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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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216/239

去来、夕暮れのプロムナード。 第一話

「それでは、カウント5秒前、5、4、3......」

五月雨「さあ、始まりましたね。今日の夕暮れ散歩。

本日のゲストは、こちらのお二方です。」

港「こんにちは。」

時田「やあ、どうも。」

五月雨「皆さんご存じ、港さん、時田さんです。」

港「どうも、港です。今日は仕事の息抜きとして

参加させていただきました。

私はこの番組を見ていつも癒されていました。

綺麗な景色、輝かしい夕日が道を照らしている。

そんな毎日の繰り返される光景、

でもその光景に私は毎日気づくことができない

そんな光景に触れることができるこの番組が好きでした。

本日は、そんな景色の一部になってしまうように、この番組の

輪郭になってしまいたいと思います。

よろしくお願いします。」

時田「やあ。時田と申します。本日は、この夕焼け散歩に

お招きいただきましてありがとうございます。

この町はリニューアル工事が進み、

この参峰は溢れんばかりの活気で満ち満ちています。

しかしながら、それがこの町の常ではないと、

普段とは違う、落ち着き払った面もこの町は魅力として

持っているのだということを、町長としてではなく、

この番組のゲストとして、この町を愛している一人として

この番組を通じて発信していきたいと思います。

よろしくお願いします。」

カット/


舞台は移る。

海岸沿いの大道路。ここから砂浜と地平線が一望できる。

今の時刻は18時。地平線に沈みゆく夕日がその砂浜を照らしていく。

五月雨「黄金色に染まる砂浜、去来する波、海の向こう側からやってきた風が

私たちの耳にかかる。私たちはその耳にかかった風を感じて、

その風の声を聞く。その声は、誰かの声の様で、誰の声でもない。

でも、その声を聞くと寂しいなんて感じてしまう。

私はそんな声を聞いて、そんな言葉を感じて、

そしてそれが他でもない祈りだって思ってしまったなら

たぶんもう私はここにはいない。

そう、私はその風が生まれた場所にいた。

そこで私はただ独り、たった独りであの祈りを、

この言葉を紡ぎ続けてしまうのか。

それはとても寂しいと思う。

嗚呼、そうか......

この声はそんな私のSOSだったんだ。」


港「「この光景はなんて綺麗なんだろう。」

なんて、この悠久の時の流れの中で、

この景色は何回言葉にされてきたのだろう。

私は実際に具体的な数を思い浮かべてみるけれど、

どんな数を思い浮かべても不自然に感じてしまう。

それは私が思い浮かべてしまっているから?

小さな数を思い浮かべようなんて、無意識のうちに思ってしまって

そんな意図が見え透いていたから?

「この光景はなんて綺麗なのだろう。」

なんて、言葉は不自然だった。

私は私のオリジナリティを言葉に対して感じたことなんて無かった。

私の顔、名前、そして声はあんなにも私だけのものであるのに、

私が紡ぐ言葉、その内容はそこに込められているものは

私の知っている記憶がすべて元になってしまっていたから。

私がこの景色を見たとき、何か言葉で表現しようとする時、

私は自然と言葉を紡いでいってしまう。

一体どうして?どうしてそんなことができてしまうのだろう。

私の感動はいつしか誰かの感情になっていたのだろうか?

かつて「この光景はなんて綺麗なのだろう。」

なんて言葉を紡いだそんな誰かによって

僕の感情が侵されてしまって、

もう僕は消えていたの?」


時田「こんな景色が綺麗だって?

どうして、そんな風に思うことができるッ!

この景色は綺麗でも何でもないと、なぜわからないッ!

この景色はただ、太陽が沈むだけ、それだけなのに。

みんなこれで太陽が死んで無くなってしまうと、

本気で思っているんだ。確かに、これでもう朝が来ないと

思えればなんてロマンティックなんでしょうねッ!

来るよ。絶望を引っ提げて、そんなロマンを打ち砕くために

朝は来るよ。一生明けることのない夜を、

一生覚めることのない夢を追い求めていたあなたは、

そんな絶望でもってようやく正気を取り戻すよ。

人で無しの夜、人で有りの朝、

その転換点に倫理観を手放すことを覚えてッ!


吾輩はそんな彼らを心の底から軽蔑するよ......」


暫く、私たちは黙って夕日が沈んでいく光景を眺めていた。

この場所に私たち以外には誰もいなかった。砂浜に私たちの影だけが

伸びていく。どこまでも、どこまでも、その夕日から逃げるように

伸びていった。波のざわめきが聞こえなくなって、

遠くからカモメの鳴き声が聞こえてきた。

光が見えなくなって、何でもない夜の一部分が瞳の前に広がる。

そして私はその夕日の海岸線が夜の何気ない光景へと

成り果ててしまっているのを見て、少し戸惑ってしまっていた。

私はあの景色を見て、すべてを知った気になってしまっていた、

そんなことに気づかされてしまったから。

この夕日にすべての真理のようなものがあるなんて感じてしまっていたんだ。

そう、あの景色にあったのはただの感動にすぎなかったのに。


「やり直したい......」

「どうして?」

「このままじゃあ、私、たぶんどうしようも無くなってしまうから。」

「無駄じゃない?そんなの、ただ自分の首を絞めてしまうだけじゃない?」

「それでも......」

読んでくださってありがとうございます。

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