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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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メタファー#2

「世界で最も自由なものって何だと思う?」あたりには沈黙が満ちた。私は助手席で街灯に照らされたこの街並みを眺めていた。寒空の下、なんでもないように立ち尽くすビルたちと寒そうにマフラーを巻いて歩く一人の少女。私はその情景の対比を見て、どこか素敵に感じていた。その対比を見て感じているこの気持ちの正体はメランコリー的な、この晴れない今なのだろうか?私はため息をつきながら窓から視線を外す。そして彼の方を見た。彼は退屈そうにハンドルを握りしめていた。私は彼の顔を一瞥して、ラジオをつけた。ラジオから入ってくるのは雑音だった。どうやらこの雪は私の邪魔をしたいみたいだ。私は雪が好きだったはずなのに、今日の雪はそんな私を裏切るようだった。私はラジオを消した。そして、私はシートを倒し、ゆっくりとそこにもたれかかった。そして私は斜め上を見た。そこにはフロントガラスのすれすれ、そこにぶつかり続けている雪の姿があった。その雪がぶつかっては散っていく様は綺麗だった。その姿は儚いものを見ているときに湧き上がってくる侘しさのようなものだった。しかし、その綺麗だって好意的に受け止めたはずの心はその気持ちに引っ張られないであの憂鬱な姿のままだった。「記憶じゃない?」私の声はこの沈黙の車内に響いていた。彼の視線はチラリと私の顔の方を向いた。「どうして?」その言葉は、その問いかけは、問いかけた誰か自身にとっての発想の抑止。この言葉が告げられた瞬間、この場にあったのは私の拙い思考だけになってしまった。次の瞬間、私は一人でこの無人の車内に閉じ込められていた。私はドアを叩く。しかし、ドアはいくら叩いても開くことはなかった。ダンダンダンッ!開かない。嫌だ。私は半狂乱のまま、車を叩き続けた。しかし、この閉じられたドアは開くことはなかった。そしてこの車内が、私のいるこの空間がどんどん小さいものになっていく。脚が、腕が恐怖で動かせなくなっていく。嫌だ。つぶされたくない、死にたくない。一人なんて、独りでなんて嫌だッ!「じゃあ?独りじゃなきゃいいの?」私はその声で起こされた。ここはコンビニのようだ。私があたりを見渡していると運転席の扉が開いた。「起きてたのか?」彼は私を見ながら、飲み物を差し出した。それはカフェオレだった。私はストローを指してカフェオレを飲み始めた。飲んでいる間、私の頭に再生され続ける誰かの言葉。「おいしい?」「普通。」「まずい?」「おいしい。」「暖かい?」「うん。」「冷たい?」「うん。」「眠い?」「たぶん。」「寝たい?」「寝たくなんてないッ!」私はもうカフェオレを飲み終えてしまった。私はコンビニにこのごみを捨てに行く。「捨ててこようか?」「ありがとう。でも、いいよ。私も気分転換したいし...」私はコンビニの扉をくぐった。けたたましいサイレン(コンビニの入店音)、誰かの視線が私へと向けられた。その気持ちの悪い視線はどこからか私の顔を見ていた。私はその視線を探し始める。このコンビニの中には私と、高校生くらいの店員が一人と、そして雑誌を立ち読みしている男が一人いた。その男はその雑誌を食い入るように見ていた。その店員は今にも眠ってしまいそうな顔を浮かべながら、かろうじて立っていた。そして私の感じている視線は私に追従し、私の顔面を常に真正面から見ていた。そんな気持ちの悪いものだった。だから、私はその視線の居所を探ることができなかった。後ろを向いても、そこには回り込んでいた視線が、下を見るとそこに不可視の視線を向けている誰かがいた。私は思わず耳を塞いで目を閉じてその場でうずくまってしまった。その時、私の背後に人影が見えた。その人影は私の背後に立って、そこから私を見下ろしていた。何がしたいの?どうしたいの?なんで立ち尽くしているの?その問いに答える声はない。その視線は固唾をのんで今か今かと何かを待っていた。そう、何かを...「どうして私を見ているの?」「だってあなたは見世物じゃないか。」「私に何を期待しているの?」「希代?それとも期待?」「欲することの方よ。数少ない方じゃないわ。」「それは失敬。俺にとってはどちらも似たようなものなのでね。安心なさい。俺はあなたに何も求めておらんのでね。あなたはそうやって耳を目を塞ぎ、そして口を塞いで死んでくれればいいのですよ。」私はつぐんでいた瞳を開ける。気づけば私はその雑誌の中に閉じ込められていた。私の開かれた瞳を見てその男は大きくのけぞった。「ああ、なんてことだッ!なんて気持ちが悪いんだ。お前のその瞳はッ!」彼の視線が映し出した私の姿は、私の瞳の中はグニャグニャとうねっていた。それは生き物、ミミズみたいだった。次の瞬間、その生き物が、そのミミズみたいな生き物が私の方を見た。「ああ、なんてことだ。なんて気持ちが悪いんだ。私のこの瞳はッ!」

私はカフェオレを飲みながら助手席に乗って窓から外を眺めていた。雪はだいぶ強くなっていた。この大通りには私たちの車以外は走っていなかった。彼は車の速度を上げた。私はシートにもたれかかり、カフェオレをあおりながら、降りしきる雪の姿を眺めていた。その時だった、車のボンネットに何かが落ちた。大きな何かが...

読んでくださってありがとうございます。

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