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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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退屈しのぎを削って 後編

文字と聞いて私がイメージしたのは、鉛筆でノートに書き記したあの日、私の手から零れた筆跡の流れだった。私はこのノートを書き上げなければならなかった。しかし、そのノートに一度描いてみたそれは、私の想像とはかけ離れた滲みを持っていて、私がその滲みを目の当たりにしたとき、その内容のすべては台無しだって思ってしまう。そしてそんな死体を前にして、私は一番、苦しいと思ってしまう。そう、そんな書きたいことと苦しいことの瀬戸際で揺れていた私はいつの間にか、そのノートに書いた文字の上から新しく文字を書いてしまっていて、そしていつの間にか、それは誰も読むことのできない文字の集合体になってしまっていた。そのノートを見て、「何だこれ」と、そう書いた本人である私が呟いてしまう。そして唐突に恥ずかしくなって、私は鉛筆を握りしめて、そんなおぞましい文字の羅列を塗りつぶした。そして私は冷静になって、そのノートを見れば、そこに現れたのは黒い渦だった。


『私は逃げなければならない。』私は死に物狂いて走っていた。しかし、その渦は信じられない速さで私に襲い掛かる。「なにこれ、なにこれッ!」私はこの今を呑み込むことなんて出来やしないッ!その黒い渦は文字の集合体だった。その文字は黒色の私の筆跡も流れだった。それがまるで渦を成すように空間に漂っているんだ。私は時々、背後を振り返りながら......なんて、そんな余裕はその渦の存在、背後を振り返らずとも、確かに追いかけてきている、その渦の存在を感じてしまったために、とっくに無くなってしまっていた。


私の意識は、前へと走る。そこに希望があると信じて、私は死にたくなんてないと思っていたけれど......そんなことを思っている時点で、私の命は脅かされていると気づいていた。フラグがたっている。私は死ぬ?まさにこの今、こんなわけのわからない瞬間に、殺されてしまう?そんなの、そんなこと嫌だ。死ぬなら、私は私の意思で、私のために死にたい。そんな誰かの意思に自分の命を使わせてなんて、そんなこと、そんなのふざけんなよッ!


私はいつの間にか十字路に差し掛かっていた。私はそこで周りを見渡してどちらに行くべきか、考えていた。しかし、私はこの道を知らないことに気づく。そう、私はこの道を今まで見たことがない。そしてあの黒い渦の様な超常的な存在は、私の無知に付け込んでくるんだった。それはあの白装束の男だってッ!その瞬間、私の中でフラシュバックする夢、いや私はもう現実逃避を止めたんだった。私はもうあれを現実だって思うことにしたんだ。そうすれば、あれは現実の延長になり、夢なんて不明瞭な存在なんかじゃなくなる、そしてその現実の中で私は現実と全く同様に過ごせば、その夢でも現実でも、私は死なない。むしろ、それは復讐でもあるんだ。私を何度も何度も殺した苦しみを与えた超常的な存在に、お前たちなんていないと告げてやりたいがための行為なんだから。そうだ、言ってやるんだ、お前たちなんて知っている、そして私の現実にはいないなんてことがってッ!


だから、この今に私はおびえる。今までの夢の恐怖が私の心に去来する。いや、蘇ったその記憶は、また違った味わいになっていった。こんな黒い渦なんて、知らないと、そしてこの十字路だって知らないと、そしてここから私はどう動くべきなのか、どうすれば私は逃げることができるのかッ!、そんなことに思考を巡らして......私は瞳を閉じて、背後から近づいてくる、その渦がどこまで近づいてきているのか、感じようとして......その刹那、私は戸惑ってしまった。確かに感じていたあの渦のプレッシャーが消えてしまっていたから。私は瞳を開けて、周囲を見渡す。


そこには十字路があった。

私は来た道を振り返る。そこには黒く滲んだ夕焼けがひろがっていた。

私は前を向く。そこには今にも沈みゆく夕日を称えし夕焼けの青空があった。

私は右を向いた。そこにはリミナルの夕闇が広がっていた。

私は左を向いた。そこには私が描いていたノートが地面に横たわっていた。


私は死の予感を感じていた。その予感は私に警鐘を鳴らしていた。それはどうしようもないような予感だった。それはこの道の先、どれを選択しようとも、私は死んでしまう、まさにそんな予感だった。いや、その感覚は予感なんて不確かなものよりも、かつて私が見ていた予知夢のような確信に近かった。嗚呼、やはりあの力なんてしょうもないな。それに私はもう克服したつもりだったのに、私の未来恐怖症を......


私は賭けに挑むことにした。この先にあるのが罠だとしても、そう、そんなことがわかっても、それに挑戦しないことは、ただの無意味でしかないと、私は私に刻み込んだはずだから。そう、私が私であるために、私はここで足踏みをしているわけにはいかないッ!私が私であるために、私が私であるからこそッ!そうだ、こんな迷いに意味はあるのだろうかッ!否ッ!そんなのただの現実逃避、今の私を呑み込めていない証拠でしかないッ!私は死なないために私であり続ける必要があるのだからッ!こんな迷いが生まれるはずがないんだッ!そうだろうよ。


私は前を向いて、この迷いを抱いた私を退屈だって笑って見せた。それは誰かに見せるように、そしてこの天を仰ぐようにッ!そして私は選択する。『真っすぐ進む』ことを......

読んでくださってありがとうございます。

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