第三十八章 生き残りの死 #2
第九章 走馬灯 中編
「私とタッグを組んでくれないか?」六波羅の急な提案に俺は戸惑ってしまう。どうして初対面の俺を直接誘うのだろう?お前みたいな名探偵には、この組織から直々に専属のバックアップが配属されるはず......嗚呼、それに俺はもうこんな組織やめてしまうんだ。もうその決意は揺るぎやしない。「......残念だけど、俺はもう辞めるんだ、こんな仕事。」俺がそう彼に告げれば、彼は嗤う。「辞めるだって?フフフ。」「何が可笑しい?どうして嗤う?」「だって辞めるなんて......」「嗚呼、天下の名探偵様はそんなことを考えたりなんてしないんでしょうね。だから、そんな自信に満ち溢れているんだ。でも、その自信は今の俺には驕りに見えるよ。そしてそれは今にもお前が死んでしまう慢心のようだよ。そしてその慢心が今のお前がここにいる理由だろうかな?じゃあ、お前は八人目だ。」「八人目?」
「お前は無為無能な俺を許容することができるだろうか?嗚呼、できないだろう。だから、そんな申し出はこちらから願い下げだッ!今までの七人は、許容のできない俺の存在、俺の自業自得の所為でどうしようもない死にざまを遂げてしまった、まさに死の神を招き入れてしまったんだ。
彼らはその運命を拒絶して、そのために彼らは例外なく苦痛と呪いにまみれた凄惨な死を遂げてしまった。そしてその死は、俺に教えてくれたんだ。死を忘れること勿れと......なのに、どうして俺は死を知らないふりをして生きなければならないのか、彼らのように死ななければならないのか。もう俺はわかっているんだ。七人目の死を見て、次は俺なんだろうって、悟ってしまったんだ。なのに、どうしてわかりきった死に向かって歩いていかなければならないというのだろうッ!そんなことは無駄でしかないと、わかりきったことなのにッ!すべてがコルコンド効果でしかないと、そう理解して、理解してしまったからこそッ!、彼らの死を無駄にしてしまわないと、俺は生きてなんていけないんだッ!それとも、お前は俺に今すぐ死んでほしいのだろうか?
そう言えば、お前はあの銃を、あのナイフを、あの白いローブを今日は身につけていないんだな?あれは大衆に見せつけるためのパフォーマンスのための衣装だってことかな?嗚呼、残念だ。もしその拳銃を、そのナイフを持っているなら、今ッ!、そのナイフを、その銃を、今の俺に向けて、その引き金を引いてしまえばいいのにッ!」
「ねえ、少し人の話を......」六波羅はそう言って、俺を止めようとしている。しかし、この時の俺には、そんなの声にしかならない。このまま、この先の会議室で、この辞表を突きつけて、手続きさえしてしまえばすべてが終わる。その終わりは、俺が今まで散々、散々味わってきた絶望よりも、どんなに鮮やかな色彩が滲んでくれているだろうかッ!この色の鮮やかにまみれた世界をずっと見ていたい、そのために俺はこの仕事を辞めてしまうんだ。嗚呼、なんて後悔のない選択だろうか?それとも、その選択の影を見ようとしないだけだろうか?いや、もう俺はたくさん見た、嫌と言うほど影ばかりを見てきたんだ、それでその影を見続けて、何か意味があったと思うことができるッ!(その問いかけに答えてくれる声は無い。だって、そんな問いかけは言葉になんてなってはくれないだろうから。そもそも、こんな俺の心情を誰が聞いているって言うんだ?)もういいだろッ!俺がこの影を見続けていた、でもそれはただ業を回すだけだった。それは渦の様に、堂々巡る渦の様に。そしてその中に、その渦の中でしか俺は生きられないと勘違いしていただけ、思い上がっていただけだった。その思い上がりが、この渦を俺だけの世界にして、俺はもうこの世界を殺すのか、この俺を殺すしか、生きる道はないと思ってしまう。いや、そうなんだ。だから、そうだからァ!「うるさいな。いい加減にしてよ......」気づいたとき、六波羅が俺を睨んでいた。声になっていたのだろうか?いや、俺はこの内に渦巻く情緒を、吐露なんてしていないッ!もし、そんなことになってしまったなら、俺の心は存在していないことになってしまって、そして俺の存在が揺らいでしまう。そう、だからそんなことありえないんだ。でも、ならどうして......彼の声が俺の心を遮ってッ?
「だって、そんなことできやしないから......本当、滑稽だってね。」彼は何を呟いているのだろう?そんなこと?「何を言って?」「もうあなたはこの世界に取り込まれてしまっているのに、後戻りしたい、”開放”されたい、だなんて中途半端なことをッ!」彼は嘲う。「中途半端、だって?後戻りだって?お前は何を言ってッ!」「嗚呼、わかりやすく言おうかァ!お前はこの仕事を辞めることなんて出来ないんだってことだよッ!」俺は六波羅の言葉を呑み込めない。辞めれないだって?「お前の証はすでに刻み込まれてしまっているのだからッ!」証?「証、それはお前の心、そしてお前がお前であることの証明、またはお前をかたどった名称、こころを元型をかたどった名称、感情の癖、そして絶望の味だよ。」
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