」
「やめて。」
手を振りほどいた。
「テティ。私の人生を貴方に差し出す。」
神への誓いだった。
手をぎゅっと祈り、目を閉じた。
あと少しのところまでテティが来ているのは見えていた。でも、それでも私は目を閉じた。
最後まで神を天使を信じていた____
自分に悪魔が乗り移った感覚がした。
感情や想い、私の全てが無くなる。奪われる。
悪魔化を解く方法はひとつ。
自分が悪魔になると誓うこと。身代わりだった。
ハッとテティの意識が戻る。
目の前には悪魔化した主様が。
知ってしまった、分かってしまった。
「いやだ、やだ、帰って、きて。」
主様に向かう足がもつれる。一刻を争うのに。
僕は悪魔化を解く方法を知らない。きっと主様は僕を守るために___
「止まりなさい。」
知らない声。
「悪魔はこいつか。」
神父だ。
「やめてくれ!!この人は悪魔なんかじゃない」
悪魔化した主様に抱きつく。
腕の中で暴れる主様は昔の優しい主様ではなかった。無くなっていた。
「君、離れなさい。殺されるぞ。」
冷たく言い放った。主様のような温度はない。
「いだっ。」
主様が僕の腕に噛み付く。良い。それで済むなら。
神父が静かに悪魔を祓おうとした。
悪魔を祓う、この世界では永遠の死を意味する。
生まれ変わりなんぞ存在しない。
「やめて!やめてください!」
「うぐぁ」
主様から声にならない潰された声が出る。
「神よ、全ての過ちを。」
主様は腕の中から静かに塵のように崩れた。
確かに先程までそこに居たのに。
暖かさはもうない。
ご閲覧ありがとうございます。
大切な人はずっとそばにいて欲しい。そう思います。




