退屈しのぎを削って 前編
青空の中に漂う、小さな小さな黒い点。その存在を目の当たりにして、何だこれと心の底から思ってしまう。その点は堂々と、まるでその場所にいることが当然だって言うみたいに、その姿をこれ見よがしに見せつけていた。でも、そんな風に見せていても、その黒い点が自然に存在しているなんて信じられなかった。だから、その黒い点を人差し指で指し示してみる。すると、その黒い点が取り繕っているように見えたその光景は、たちまち、不自然で奇妙な光景へと見えてしまう。嗚呼、どうやら、この光景が正しい光景の様だった。そしてその今の正しさと今までの正しくない感覚を覚えて、その覚えた感覚はまさにリミナルを示していた。
この人差し指はその黒い点をずっと指し示していて、この瞳も、この視界も、この人差し指の先を捉えていた。そしてこの不自然な黒い点が何なのか、それを理解するために、この黒い点を一目見た時の感覚と、その黒い点を人差し指を指し示した瞬間の光景すべての解釈が翻ったあの瞬間をとそれぞれ捉えて、そしてその二つを分つ、そんな境界線を捉えた。そしてその境界線を挟む形で、反復横跳びを始めていく。その反復横跳びの中で、その黒い点はその大きさをどんどん大きいものに変えていった。
その黒い点にノイズのようなものが走っていく。それはその黒い点の存在が、確かと不確かとの間、まさにそんな対極の存在の間を行ったり来たりしたために、その存在を維持することができなくなってしまったからだ。嗚呼、そうだ、そのままその存在を維持できないで消えてしまえッ!なんて、この人差し指が笑ったような気がした。そして気が付いたときには、もうこの反復横跳びを止めることなんて出来なくなってしまっていた。
その黒い点に走っているノイズは次第に大きくなって、いつしか点のように思えたそれは、ぼやけた靄になっていた。人差し指はその靄を指して笑っている。そしていつしか、その笑い声は、その人差し指だけじゃなくなっていて、いつしかこの場所全体に響く声に成り果ててしまっていた。そしてその声はどんどん大きくなっていった。
その声の大きさはどこまでも大きくなっていく。そこにはまるで終わりがないように思えてしまう。次の瞬間、鼓膜が破れてしまった。しかし、その声は聞こえてくる。まるで脳内に直接這入り込んでくるように、そしてその這入り込んできた声は、脳内で大きくなっていく。そして次の瞬間、脳みそが破裂した。
飛び出す視界が捉えるのは、周りにいた人々、彼らはみんな空を指さしていた。そして彼らはその指をさしている方向を見て笑い声をあげている。何がそんなにおかしいのだろう。そう思ったから、その彼らの指が指し示している方向に視線を向けて......そこにいたのは”私”だった。そのことに気づいた私は、この周りを見回して、何だこれ、と呟いてしまった。
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