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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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222/240

第三十八章 六波羅万華鏡

探偵よ、そして愚か者よ。

どうしてあなたはその筒の中身を凝視する?

そこに真実でも有ったのか?

それとも......


第一話 依頼人と死


「やめてッ!」その瞬間、私の頭は宙を舞った。

私の視界にうつる天井に広がる街並み、

そして眼下に広がる青空、

そしてその青空に浮かぶ彼女。

そんな顔しないでよ。そんな顔されたら

死にきれないじゃないか......


「そんなわけがないッ!そんなわけがッ!」

「落ち着いてください。」その若い警官は私を宥めようとしてくる。

なんてやりきれないのだろう。私の気持ちはあなた達の所為で

散々裏切られてきたっていうのに......

こんな私の抗議は、あなた達の対応道理の範疇を越えやしないのかッ!

彼女は私の前で死んだ。

まるで私に見せつけるように、

でも、彼女が私に遺したダイイングメッセージを見れば

彼女が自ら死を選んだなんて思うことなんて出来なかった。

そう彼女は、誰かに殺されたんだ。

私は知りたい。知らなければならないッ!

『彼女がどうして死んでしまったのかッ”!』

なのに、彼らは役立たずで、彼女の死を自殺と決めつけてしまっている。

どうしてそんなことができるのだろう。

私が彼らに見せた彼女のダイイングメッセージは

荒唐無稽でいかようにも解釈ができると突っぱねられてしまった。

その時、私はとても後悔してしまった。

彼らに彼女のダイイングメッセージなんて

見せなければよかったと、そう思ってしまった。


「やあやあ。元気かい?」私の前に現れたのは

最近知り合った”時田”と言う男。

彼の第一印象は、何を考えているかわからない。

良く言えばミステリアス、悪く言えば胡散臭い男。

無精ひげのそり残しとぼさぼさの髪に

くたびれたコートを羽織り、そしてその瞳の下には常にクマを称えていた。

「......久しぶり。」

私は彼の馴れ馴れしい挨拶に少し戸惑いを覚えた。

「堅苦しいのはよせよ。そんな風にさ。」

(急に話しかけてきたのはあなたなのに、

なんで私はそんなことを言われなきゃいけないんだッ!)

なんて、私は疲れてイライラしているみたいだ。

私はそんな言葉を呑み込んで、適当にこの今を取り繕っていく。

「私に何か用?」

「いいや、ただ挨拶しただけだけど......

それにしても、珍しいな。お前が遅刻するなんて......」

「ただの私用よ。ちゃんと許可は得ているわ。」

嗚呼、そうか。彼は私の上げ足でもとろうなんて考えていたんだろう。

なんてしょうがない奴......


彼は私に何かを見せてきた。

それは一冊のノート。それは彼女のノートだった。

「どうしてあなたが彼女のノートを?」

「彼女が俺に貸してくれてさ、そのまま返しそびれていたままで......」

彼は申し訳なさそうに振舞う。

誰だよ、彼がミステリアスなんて、胡散臭いなんて思ったのは......。

彼はただただ、だらしない男でしかないじゃないか......

「あんなことがあって、俺はこのノートをどうすればいいかって考えたんだ。

公には自殺なんて言われているけれど、俺はこのノートを渡されて、

その中身を見てしまったから、

そんなの真実なんかじゃないって気づいてしまったんだ。

でも、俺には勇気がない。」

彼は私にこのノートを突きつける。

私にはその姿がとても、みっともないように見えた。

でも、そのみっともない彼の姿が、そのノートの存在を際立たせていた。

その時、私はどこからか声を聞いた。

「できるのか?お前にこのノートを受け取るそんな覚悟があるのか?

この事件の真実を明らかにする救いをお前がもたらすことができるのか?」

そんな声が聞こえてきた。それは私の知らない誰かの声、男の声......

私はその声を聞いた瞬間、そのノートを掴み取った。

そのノートを突き付けているその男の手から無理やり奪い去ってしまうようにッ!


第二話 奔走、そしてお願い。


そのノートの表紙には止んで雨と書かれていた。

そして、そこに書かれていたのは、ダイイングメッセージ。

そして彼女の秘密だった。


~~~

『私は逃げなければならない。』

ここじゃないところへと逃げなければならないんだ。

私は誰かに命を狙われている。

どうしてそう思ってしまうのか。

それを説明するには私の秘密を明らかにしなければならないね。

そう、私はこの秘密を守りたいがために

ここまで誰にも相談なんてしないままでいたから

こんな取り返しのつかない袋小路に迷ってしまったんだ。

でも、だからこそ私は一途の望みに賭ける決心がついたんだよ。

たぶんこれが私の手を離れたなら、私の秘密なんて意味を失ってしまうから。

そしてこんなノートを必死に呼んでいる誰かがいるのなら

私はもう死んでしまっているだろうから。

そう、これは私のダイイングメッセージか、被害者による被害予告か、

それともこの全部がただのフィクションになってくれるのか、

そんな私の命を使った賭け事(禁忌)なんだよ。


私には明日のことを夢で見ることができた、

そんな予知夢のようなことができたんだ。

その予知夢の中で、私は夢を現実だって

疑うこともなく過ごし続ける。

そしてその夢の中で眠りに付けば本当の現実の世界が始まる。

そして、その現実の結果が夢に反映されていく。

そんな力があったんだ。


私は本当いい思いをさせてもらったよ。

昔は仲のいい友達に、未来のことを当てるなんて

言って、クラスの中心になったり、

高校生の時は、委員長にだって成れたっけ。

そう、テストだって問題を全部知っていたから

勉強もほとんどしなくてよかったし、本当に楽だったよ。

でもそんな幸せは、ある日を境に唐突に終わりを迎えてしまった。

そう、ある日、そんな夢の中の私が誰かに殺されてしまったから......


それから、私は夢を見ることができなくなった。

いや、見ないようになったが正しいのかもしれない。

それから私は夢の中で身体をズタズタに引き裂かれるような激痛を

味わうようになってしまったから。

それから私は現実世界だけを生きるようになった。

この夢ありきで生きてきた卑怯者の私にはそれだけでも

だいぶ、自業自得だって自分自身を責めることになって

苦しむことになったけれど、問題はそんなことじゃない。

私を殺す誰かがいたということ、それが問題だったんだ。

私の最期の夢の中で、

私は家に帰る途中、背後から誰かに私の名前を叫ばれた。

私は振り返る。するとそこには白装束を身に纏った誰かが

そしてその誰かは私をその包丁でめった刺しにしていった。

何度も何度も、私の首を、胸を、貫いて、

私の身体から止めどなく溢れる血が、辺りを穢していった。

私はその痛みを感じながら、意識を失っていく。

最期にその白装束のローブから見えた口元が

微笑んだのを最期に......


そしてしばらく私は夢を見ないでいた、なのに

ある日、唐突に夢を見るようになった。

その夢の中で、私はどこか高い山の上にいた。

一体ここはどこなのだろうと、思っていれば、聞こえてきた雅楽

そして私はその雅楽に呼ばれるように、その音に近づいて、

その音の先にいた誰かに殺された。あの時のように......


私は海上にいて、そこで白装束の誰かと向かい会っていた。

私はそこで信じられない荒唐無稽な力で化け物と戦っていた。

その瞬間、私は絶望する、これは夢だなんて気づいてしまったから。

嗚呼、わかる。私はまた死んでしまう。

なのにどうしてあなたはそんな風に笑っているの?

そんなにあの私には自信があるの?

その瞬間、私はその銃を突き付けている私を私なんて思えなかった。

「私は終わりまでこんな夢を見てなんて無いのに。

 どうしてあなたは自信があるの?

その殺意の矛先にあるのが底なしの絶望だって知っているのに

どうしてあなたは銃を突きつけることができるの?

私はずっと夢の中で現実と同じように過ごしていたのに、

あなたは夢の中で自由気ままに生きているみたいね。

どうしてそんなことができるのか、わからないッ!

もう私を苦しめるのはやめて、ただ逃げてよ。

生きようとしてよ。それが私の望みなんだから。

私はただ生きていればよかったんだから。もうやめてっ!」

その刹那、彼女は私の前で八つ裂きにされて?

違う、八つ裂きにされたのは私......


私は夢にうなされて満足に眠ることができなくなって

夢の中で私が八つ裂きにされて、

夢の中で私が飛び降りて、

夢の中で私が消えて、

そんなことが何度も何度も繰り返されて

そんなそばにはいつも誰かの殺意が、そして誰かの声がした。

誰だっていうんだろうなんて、もう決まっている

あの白装束の服を纏いし人で無しなんだって!

私は予知夢なんて超常的と揶揄されるような事象に散々触れて

利用してきたから、もうこの夢を蔑ろにすることなんて

そして笑い飛ばすことなんて出来なかった。

むしろ、そんなことをしてしまえば、私は死んでしまうと感じているんだ。

私に向けられた意思、殺意の気持ちの存在を夢で見ただけで、

あれは現実にも存在しえるということを私は確信していたんだ。

その殺意を持って、私を殺す誰かの到来だってッ!


雨の昼下がり、私は商店街を通りかかった。

そしてそこでコロッケを買おうなんて思っていたまさにその時、

背後から声がした。

私は振り返る、しかしそこには誰もいない。

私はこれは明晰御か?なんて思ったけれど

そうではないと気づく。

その声は散々聴いた声のはずなのに、既視感を抱くことが出来なかったから。

そう、それは言葉だったんだ。白装束の誰かの殺意が、

現実世界の私に初めて向けられた、そんな瞬間だったんだ。


私は逃げなければならない。その言葉を聞いて、私は逃げ出した。

しかし、どこに逃げればいいのだろう?

私は聞く、誰かがついてくる足音を。

しかし、私が振り返ればその足音はたちどころに消えてそこには何も無い。

そんなことが何度も続いていく。

それはまるで私が見た予知夢のようにたしかな感触があった。

だんだん現実になっていくような、そんな感触、

あの白装束の誰かが近づいてくるそんな予感。

いや、予感なんかじゃなく予知、まさに確信めいたものだった。

私は思ってしまう。逃げれないんじゃないか?

私は今まで散々見続けてきたデジャブは私に死ねと言っている。

そして私もこの死の運命から逃れるビジョンを思い描くことなんて出来やしない。

もし、あの予知夢が復活してくれるなら話は別だけど......


悔しい、私のどこにも行けやしないこの今が苦しい。

これは報い?でも、私はこれが予知夢を使ってきた代償だったとしても

私が見たあの微笑み、私を見るあの嘲笑いを思い返せば

そんな風に諦めることなんて考えることなんて出来やしないから。

そう、私がこのノートを書いたのはこの賭けに臨むため。

死ぬか生きるか、その狭間で揺れている今に終止符を打つためッ!

もし、このノートを呼んでいる誰かがいて、もうすでに私が死んでいたなら、

私はその白装束の何者かに殺されたって

そのことをつたえるがために、このノートは存在しているんだよ。


ねえ、あなたがここまで読んだってことは

もう私は死んでいるんでしょう?

勝手に私のノートを読むなんてね。

まあ、死人に口なしカナ?

でも、お願いだよ。

私は誰かに殺されたってことを、あなたは覚えていて?

このノートを読んだあなただけでも......

~~~

それからだった、私が予知夢を見てしまうことになったのは。


第三話 予知夢、そして探偵。


私は見た。あのノートで描かれていた夢。まさに予知夢を。

道路沿いを歩いている私が何気なく眺めたナンバープレート

鳥の鳴き声、そして気温、風、そして微妙な今に漂う雰囲気に至るまで

私はあの夢の中で感じて味わって、そして知ったすべてが現実で展開された。

私は信じられなかった。そして同時に悟ってしまう。

あのノートに書かれていた内容はフィクションなんかじゃない。

本当の事だった。

つまり彼女は殺されたんだ......

私は彼女の死にざまを思い出す。

彼女は私の前で車に轢かれて宙を舞った。

私はそんな光景の広がる今を呑み込むことなんて出来ないで、

どうしてこんなことになってしまったのかそんなことばかり考えてしまっていた。

私の所為?これはすべて、私の所為なのだろうか?

思い当たる節がないなんて言えば嘘になってしまう。

そしてそんな節がいつしか私の喉に、心臓に突き刺さった

罪の楔になって、そのことを意識して生きているのが当たり前になって

苦しくなった。でも、それが罰だって思いながら

生きていこうと思っていたそんな決意を、真実が裏切っていった。

私は、あのノートを始めて読んだ時

ふざけるなッ!なんて、そのノートを投げ飛ばしていた。

馬鹿にしてるなんて思っってしまったから。

その白装束の誰かも、予知夢も

彼女が死ぬことに対する言い訳でしかないと思えてしょうがなかったから。

だけど、私がこの予知夢を見るようになって、彼女の気持ちを理解ってしまった。

なんて、寂しいのだろう。彼女はこんな生きた心地のしない夢と現を

揺蕩っていたのかって、そう思えばなんて悲しいのだろう。

彼女が生きているときに、私も予知夢が見ることができたなら、

こんな気持ちも互いに慰めあうことができただろうに。なんて......

私は許せないよ。勝手に殺されて、それで最後のお願いが

『あなたが殺されたことを忘れないで』なんて......許せない。

やり切れやしないッ!

だから、私は決意した。

私は彼女を殺した犯人を見つけ、復讐することを。


警察なんて役立たずだった。こんな証拠をみすみす嘘だって決めつけてッ!

どうにかこの予知夢を誰かに見せることができや、信じてくれるだろうのに、

そんな不可能に縋りついて、なんてことなんだろう。

私は今を生きるって決めたんだってッ!そんなことを呟いている今、

私の横を焦燥ばかりが過ぎ去っていった。

手がかりが一切つかめない。

私の予知夢の中にまだあの白装束の男は出てこない。

あのノートには犯人の特徴は白装束のローブ、ナイフと銃を握りしめて

そして口元に悪趣味な笑みを称えている、それくらいの情報しかなかった。

もっと、遺してくれていれば......

そして私の状況に応じた推察は素人レベル。

私の予知夢の内容をどう駆使してやろうかなんて考えながら、

白装束の男の到来に備え、そしてその男の尻尾をどうつかんでやろうか

考え続けている、それだけでいっぱいいっぱいだった。


ある日、私は夢の中で一人の男と出会った。

彼は喪服を全身に身に纏い、家に帰る途中の私をジッと見ていた。

私はその向けられた視線の方向へ反射的に振り返れば、その男は焦るように

逃げていく。なんて怪しいのだろう。そして同時に、白装束の男につながる

初めての手がかりかもしれないと、私はその逃げていく男を追いかけていった。


第四話 彼は六波羅万華鏡。

読んでくださってありがとうございます。

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