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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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階段的ノスタルジックを噛みしめて 中編

行き場のない怒りを僕はその階段にぶつけていく。嗚呼、八つ当たりだ。僕はこのどうしようもない今を正当化するために、力任せにこの階段を踏みつけていく。何度も僕はこの階段を踏みつけていく。嗚呼、わかっていた。もう、そんなことに意味なんて無いなんてことは...


僕はやるせなさを感じてしまっていた。僕はこの心の痛みをずっと感じながら、生きていかなければならないんだって知っていたことなのに、僕はそんな現実に知らないふりをしていたんだ。嗚呼、僕は卑怯者だ。こんな自分を正当化するために、勢い任せにこの階段を踏みつけていった。何度も何度も踏みつけていった。なのに、どうして気が晴れないの?


ここに灯りはもう存在しなかった。この場にあった光は夜空に輝く星々だけだった。僕はその光をこの手に掴もうとして...嗚呼、僕はその星々が掴めるだなんて、そんな夢を見てしまっていたんだ。一体、どこまで僕は自分勝手なんだろうな。僕はいつも、いつまでも、いつまでたってもこんな僕を受け入れたくなんて無くて、だから僕は傷ついたってどうでもいいって思いながら、それでいて僕は誰よりも僕の心に、そんな動きに過敏に、過剰に、敏感で僕なんて初めっからどうしようも無かったんだ。僕はこの足で、この今を踏みつける。どうなったっていい、どうなったっていいんだ。そう思いながら、僕は踏みつけた。その時、僕の足元で、何か大きな音がした。それは、僕の足音だった。そう、僕はこの時、初めて僕の足音をちゃんと聞いていたのかもしれない。この気持ちの悪い音を、こんなどうしようもない音を...嗚呼、もう僕はこの音を一生忘れることなんてできやしないんだろうな...


闇に包まれたこの世界で僕は光を探していた。そう、もう存在しえないそんな光を...「何をやっているの?」誰かの声が聞こえてくる。僕はその声のする方に向かって歩いていく。「だから、何をやっているの?聞こえているんでしょう?」「聞こえてなんていないよ。」僕はその声の方へと歩いていく。「そんな行為に意味なんて無いのに...」でも立ち止まってなんていられないさ。だから嗚呼、僕は何度だって踏みつけるよ。たとえ、こんな行為に意味なんて無かったとしても...


僕は階段の前に立っていた。そしてこの石造りの階段を茫然と眺めていた。僕はもうここに来るまでの間の、神社の参道を埋め尽くす人々の活気なんて言う雑踏にもう疲れて果ててしまっていた。あの焼きそばを食べていた頃がもうずっと昔のことのように感じてしまう。嗚呼、もう一度あの焼きそばが食べたいな、なんて思いながら神社の参道を歩いていた僕の前にその階段は唐突にその姿を現した。一体どうして僕はこの階段を見たことがあるような気がしてしまうのだろう?既視感、その正体は記憶の感受性なんだって僕は思っていた。頭の中で符号化された記憶が、何かがきっかけで、その元ある形、確かな経験を呼び起こす、そんなプロセスが既視感の正体なんだって僕は思っていたんだ。だから僕はこの既視感の正体に気づけるはずなんだ、そうそのはずなのに、何故か僕はこの既視感の正体に気づくことができない。まるで何度も同じことをしているようで、そんなデジャブを味わっているようで、その実、そんな感覚には何の意味なんて存在していないみたいで、そうだ、これはまるで堂々巡りの渦の中に取り込まれてしまっているみたいだった。


僕は階段の前に立っていた。僕はその階段を見たその刹那、何か既視感を感じていた。何だろう?この感覚は...そんなことを僕は思っていると、その階段の先から声がした。「既視感、それは記憶のとっかかり、いわば感受性。」それはまるですべてを知っているような含みのある声だった。僕はその声の聞こえてきた階段の先へと歩いていった。

階段の先には駄菓子屋があった。風で揺れる風鈴、くたびれたガシャポン、タライに無造作に詰められた氷に反射する丸みを帯びた光、そしてそんな光に照らされた真っ白で小さな海の中で、寂しげに漂うラムネ瓶。僕はこの光景を前にして何か言いようのない寂しさに襲われた。

僕はまるで、知らず知らずのうちにタイムスリップしてしまったみたいだな、なんて思ってしまっていた。まだ、こんな昔ながらの駄菓子屋が存在しているなんて...「ごめんください。」なんて、僕はこの駄菓子屋の入り口、そのガラス扉をガラガラと開けていた。

その駄菓子屋の中で広がっていたのはノスタルジックな今だった。所せましと貼られているステッカーやら、昔ながらのポストカードほどの大きさの広告、淡い色のお菓子のパッケージ、カラスの鳴き声、夕焼け子焼け、遠くの山々に沈みゆく夕日、なんて寂しいんだろう?まるで、あの祭りの賑わいが嘘のように、遠い昔のことのように感じてしまう。まるでこの世界には僕だけみたいだって、そう思ってしまう。何か嫌な予感がして、僕は周囲を見渡した。誰もいない?「誰かいませんかッ!」誰もいない。この駄菓子屋の中で僕はたった独りだった。

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

洋楽が流れていた。

断末魔

誰もいない町

漆黒の渦

電車

次回 階段的ノスタルジックを噛みしめて 後編

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