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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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第三十七章 プロムナード 第三話

落ち着いているだけで

そう落ち着いて歩いているだけで

それだけでよかったんだ。

そう気づくには、私はもう遅すぎて。

ほら、どこからか聞こえてくるカウントダウン

やめてッ!そんな声が言葉になんてなってくれないで

あの散歩道は私の痕に成り果てていく。

もともとあった好きな光景には私の手垢がついて

ありふれたもの、退屈に成り果てて、

私はそれが嫌いになった。

そしてその道にいる私すら、嫌いに思ってしまう。

この光景を見ても、何も思うことのできなくなってしまった

そんな私が嫌いになったのか、

そんな私だからこの光景に何とも思うことができないのか。

私は気になってしまう。

そんなこと、本当にこころの底からどうでもいいことなのに。


そんな問いかけが何度も現れては消えていった。

そしていつしか、そんな問いかけに対して、

答えないでいることが私の生きている理由になった。

そして私は同時に、そんな答えないでいる私に

怒りのようなやるせなさも抱いてしまっていた。

それが散歩中の落ち着いている私の気持ちとぶつかって

その瞬間、私はこの世界から消えてしまう。

散歩をしている私、そんな私を見ている私、

その存在が互いに互いを殺しあってしまうから。


「どうして殺せるの?」

「彼らの存在がこの今を台無しにしていた。

なのにあなたはそんな今を大切にしようなんて

偉そうなことを言えるなんて、

そんなのあなたがこの今を生きてすらいないってこと

その何よりの証拠でしょう?」

「黙れッ!この人で無しがッ!

そんなのただの自分勝手でしょう?

そんな自分勝手なあなたと私の今を

同一視するのはやめてッ!

そんなの気持ちが悪いからッ!」

「それで、その気持ち悪さのためなら

そんな瞳を私に向けることは許されるって

そう言うことだろッ!

あなたのその殺意にまみれた瞳でさ、

もし私が今、死んでしまったなら

あなたの言葉は果たして意味があったと言えるの?

あなたの今を尊重して、大切にしてなんて

言葉が私を尊重してくれる言葉になって、

そんな言葉を発したあなたが自分の首を自らの手で

絞めてしまうだけだって、どうしてわからないの?

私はそんなあなたが嫌いだよ。そんなどこまでも自分勝手なあなたがッ!」


互いに互いを自分勝手と罵り、

そしていつしか互いの首を絞めていく。

そしてそんな光景を私はただ眺めていた。

まるで他人のように、

まさに他人のように、

関係ないと言い訳を並べるように、

それを自己犠牲なんだって、自分のための自己犠牲なんだって呟くように。

他人なんて存在しえない夜が始まって、他人しかいなかった朝が終わる。

夕暮れ時に見た彼らの姿は、どれも輝いて見えた。

でも、それは私が知っていたから?

これからみんな死んでしまうことを知って、

全てが茶番に思えてしまったから?

私のこの今すら、運命の慰めにすぎないということに気づいてしまっていたから。

そんな娯楽の中で何をしても、意味なんて無い。

生きる意味も死ぬ意味もなく、ただ約束された終わりへと続く

この道を歩いていくだけだった。

その道がどこに続いていこうと、私にはどうでもよかった。

その終着点へと至るまでの結末を眺めているだったから。


「誰?」私はその声の主に問いかけた。

私はあなたなんて知らない。

知りたくなんて無いッ!

「そんなふりをしたって無駄だよ。

あなたは知っているはずだから。」

そしてこの道の終点に存在していたもの

それを見て、私は自身の罪を、無責任を悟る。

私の瞳の前にあったそれは地獄の門だった。

「嫌だ......そんなことってッ!」

「この世界にありふれていた奇蹟の中で生きることは

楽しかったかな?いや、あなたはそんな奇蹟を一番に

台無しにしてしまっていたんだ。

そんなあなたが楽しいはずがないよなッ!」

私は足はその門に向かって歩いていく。

そしてそんな私の背後から聞こえてくるのは

道が崩れていく音、誰かの声。

その声を聞いた私が思うのは

私のこころを打ちのめす絶望。

どうして、私は絶望なんて感じているのだろう。

そしてそんな問いかけの所為で私は気づいてしまう。

私が生きてなんていなかったのは、この絶望を

感じないでいるためだったことをッ!

「やっぱり、無駄だったみたいだな。

お前は最期の最後、この今際の際で気づいてしまった。」

「黙れ......」

「なんて弱弱しい言葉なんだよッ!

そしてその言葉に込められている意味はお前自身に対してでしかなく

僕にとってはそんなの声にしかならないッ!

なあ、そろそろお前の役割を理解したかよ、この出しゃばりがッ!

この門を開けろッ!そしてすべての希望を捨ててしまうんだよッ!

希望を見ることもできやしないお前が、

すべてが茶番にしかならないと思い続けていたお前が、

一体どうしてこのありふれていた奇蹟を直視できるかよ。

できないんだろ?」

「これが、終わり?」

「そう、ありふれていた奇蹟を信じることができない

お前が最初に思い描いた希望、まさにたった一つの

希望を叶えるため、この今のために、すべてを犠牲にして輝く

この夜の中の太陽のような奇蹟。

ただこの夜の闇を際立たせるための絶望ッ!

終わりだって?違う、これはお前の最初で最期の死、

俺が自由な世界、その始まり、

そしてこれが僕の復讐の特異点(ターニングポイント)

あなたはすべてを知って、すべてやり直したいと

無責任に思って思い続けて死んで逝け。

それがどんなに幸せなのか、

どこまでも幸せな自分勝手なのか、感じながら

残酷な自由を感じて想って思われて消えていけッ!」

彼女は門を開け放ち、その瞬間、彼女の前に現れたのは

終わりのない深淵へと続く道、その奥に見える神秘的な光......

そして彼女はいつしか、その光の前に立って、

その光に触れて......


この時の彼女は幸せだった。そう今彼女はこころの底から幸せだった。

ようやく彼女は自由に成れた、解放されたって、そう思えたから。

第三十七章 完

読んでくださってありがとうございます。

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