聖戦~0~
ため息交じりの今が、とてもかけがえのない瞬間なんだって
そう自覚するたびに、私は私が嫌になる。
そう、繰り返されるモチーフ
決まりきった結末、元型が現れるよ。
今、ここに。
俺はその男がため息をついたのを聞いたなら、その刹那
その男は頭上にその携えていたカードを掲げた。
その瞬間、俺は信じられないものを見てしまう。
「雪?」それは雲一つない快晴の青空から舞い落ちる雪だった。
俺はこの雪に触れる。
この雪はただ冷たかった。でも、それだけだった。
なのに、それだけなのに、俺はなぜか寂しいような
気持ちになっていた。それは自然に、無意識に感じてしまっていた。
私、馬鹿だからわからない。
何なの?この気持ち?どうして私はこんな気持ちになっているの?
どうして私は私を諦めようなんて思っているの?
そんな気でいるの?もう止めようって、こんな気持ちに陥るなんて
オカシイヨ。いや、可笑しくないわ。
この世界を見れば、私のこんな気持ちなんて、
誰も見ることのできないこんな感覚なんて
全く価値がなかったよう>>嗚呼、元気になってきた。
こんな風に元気になったのは、あの公園を通りかかった時
人気のない公園で、ブランコが勢いよく往復していたのを
見ていた時以来だった。あの時、公園には誰もいなかった。
でも、そんな世界の中でも、あのブランコは生きていたから。
>>私はずっと死んでいた。でも、私はあのブランコだった。
この世界なら私は生きているなんて思いこむことができる。
そう、それが私を裏切ることになっても、でも私はこの私
がいれば、それだけでいいよね。私は私。
そうだ、私が私だって思っている、この瞬間だけが私なんだ。
今までの私は私なんかじゃなかった。写真に撮った私も
記憶の中の私も、今の私なら否定できる。簡単に否定できる。
むしろ、私はずっと、ず~~っと否定してしまいたかったんだ。
(何だろう、私、こんなことを前も言ったような気がする。)
「ふざけるなッ!」俺は剣を強く握りしめて、前に向き直る。
そこで俺を見下すような視線を称えている男を睨みつけていく。
「雪なんて、雪なんて嫌いだッ、大っ嫌いだッ!
お前は知っていたんだ。俺が雪が嫌いだってことを
知っていて、それでこんなくだらない、ことをッ!」
彼は無言でこちらを見ている。
「嗚呼、わかったよ。お前は卑怯者なんだってことがッ!
俺はお前を知らない。俺はお前をゼクスだってまんまと騙されたからなァ!
でも、お前は俺を知っている。俺のことを知っているなら、俺の力だって
知っているんだろう?それで俺に近づいてくるなんてさッ!
俺に勝てる自信が、勝算があるってことだよなァ!
ふざけているよッ!
お前は雪なんて降らせてないで、俺の自信がゆるぎないうちに
先手を取れば良かったというのにッ!
俺をおちょくってんの?この雪で俺の神経を逆なでんなよッ!」
彼の視線はまるで俺がこの雪を見ているときの
そんな瞳をしていた。うざい。
なんてうざいんだッ!
俺の手に込める力が大きくなっていく。
諦めなんて気持ちはもう湧き上がっては来ない。
むしろその対極、憎しみがとめどなく溢れてくる。
どんな犠牲を払っても諦めきれないような、感覚。
俺はこの感覚をどこかで味わったような気がする。
一体どこで、味わったんだろう。
わからない。アレ、そう言えば、この瞬間だって
何処かで味わったような、気がする。
一体どこで、味わったんだろう。
「宇津野?」どこかで誰かの声がする。
誰だろう。それは女の声だった。
「黙れ。」俺はその知らない声を黙らせていた。
そしてそんな大きな俺の声で、この場所が静寂に
包まれていたことに俺は気づいた。
「どうして俺は俺を諦めようなんて思っているんだ?
もう決めたじゃないかッ!俺はもう諦めないってッ!
それが俺の後悔という名の罪への罰だって、戒めていたはずだッ!
嗚呼、そうか、なんて悪趣味なんだ。お前の力はッ!」
俺は気づく。俺の断罪の剣が俺に突き刺さっていたことに......
でもだから?それで俺が死んでしまうなんて、お前は本気で思っていたのか?
もし思っていたなら、とんだ思い違いだったなッ!
「今しかないんだよッ!俺には、今しかッ!
何が過去だよ。何が記憶だよ。それになんの価値があった?
所詮、それは道具でしかなかった。
そこに付随する感情なんて邪魔でしかなかったんだ。
なのに今、俺はそんな感情を思い出してしまっていた。
そしてそんな思い出に浸ってしまおうとしていたんだ。
馬鹿だな、そんなの今を諦めていることと何も変わらないじゃないか。
俺は決めたんだ。俺はもう諦めないと......
俺の後悔は、いつしか罪になって、その罪は俺の生を罰にする。
自分勝手な罰ッ!それに縋ることに何の意味も生まれやしないのにッ!
そんなのただの慰めだったのにッ!
嗚呼、いつからだ、俺はいつからこんな思考に陥っていたんだッ!
思い出せ、そして思考しろ。こんな状態にもう陥ることはやめろッ!
訣別するんだッ!まさにそんな俺を認め、殺していけッ!
そして力を籠めろ、その剣を揮う勇気を示せッ!」
俺はこの時、この瞬間のすべてを感じていた。
そうだ、俺はこの世界で生きていくしかなかったんだ。
そして生きていくって決めたはずだった。
なのに俺は気づいたときにはこの世界を生きてなんていなかった。
だからこんなにこの世界が不明瞭でくだらなく見えていたんだ。
そう、解放なんていらなかったんだ。
俺はこの世界が、この今さえ有ってくれたなら、
ここはもうすでに天国だったんだ。
嗚呼、俺はもう諦めるなんて思うことは出来ないよ。
この世界が形を取り戻していく。
俺がこの世界の中心のように思えてしまう。
もし、この世界を渦に例えるのなら、今の俺は軸だ。
なんて、自分勝手な感覚。
そして俺をここまで押し上げていたのは俺の自己犠牲への否定。
嗚呼、感情も何もかも言い訳でしかなかった。
神なんて死んじゃあいなかった。
そう、神はここにいたんだから。
彼を軸に世界がうねり、渦を成す。
彼はもうすべてを知っていた。
この力の名前”神力”はただのコンプレックスに過ぎなかったってことに、
「今は、純粋無垢なまま、神の記憶をそのままに、
そこに生じる解釈も、そこに生まれる感情も、
その一切を排したままで、この世界に呼び起こすことができるッ!」
蘇る奇蹟、それは誰しものこころに宿っていた元型
まさに魂の輝きだった。
俺は自身の力”トライ”を発動する。
その刹那、俺はその世界でもう一つの軸を目の当たりにしたッ!
「そうか、お前もかァッ”!」
その男を軸に世界がうねり、渦を成す。
その渦は俺と反対の回転を為し、
その力場は向かい合う俺たちの中央でぶつかり反発しあっていた。
その男は俺をあの視線で見下したままで
ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「嗚呼、始まりの根源と終わりの終焉は同じだったな。
久しぶりだな、1ッ!ようやく約束の刻
まさにヒエロファニーの刻が
始まったなァ”!」
その瞬間、俺が思いだしたのは
知らないはずの記憶、嗚呼、神の記憶。
「思い出しちまった。」
0は自身の力”セクト”を発動した。
次回
第40章 神々の黄昏
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