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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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第三十八章 希望の証が消えて......

第十話 潜入


私は予知夢の意味を知った。それはある種の呪いのようなものだった。


私は予知夢の中で生きている私が嫌いだった。その私はすぐに間違えてしまう。歩いていれば転んでしまう。深呼吸をすれば、埃を吸い込んでむせてしまう。会話でもすぐにしどろもどろになって、そしてそんな私を変えたいと思いながら、ただため息をついているだけで......


その予知夢は私の現実、その地続きだったから、彼女が私の創り上げるあの現実で間違えるたびに、周りからは心配と嘲りが湧き上がってしまう。この現実世界を私の幸せを追求する楽園を描こうとしていた私は、その夢の中でいつも、いつも何も知らないこの予知夢の中の私がその楽園をぶっ壊して、その度に去来する絶望を感じることが、本当に苦しかった。恐怖、もしこの予知夢が本当に現実だったなら......憎しみ、どうしてこの私は、普通に生きていくことができないのだろう。私はもともと完璧主義者ではないけれど、でも、この予知夢の中で生きているこの彼女の存在は、私が見てきたどんな人よりも、駄目で、駄目でしょうがない奴だったッ!だから私はその私を否定するがために、そしてそんな恐怖から逃げるように、その予知夢の内容を改変して、私は私の理想郷を紡いでいた。だけど......私は知ってしまった。そんなことに意味が無かったことを......


私はいつの間にか金属バットを握りしめていた。その金属バットはまるで私の手に握りしめられていたものように、まるで私の身体の一部であるように馴染んでいて、私はそれをいつの間に手にしていたのかわからない。そしてそのまま、この建物のドアを破壊して、この建物に侵入していく。まさにあの予知夢と同じように。


この予知夢はこの自分勝手でどうしようもないこの私を生み出すためのものだった。私は、この予知夢を見るようになる以前の、彼女と親友だった時の私のままで生きているつもりだった。だけど、私は私の中にあった私を否定して、”私”じゃない誰かになってしまっていた。そしてその私は今までに何度も何度も、人を殺していたんだ。私には未来なんていらない。だって私の過去に意味なんて無かったから。私の今は未来を過去にすることによって描かれたものだったから。そう、私に未来なんて無かったんだ。そんな私がどうして生きているだなんて思いあがっていたんだろう?私なんてもうすでに人で無しだったというのにッ!


私は生きなければならない。それはこの予知夢の本来の役割を果たすことだった。予知夢で見たとおりに行動するということ、それはこの私を否定して殺すような行為だった。でも、こうするしか、私は私を取り戻すことができない。そして、私の予想が正しいなら......


私がこの部屋を見回して、そして確かにあった扉、そこにあった鉄格子の先を覗いて......そしてその時、背後から聞こえてくる声。「お前は幸せになんてなれないよ。」私はゆっくりと振り返り、そして懐にあったスタンガンを見た。その時、私の失われた右手が蘇り、そのスタンガンを発動させた。そして私は意識を失っていく。


私は公園のベンチで起き上がる。嗚呼、やっぱり予知夢と全く同じ行動を取れば、それは予知夢に取り込まれてしまうんだろうな。そして今、私は予知夢の中にいるんだ。私は手鏡を取り出して、そこに映る私を見て、笑ってしまうッ!この世界なら、私は自由だッ!ついに解放されたんだッ!


壊れてしまえ、そう言いながら私は金属バットを振り回して歩いていく。それは私への今までの憂さ晴らしだった。周囲の壁にひびを創って、道路のアスファルトに致命的なひびを生み出して、そしてできたのは私だけのプロムナード。なんて美しく、そしてどうしようもない、そんな道なのだろうって。嗚呼、この感動を共有できる誰かがいないだなんて、なんて寂しく、そしてなんて神秘的なんだろう。このまま私は空を見上げて、いつかこのくすんだ空も壊せたらななんて思ってしまう。いや、いつか必ず壊そうッ!いつもいつも私を見下してやがってッ!お前がそこにいることに胡坐をかいているなんてことはもう知っているよッ!


私はあの建物の周りにあった森を焼き払い、そしてその建物を壊していく。そして満足した私はその建物の中に入って、そしてそのままその建物の中も壊してしまおうとして、どうしてだろう。その建物の中はもうすでにボロボロで今にも崩れてしまいそうになっていた。その光景に漂う畏怖に後ずさりしてしまう私、そしてその私の先には誰かが立っていて、私は振り返れば、そこにはあの格子窓の付いた扉、そしてそこから、こちらを覗き込む瞳と目が合った。


私の前にいたその誰かは私を見て笑う。「ようこそ~♪私のサンクチュアリ~へッ!」空間がうねり渦を成す。私の前に現れたもう一人の私はこの場所を破壊しつくすつもりだ。彼女は私と同じように、この自分で破壊した痕を自分だけの世界だって思っているみたいだった。そして、それは私だって同じだッ!「これが聖域?へえ、なんて無様なんだろうね。」「無様?フフフ。一体、何を言っているのかな?この場所は、この聖域は私だけのもの。それだけでどんなにここは美しく、そして意味があるかってね。嗚呼、あなたにはわからないか。」「嗚呼、わからないさ。こんなのただ閉じこもっているだけ。そう、私はあなたを殺しに来たんだ。自分勝手な夢のあなたをッ!」「殺す?あなたがこの私を殺すってッ!あなたこそ、今まで散々自分勝手だったくせに、私が気に入らないからって殺しに来たなんて。私は私がいればよかったのに、あなたはすべてを欲しがったから。そう、あなたこそ自分勝手、そして今、あなたはこの聖域にだって潜入して、その中身を暴こうとするなんてッ!あ、血迷ったのかなッ!そんなこと、できやしないだろうにッ!」「できないって?フフフ、私はそんな風に思うお前の心を消し去って、そしてさようならをッ!」


私の目の前で果たされる私の死、その死体はもう長い間放置されてしまっているみたいに私の前で腐り落ちてしまう。しかし、その死に顔は、確かに私であると、私は思うことができた。そしてこの建物は私の良く知っているあの、傷一つない床、壁、そして天井へと変わり果てる。そしてその廊下の先にはもう一つ扉があって、その扉の前で立っている私に背後から何か言葉が聞こえたような気がして、私は振り返った。


そこにいたのは白装束の男。彼は両手を振り上げて、その手に強く握られている何かを振り下ろそうとしていた。それは私にナイフが振り下ろされていく、まさにあの時みたいな......その時、私の手に何かが触れた。私はその何かを感じて、そしてもう手放さないように、強く強く握りしめた。そして、それが何かのお守りだったことに気づく。「お前は......」白装束の男と私の前に現れた人影、それは真っ黒なローブを身に纏っていた。彼は私に振り下ろされようとしていたその攻撃を庇うように、私を突き飛ばした。


「ようやく会えたなッ!この偽物がよッ!」彼はそう言って、その白装束の男を睨んでいた。その瞬間、彼はその男が握りしめていた何かが振り下ろされる。そしてそれが彼の胸に焼けただれた空洞を生み出していた。しかし、彼はそんなこと何でもないように、彼を睨んでいた。「そんな力任せな自分勝手(強襲)に意味なんて無かったなァ!それもそのはずだ、俺は待っていたんだ。お前のせいでこの世界はめちゃくちゃになってしまったんだから。そう、すべてはお前から始まったんだ。俺の存在をすり替えてッ!この世界に干渉して、そして俺は今の今まで、役割を果たすこともできず、同胞たちの死にざまを黙って見ていることしかできなかったんだッ!」「お前は......」「役立たずの希望の象徴()だよ。それとも『タリスマン』とでも言おうか?お前がかつてそう名乗ったようにッ!」


私は目の前にいる男を見る。男は薄ら笑いを浮かべていた。私は彼を見て、見ていると、どうしてストレスが溜まってくるように、変な気分で、さっきまであんなに私は生きていたのに、今、私はまるで墓の下にいる、棺桶に閉じ込められている、まるで死んでしまったかのように思ってしまう。違う、ここに来たのは私の意思で、ここにいるのは私の今で、そして私は今、解放されたって、そう思ったのに、私はやっと夢の中に入れたのに、どうして......こんなに気分が悪いのだろう。私は辺りを見渡して、そこに広がる気持ちの悪い光景を見て、どうしようもなく広がっているそんな今を目の当たりにしてしまった。違う、私はこんなところに、こんな今になんていなかった、私はもっと私がいきたいと思っていた場所に、そんな桃源郷に、そんな夢のような場所に来たはずなのに、もう後戻りのできない場所にいけたはずなのに、どうして私はこんなに、すべてが無駄になってしまっている、すべてが台無しになってしまっていると思っているの?そんなどうしようもない私の前で彼は笑い出していた。「そうか、お前だったか、絶望の象徴。一体どうして俺の前になんて現れてきたのかなァ?そんなの死ぬだけだって言うのに」「違うなッ!死ぬのはお前だッ!」次の瞬間、白装束の彼はのっぺらぼうになった。違う、そこに現れたのは捉えようのない顔だった。たくさんの人の顔がその一つの顔に集約しているように見える。そしてその顔の一つ一つから声がしては、言葉にならないで消えていく。そして私はその顔の一つ一つを見て、そのすべてに面影があった。そうだ、私は知っている。かけがえのない同胞だった彼らを......なのにどうして私は......ここは私のいるべき場所じゃない。じゃあ、ここは一体どこなの?「さあ、知らないね。誰も知らないさ。俺も私も、そして僕だって知らない。

だって、この場所にはあなたしかいないんだから。」「いやぁああああああああ」

読んでくださってありがとうございます。

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