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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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第三十八章 予知夢

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俺は何をやっていたんだろうな?まさに、そんな俺の前でカウントダウンは終わりを告げていく。「私は知っていたんだよ。探偵のあなたがこの爆弾を解放することなんて夢のまた夢だってことはッ!」「黙れッ!」俺はそんな風に、誰もいないこの場所で叫んでしまった。そんな声に「そんな声に意味なんて無いのにッ!」彼女は俺の言葉をまるで知っていたみたいに重ねていく。「さあ、思い知ったカナ?どこまで行っても、どこへ行こうとも、あなたは愚者でしかなかったんだってことをッ!」その言葉が声になるようにこの場に残響を遺して、カウントダウンは平和を告げて逝く。最も残酷で最低な平和を......


第六話 侵入

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この町を歩いていれば、この町の汚さに嫌でも気づかされてしまう。住宅街を歩いていれば、噂話をしている誰かが私をいつも見ていた。その人差し指を、私の瞳に突き刺すように......なんて痛い視線なのだろう。だから私はいつもこの町を、堂々と歩くことなんて出来なかった。私にはいつも理由が必要だったんだ。この町を歩くことを、自分自身に言い訳することができるような、そんな理由が必要だった。そしてまさに今、私は理由を抱えている。もしそんな噂話をする誰かに問い詰められたとしても、私は沈黙を貫き、それでもし死んだとしても、その死のすべてを私を殺した誰かの所為にしてしまえるような、そんな理由を。この名刺に書かれた建物に向かう。あの白装束の男の手がかりをつかむ。そして彼女の死と、あの荒唐無稽な力、その真相を暴くなんて言う理由、まさに秘密を。この秘密を抱えている私は、傍から見れば怪しげで、でも私がこの私を省みたならば、今の私の姿はミステリアスに見えてしまっていた。そのミステリアスなんて響きに、そんな感覚に酔いしれている私は、この歩いている今、その噂話をするこの町の隅の見えない住人を黙らせることのできる悪趣味な笑みを、そして今の私を象徴するような不敵な笑みを零していく。この笑みを見た彼らは、その瞬間、私から逃げていった。それはまるで、彼らが今までその瞳を逸らしてきたものから逃げているみたいでッ!

そしてそんな姿の彼らをなんて馬鹿馬鹿しいのだろうと笑い飛ばし、私はこの夕暮れの町並みを横目に、目的の場所へと辿り着いた。


そこにあった建物を見れば、ここに人なんて住んでいないことは明らかだった。でも、私はその建物の中に侵入しようとしていた。この時の私はこの建物の外観がまるで作られたような、まるで演出のように見えてしょうがなかったから。そして、私はそんな荒唐無稽な想像が真実だって信じてしょうがなかったから。(あの荒唐無稽な力が現実に存在している......だったならッ!)私はその建物に正面から侵入した。


その建物の外郭につけられていた半開きで崩れかけの門を潜り抜けると、そこには傷も汚れもない一面真っ白な空間が広がっていた。私はそんな建物内部を見て、私の直感が当たっていたこと、あの名刺の情報は本当だったということを悟った。その建物内部を少し進むと、小さな扉があり、その扉の横には「探偵事務所」と木の看板が立てかけられていた。私はその看板を一瞥して、その扉を開けようとする。しかし、その扉には鍵がかかっていた。「チッ!」私は舌打ちをして、その扉を蹴飛ばした。案の定、その扉はビクともしなかった。


私は鉄バットを携えて、その扉を何度もたたいて破壊した。(こんなところで時間を使ってなんていられるかッ!)私はその扉の先に入る。そこには殺風景な部屋が広がっていた。まさにミニマリストと言うべきだろうか、この部屋は生活するうえで必要最低限の物しか置かないことに対する、偏執的なこだわりをまさに体現している部屋だった。私は普段ならこんな部屋気持ち悪いと一蹴してしまうだろうが、今だけはこんな部屋を歓迎してしまう。この部屋全体を見て回るのに時間をかけたくなんて無いこの私にとって、この部屋の在り方はまさに願ったり叶ったりだったから。


私はこの部屋を引っ掻きまわして、何かないかと探し回る。しかし、何も見つかりはしない。私は焦る。そしてこの部屋には二階に続く階段と、私が入ってきた扉とは別の扉がもう一つあった。私はこの何も見つからない部屋を探索することに見切りをつけて、そのもう一つの扉に近づいていく。その扉には小さな格子の窓がついており、私はそこからその扉の先を見る。すると、そこには先が見えないほど長く続く廊下があった。そしてその扉の先、うっすらと靄がかかっているところには誰かが......


その扉の先に夢中になっていた私は、私の背後に立っている誰かの存在に気づくことができなかった。「お前は......」その声で私は振り返った。すると、そこで喪服を着たその男が私の存在を信じられないように見つめ、呆然と立ち尽くしていた。そして、けたたましく鳴り響くサイレンがこの建物の二階から響き渡り、私は時間切れであることを悟ってしまう。彼は懐から拳銃を取り出し、その銃口を私に向けた。その光景を見て、私は懐から素早くスタンガンを取り出す。そして彼がその銃の引き金を引く前に、私は自分に向けてそのスタンガンを起動した......


===

私は公園のベンチで目が覚める。どうやら私はいつの間にか眠っていたらしい。私は普段から持ち歩いている手鏡を取り出して、その鏡の中にいる私に問いかける。「私は、ミステリアスなんて、でたらめに定義されてしまうほどにまで、私は私の存在を貶めてしまったの?」そう問いかけたその刹那、あの予知夢の中の私が抱いた一時の幻想は崩れ去り、私の生きているこの現実感を取り戻すことができた。

そしてそんな実感の中で、私は予知夢を振り返る。でも、どうしてだろう。その夢の中の私は私なのに、私じゃないような気がしてしまう。気のせいだろうか?私の今まで予知夢の中では、こんな感覚を抱いたことなんて一度だって無かったのに......

その時、私の首に虫が這うような感覚がした。私は反射的にその首に触れる。しかし、その感覚を拭うことなんて出来なかった。私は持っていた手鏡でその首周辺を見て......そこにはミミズ腫れができていた。私はそのミミズ腫れを見た瞬間、予知夢のラストシーンを思い出す。自分に向けたスタンガン、そして気を失う私の姿を......それは予知夢の中の出来事のはずだった。なのに、私のこのミミズ腫れはあの予知夢がもう起きてしまったことであると、私に告げていた。そんなことありえない、だけど......私は何か嫌な予感を覚えていた。そして私は彼の名刺を見返して......『私はこの場所、あの建物に行って確かめなければならない。』、と感じてしまう。私は何か大きな勘違いをしている、そんな気持ちが拭えないから......


次回 第七話 運命

読んでくださってありがとうございます。

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