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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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209/242

聖戦~14~ 前編

「空間がうねり、渦を成す。」なんて、そんな描写はあまりにも主観に依存しすぎていて、まともじゃない。だってこの世界はずっと一つしかないんだからさ。この世界をどう捉えるのか、それは自由だ。そしてその世界で生きることも自由だ。なのに、その自分が生きているそんな世界が現実と違うなんてことに気づかされてしまう、まさにそんな瞬間、こんな描写に逃げてしまうなんて、そんなのってさ、まさに一種の敗北宣言なんじゃないかって...そう思わないか?俺は言い訳なんてしないよ。俺は俺の世界を信じているから。たとえ、この世界がお前の世界の夢だとしても、たぶん俺は後悔なんてしないよ。むしろ、この世界が、この証が、誰かの夢、誰かの絶望だってことに、俺は感動してしまうんじゃないかな?「どうして?あなたは自信があるの?」「それは、たとえ神がいなくても、俺は俺だって思うことができているからさ。だって、俺はもう気づくことができたから。まさに、俺の証にさッ!」


現実が今に引き戻されていく。互いにぶつかり合い、中和していく宇宙。無視していた何でもないことが鋭利な刃物のように互いを傷つけていく。それは感情、周囲を浸す殺意、そしてその殺意を否定する過去の暖かさ(サウダージ)だった。そしてその感情に纏わりついた色彩、感情が干渉したそれぞれのこころが気づかぬうちに、表現し与えていたそんな色彩が、この今のベールを剥いで、顕現せし、スパイラル。それは彼らの背後から彼らの行く末を照らしている、まさに光のように輝き、彼らの存在している今を刻む時計のように輪舞の軌跡を描き続ける。そしていつしか、その軌跡は互いが互いを確実に殺すことのできる、絶命の奇蹟に成り果てたッ!


俺は『エンピレオ・ロンド』を発動(カミングアウト)した。「さあ、楽しんで逝こうぜッ!どうしようもない俺たちなんて存在に、納得の終わりを告げてくれる、まさにそんな舞台の上の会話、殺し合いをッ!」

「フフフ、楽しむ?楽しむって?面白い、面白いよッ!セプターッ!、あなたはこころの底から、そう思うことができるなんてさッ!私は初めてだよ。あなたみたいな一周まわって純粋無垢な存在はァ!」私は『ノウト・スパイラル』を発動(カミングアウト)した。


彼はナイフを逆手に携えて、この今をまるで置き去りにするように、疾走する。私はそんな彼の様子を注意深く観察しながら、右手を頭上に掲げ、唄を唱えだした。その瞬間、私の周囲を取り囲むように、私の”スレイブ”が陣形を創り出した。彼ら”スレイブ”は、アトロ、ゼクスがセプターの相手をしているその隙に、私があらかじめ用意していたものだった。その総数は80名...本当はこの倍は用意したかったなんて、私は思っていた。しかし、しょうがない。私たちの計画のためにゼクスをまだ犠牲にするわけにはいかなかったから。そう、私は何としてもセプター、あなたを今ここで殺さなければならないッ!そう、私たちの平和の成就そのためにッ!


私を取り囲むスレイブは20名、役割は私の護衛と、彼の攻撃の感知。私の遥か後方にいるスレイブは20名、役割はこの場を俯瞰による観察、そして狙撃。陣形の外側、周囲にまばらに配置されているスレイブは20名、その役割はデコイと、陣形の補充、そして同胞のサポート。そして私と陣形の内縁の間に配置されている私のスパイラルによって象られた世界(ストーリー)の住人、彼ら自身の意思を遺している”同胞(スレイブ)”、総数19名。この世界の中でスレイブは全員が同じ(サイン)を共有している。そのために、その同胞以外のスレイブ60名が一人死んだそのたびに、その19名は彼ら自身のサイン能力の発動条件を満たす。その発動は彼ら個人個人の意思に委ねられてしまう。しかし、この能力下において、私は彼らの感情を自身の能力で煽ることができ、その発動タイミングにある程度の指向性を持たせることができる。また、私は遥か後方にいるスレイブの俯瞰視点で見た情報を、その19名に共有すること、その19名の意思を読み取ること、そして意思なきスレイブを直感的に動かすことができる。そして、最後の1名。彼女はもう私がどうしようも無くなった時の、最期の切り札だった。


彼は超高速で動き続ける。しかし、私の唄、私の声がこの場に響き渡るそれよりは遅かったみたいね。私は彼の動きを完全にとらえて、その方向にデコイを動かした。そして私の筋書き通り、彼はそのデコイを殺害する。そしてその瞬間、同胞はデコイの持つ証の死を自分の証に重ねて、そのこころに湧き上がる感情を、その死にゆくデコイのこころと重ねて、そこに湧き上がっている純粋無垢な死の恐怖に従うように、彼らは個々人のサイン能力を反射的に発動したッ!


表れる19名のドッペルゲンガー、そしてそのドッペルゲンガーは自分自身の生きている証を証明するように行動を開始した。 

続く


おまけ

19名のサイン能力名

「ノウト・パピルス」、「ノウト・ブナ」、「ノウト・アサ」、「ノウト・ケナフ」、「ノウト・ミツマタ」、「ノウト・パンフレット」、「ノウト・カガミヤツリ」、「ノウト・パガス」、「ノウト・カポック」、「ノウト・ロング」、「ノウト・ショーツ」、「ノウト・リトリバール」、「ノウト・エンドルフィン」、「ノウト・ワーク」、「ノウト・コンディション」、「ノウト・ナンバー」、「ノウト・SS」、「ノウト・イメージ」、「ノウト・アルゴォウ」

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

暗黒の刻

黎明の刻

白昼の刻

そして...

次回 第33章 黄昏の刻

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