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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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212/239

第三十三章 黄昏の刻 #1

僕はこころの底から、死にたくなっていた。こんなことってないだろうよッ!

俺はそんなお前を見て許せなくなっていた。お前がそんなことを言うならッ!


私は扉の前で彼の姿を見てすべてを理解する。

嗚呼、所詮夢でしかなかったんだッ!

私は思い出す。今までが死んで逝く、そんな光景をッ!

そしてそれが神の契約、この力の本来の意味だったことをッ!

私は思い出す。神の記憶を持つメッセンジャーの正体を。それは私。

私は思い出す。私の神は、被害者で私の本当の同胞は存在しえないことを。

私は思い出す。血塗られたこの罪の証であるこの身体をッ!

私は、私たちは解放されたかったんだ。この身体からッ!

この神々の証からァ!

「ゼクス?この世界はねッ!呪われてしまっているのよッ!」

私は告げてゆく。この世界はもう後戻りができないことをッ!


彼女を中心に”空間がうねり渦を成す”。

僕はその光景にどうすることもできない。

そして僕はこの扉を開けた瞬間、すべてを思い出していた。

僕とアトロ、そして瞳の前で顕現している

二番目の天使”ドゥー”、彼女との計画を。


私はこの店、「聖杯」の店主”尺匙豹”に拳銃を突きつけた。

「全部、お前の所為だったんだッ!私の同胞が死んだこともッ!」

彼はずっと黙ってうつむいている。埒が明かない。

「何とか言ったらどうですかァ!尺匙さんよッ!」

彼の存在は私にとって生きていることの証だったのにッ!

どうして殺されなければならなかったんだッ!

彼は私の唯一無二の親友だったのにッ!

なんて苦しいのッ!お前みたいな知らない奴に殺されてしまうなら、

私が殺せてしまえたらァ!

私は拳銃を引き抜いて、その店主の額に鉛玉をお見舞いする。

しかし、その銃弾は阻まれてしまった。

私と彼に割り込んだ誰かの影によってッ!


私は彼が横たわり、その場で血を流し続けているそんな姿を

呆然と眺めてしまっていた。「今回は危なかったな......ゼクス。」

彼は血だまりの中で私の名前を呼んでいた。

「もう少しで俺たちの計画が狂っちまうところだったな。」

私はこの光景を前に声を出すことができない。「どうして、私なんて......」

「わかっているだろ。十分な信心と贄は揃いつつある。」

「でも......」

「わかっているはずだ。お前を失ったなら俺達の計画はすべてお終いなんだって、

そうなことはもうッ!」

「でもッ!」私の表情が恐怖に歪んでいく。そんな私に彼は笑いかける。

「大丈夫さ。ゼクス、おまえなら果たせるはずだよ。雪辱を。」

彼は震える手で懐からサングラスを取り出した。

「これが俺の聖遺物、”完全な真球”。」

そのサングラスを私は握りしめた。

「俺はもう死んでしまう。そして生まれ変わってしまったなら......」

「わかっている、もう......わかっているからッ!」

このサングラスをかけてしまったならもう私は後戻りができないなんてッ!

嗚呼、今思い返せば選択の余地なんて初めから存在していなかったんだッ!

「そう、そうだよ。それでいい。ゼクス、お前は特別だったんだ。」

私はサングラスをかけたその刹那、彼は消える。

そして彼の遺した血だまりの上に一冊の本が置かれていた。

その表紙には私たちの計画の名前が刻まれていた。

彼はなってしまったんだ。聖遺物に、記憶を閉じ込めて

もう生まれ変わってしまうことのないようにッ!


「私が特別?違う。私は特別なんかじゃないッ!」

でも彼の死は私をどこまでも特別にしていった。

私の意思が、ここに至るまでの今までが、

彼の死なんて絶望の奇蹟でもって、

もう再現しえない赤黒い色彩でもって塗りつぶされてしまった。

そのために私は私が嫌になっていく。

この世界の何よりも、私は私が嫌いになってしまうッ!

そうだ、私の瞳の前で死んでいるその小説の主人公は私。

そう、どうしようもなく感情移入ができて、

だからこそ憎くて憎くてしょうがない、

そんな私だった。

俺はそんな私に殺意を籠めて、

その私の今まですべてを否定するように、嘲り笑っていたッ!

「お前のそういうところ、本当に尊敬するよッ!”ゼクス”ッ!俺がお前の立場なら、アトロが私であったなら、そんな風に生きてなんていないでさッ!

同胞のために、仲間のために、責任を、雪辱を果たせただろうなァ!」


神、それを見てしまったならそれは死と同義。

唯一無二の輝き、そんな表情で、そんな景色で、そして特異点だった。

僕たちは気づかされてしまう。僕たちのアフォーダンス、存在への理由、

生きている、そんな自然(盲目)な状態にあった残酷な理不尽、まさに罪。

僕たちは罪を抱えて生きていたんだ。

そう、僕たちには生きていることに理由があった、有ってしまったんだッ!

畜生、畜生ッ!自由なんて無いじゃないかッ!

僕たちはこの役目に従うように無意識で生かされ続けていたなんてことはッ!

「それは違うよ。あなたは、あなただけはこのことに気づいていたんだ。

そう、あなたの役目はこの世界の救済、まさに解放だったんだから。」


僕は小説を読んでいた。その小説の中で、その名探偵は自由だった。

いつも客観的な視点で物事を捉えることができる、そんな彼に僕は憧れていた。

だから、僕はこの結末になんて納得ができなかった。

どうして死んでしまったんだろう。彼はその事件の犯人に罪を突きつけて

そして、その人で無しはそのまま警察に連行されていく。

そしてこの物語は続いていく。そのはずだったのに......彼は死んでしまった。

温泉宿の中で、彼は死んでしまったんだ......


暗黒の刻が始まって、世界はかつてのように八つ裂きにされた。

しかし、そんな瞬間に現れた三人組。

私は彼らの存在がとてもうらやましいと感じていた。

私は見たんだ。彼らの身に宿していた力をッ!

どこまでも生ける、そんな自由(チート)をッ!

そう、私は彼らの姿を見て神が死んだって確信することができたんだ。

だから、もうこんな渦の中から出ていこうって思うことができたんだ。

なのにッ!彼らの力が象徴していたのは、その身の不幸なんだって、

彼らの力は不自由の象徴、こんな世界における

自分勝手の象徴なんだってことに気づかされてしまった時

未だに神は生きていたんだなんて気づかされて

私は心の底からがっかりしたんだッ!


同胞は死んだッ!そうだ、これが僕が逃げてきた末路なんだッ!

もう僕に遺された最期の希望は、僕がかつて思い描いていた

『最初の絶望』と同じだったなんてことに気づかされて、

そんな事実を突きつけられてッ!

嗚呼、扉の先で、ついに見つけた彼女は僕を裏切った。

「あなたはまだ生きることを続けているの?」

彼女はそう言って笑う。

「あなたは、あなたには理由がないの。

どこまでも自由である代わりに、

あなたには決められた宿命が無いのよ。

だから、死んだって生きたってどっちでも構わないのよ。」

僕は死ぬわけにはいかないんだッ!そんなわけがない、そう僕にはあったんだ。

アトロから託された使命がッ!そう、僕がこの世界を救う、

神々の屍を見つけ出す、そんな使命を持っているッ!

なのに、どうしてお前はそんなことを僕に言うんだよッ!

そう僕は彼女を睨む。しかし、彼女はまるで笑いを堪えるように何も話さない。

「どうしてッ!そんな風に黙っていられるんだッ!」僕は叫んでいたッ!


始まったなッ!彼女の部屋にかけられていた時計が進みだす。

秒針がカチカチ音を立てて、この部屋から見て取れる町並みはまるで水槽の中の様

「なんだよッ!そんな。」宇野はこの光景を見て青ざめた。

彼はずっと忘れていたんだ。自分の役割をッ!

彼はまるでこの光景に湧き上がる既視感とともに、自分に対する殺意がッ!

「お前もやっと思い出せたようだなッ!宇野。私の計画通りになっただろう?」

宇野の前に立っていたのは天翔?それとも希代?それとも......

「黙れッ!またあの災禍を繰り返すつもりかッ!」

「災禍?どうしてそんな風な自分勝手な感情を想うことができるんだろなァ!全く、しょうがない奴だよ。お前はッ、こんな退屈な終わりと始まりの渦、何も失うことのない、何も得られないそんな無を前にして、

そんな風に他責することができるんだな。

いい加減、死ねよ。」

「黙れッ!」

「生まれ変わったって、罪は、まさにお前の役割は消えないさ。そう、むしろ贖えるはずのない罪を何度も何度も、重ね続けて、ようやく手に入れたその自分勝手なその力はいかがかな?」

「もう、何も言わないでくれッ!」

「残念だったなッ!これが俺の役割なんだよッ!お前を絶望のどん底に叩き堕とす、これが運命、まさに俺の宿命なんだよ。ああ、そうだ、嫌だったならその力を使えばいいじゃないか。すべてが自分の所為であると知って、何もしない。そんな神の如き力、どこまでも自分勝手で、それでその力の責はすべて自分へと還る、その力を使って、この俺を殺してしまえばいいだろうよッ!」

「こんなことになってしまうならッ!」

「相談してくれって?」

「お前なんてあの時、殺してしまえばよかったんだッ!」


僕は絶望する。僕の中でかつての言葉が反響しては消えていく。

このどこにもたどり着けやしない、

この今の中で僕はどこかへと行こうとしていた。できやしないのにッ!

「お前は存在自体が虚構なんだよッ!この末路は自業自得(宿命)だったんだよッ!

お前はなんなんだッ!お前なんて一体何のためにッ!」

もうやめてくれ。もう訊かないで、そんなことに意味は無いってことはもうわかっているんだ。

ただ、僕は気づいているんだ。

だけど、それでも僕は生きようとしている。この今を生きようとしているんだッ!だから......「お前は一体何のために生きていたんだろうなッ!」

嫌だ、その問いかけに答えられない”私”が嫌なんだッ!

「僕の心に湧き上がる、絶望、狼狽、後悔、達観、そして希死念慮。」嗚呼、そんな言葉に意味は無い。全く、意味がない。どうして私は私の心を他人であるように描写してしまうんだろう。

その僕は白装束の服を着て、そして私へとナイフを突きつける。

何度も何度も執拗に、私を抉っていくようにッ!


僕はずっとこの痛みを抱えて生きてきたけれど、もうどうしようもないのか......

「どうやら、チェックメイトのようだなァ!」お前は誰なんだッ!

「俺はお前が、お前の心が死んでくれるこの時を、ずっと、ず~~~っと待ち望んでいたんだッ!」僕の前に現れる死体、そしてその死体を見た僕は、頭が痛くなっていく。それはまるで()()()()()()()()()、そんな激痛だったッ!

「お前はずっと逃げていた。俺から、彼女からッ!俺はお前のために死んだのに、お前はそんな俺をずっと裏切って今までのうのうと生き続けていた、お前はッ!そんな裏切り者なんだよッ!」空間が唸り、渦を成し、僕はまるでその渦に取り込まれて消えていってしまう。そんな感覚を感じてしまっていた。

周囲がくすんだ青空へと成り果てた。

「俺は失望したよ。お前は俺のふりをして、彼女のふりをして、そんな一人芝居をし続けて、

嗚呼ッ、楽しかったかな?何も見ていない、独り言をつぶやき続けて、一体何が楽しかったのかなァ?なあ、どうしてお前はのうのうと俺の前に立っていることができるんだろうなッ!」

「私、私は......アトロ、あなたに謝りたかったんだ......」

「あ~あ。もう、本当にお前はどうしようもないねッ!

そんな今を蔑ろにする心にもない言葉を並べてしまうならッ!」


久留智海の手に握りしめられたナイフ。それはレプリカだった。そのナイフは酷使されたために、今にも崩れ去ってしまいそうになっていた。目の前に広がるは、凄惨なありさま、テーブルでめった刺しにされた僕、カウンターにうつぶせの死体、アトロの死体。そして僕の前に彼女の姿があった。「何をしているんだッ!」僕は彼女に問いかける。すると、彼女は当たり前のことのように告げる。「なにって?これが私たちの計画でしょう?」「計画......」「もう、本当にしょうがないのね。あなたはッ!流石、いつでもこのくだらない世界の傍観者へ立場を変えることのできるあなたには、このすべてがどうでもいいことのように思えてしょうがないんだッ!」「・・・」「もう何も言わないでよ。あなたの声ですら、私はもう嫌いなんだからさッ!そう、私はあなたの、あなたの声、

あなたの空っぽで意思のないこころの

その存在を感じてしまうのが本当に気持ち悪いんだよッ!」


僕は小説を読んでいた。

『「世界の闇を前にした僕たち三人は、迫りくる運命の鼓動を感じていた。「ねえ、作品名は何にする?」彼女はそう言って笑う。「そんなこと、どうでもいいだろう?」僕は彼女に軽口交じりで、彼女の方を見る。彼女は僕を見ながら明るい笑みを浮かべていた。そんな微笑みを目の当たりにして、僕の口元もつい緩んでしまった。そして、僕は宇野の方を見る。それはルーティンのように、約束されたことだった。「俺から、名前の提案をさせてもらうよ。『スパイラル・タイム』なんてどうかな?」僕たちはその問いかけに沈黙を返すッ!そうまさに、その名前の下で、僕たちの目指す希望の道が一つに重なった、そんな予感を感じ取っていたから......」なんて、僕はそんな予感を感じていたかつての今を思い返して、なんて時間は残酷なんだろうと思ってしまっていた。あの名前を付けたあの時、この世界は希望に満ち溢れていた。これからどんな困難があったって、どうにでもなってくれるって、そんな予感を感じていたんだッ!なのに、僕はその今が退屈で、くすんだモノトーンみたいだって感じてしまう。こんなはずじゃなかったのに、こんな今を希望だなんて思うはずがないのにッ!僕は思い続けていた、あの時に、僕と僕の同胞(証を共有している、互いに生きていることを認め合うことができるそんな仲間)と誓い合ったあの時にこの今が戻ってくれないか、なんて思ってしまっていた。そうそれは、今まですべてを否定して無へと還す、今へのどうしようもない、そんな拒絶、まさに僕にとってのタイム・スパイラルだった』


僕はもうだめだ。そう、思ってしまう。この小説を読んで僕は、

自分のことが嫌になってしまう、そんな変化を感じてしまっていた。

「僕はこの小説を読んで、気づいてしまったんだ。すべてが僕の所為だって、

今までのすべてが自業自得だったんだって。気づかされてしまったんだッ!」

かつての彼女の存在が絶望の象徴へと変わり果てる。あの計画は頓挫した。

「ねえ、ゼクス。助けてよ。あなたなら、助けられるはずでしょうッ!だって

あなたはこの世界の主人公なんだからッ!”僕”を助けて?、

こんなどうしようもない絶望から、”私”を救ってッ!

もう、僕は捉えることができないんだ。あなたしかッ!」

読んでくださってありがとうございます。

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