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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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第三十三章 扉の前の僕

一体、どうして、なんで、彼女の声が扉の先から、聞こえてくるっていうんだッ!

扉から聞こえてくるのは、ダッダッダッ、なんていう扉を殴りつける音だった。僕はその音を前にして、思考を巡らすことが、考えるなんてことができなくなってしまっていた。だってその音の気持ち悪さに、僕の心はやられてしまったんだ。まるでその音は、その扉を殴りつけることで、僕を殴りつけているその姿を、見せつけてしまっているように、その扉を殴りつけている腕が向かっていたのは、紛れもない僕自身だって、そう示しているようだったから。それに、その殴りつける音はどんどん大きくなって、どんどん速くなっていったから。それはまるで僕の心臓の鼓動に重なるようで、僕の心臓の鼓動の音のようだって感じてしまっていた。そう、感じてしまっていたから、まるでその音は僕の心臓を何度も何度も、僕の心臓が音を出した瞬間、その音を潰してしまうように、しまいたいように殴りつけているんだって、僕はもうそう思えてしまってしょうがなかったんだッ!


「ねえ、どこに行くの?」そんな声が僕の頭の中の行き場のない思考を、この超常的な現実へと引き戻す。「・・・」僕は後づさりながら、この今を呑み込んでいった。「ゼクス?私はあなたを信じていたよ。あなたはここに閉じ込められている私を、ここから解放してくれるって、そう信じていたのよッ!私がゼクス、あなたと初めて出会った、その時からッ!なのに、どうして、あなたはこの私から逃げようとしたの?この私との約束はどうしたの?あなたはやっぱり私との出会いを、裏切りでもって返すんだ。酷い、そんなの酷い、酷すぎるよ...

ねえもし、私が、ゼクス、あなたなら私はあなたを裏切ったりなんてしないよ。そう、私は、ゼクス、あなたとこの場所で、この今が当たり前になってしまうまで、話し続けていたかったよ。もし私が、あなたの立場なら、私はあなたのために鍵を探すよ。そう、あなたをもっと、知りたいから。会話だけじゃわからない、あなたの瞳にうつるこころの色彩、感情の色を見ながら、見つめながら話していきたいからッ!そう、私はあなたのことが、ゼクス、他でもないあなたのことが知りたいのよッ!あなたのすべて、”もし私があなたなら”、なんて考えてしまう、そんなあなたのすべてを知ってしまいたいの。あなたの顔、あなたの記憶、あなたの瞳が見せる色、そしてあなたのこころを知って、嗚呼、そうよ、私はあなたになってしまいたいのッ!」


空間がうねり消えていく。時間が止まり、張りつめる心臓の鼓動。

私の価値はこの終わりに帰るこの最期でもって、幕開けの刻を告げるだろうッ!

彼女は「プロムナード・テロル」を発動した。


彼女のそんな言葉が消えたその刹那、扉を叩きつけるあの音がパタリと消えてしまった。あんなにも大きくて、あんなにも速くこの扉を叩きつけていたあの音が、その扉に残っていた震えごと消え去ってしまった。そう、まるで僕の前に佇んでいるその扉はまるで初めから何事も無かったというように、ダッダッダッなんて扉を叩きつけていた音も、ガチャガチャとその扉が叩きつけられた衝撃でその場で前後に揺れていた痕跡の一切も見られないで、その扉はただ静寂を称えていた。僕はおそるおそる、その扉にゆっくりと近づいて、そしてその扉のドアノブを捻った。そして、僕は気づいてしまう。この扉は鍵がかかっていたことに...


僕はその扉のドアノブを何度も捻っていた。そう、僕は信じたくなんて無かったから。そしてこの扉が開かないこの今を受け入れてしまったら、今までのすべてを現実だって受け入れなければならないと...嫌だッ!受け入れたくなんてない。そんなのを現実だって、呑み込みたくなんてないッ!あんなのはすべて夢なんだって言ってッ!この家も、この扉も、あの彼女の声だって、夢、幻覚、そして幻聴なんだって言ってッ!そんな言葉がこの静寂の中に響いて、僕は追いつめられていく。ますます、僕は僕が僕だって感じられなくなってくる。僕は玄関から、この家のリビングに戻って、その部屋の閉じられたカーテンを開く。しかし、そこには、窓なんて無かった。そこにあったのはただの壁だった。壁だったんだ。そして僕はその壁を見て、悟ってしまった。この状況を、まさに絶望をッ!そう、まさに僕はこの家の中に閉じ込められてしまっているんだッ!


カーテンに触れていた僕の手はだらんと垂れ下がって、僕は膝から崩れ落ちてしまった。(いつからだッ!一体僕はいつからこの家の中に閉じ込められてしまっていたんだよッ!)僕は近くの真っ黒のソファの上で、力なくもたれかかるように座り込んだ。

僕がそのソファに座り込んだその時、僕じゃない誰かの声がした。「おい、お前はこのままでいいのか?」(嗚呼。また、誰かの声がする。もう、止めてくれよッ!これ以上、僕の現実感を奪い去らないでくれッ!今度こそ、こんな声は、ただの幻聴であってほしいと願うよ...)しかし、その声は話し続ける。まるで、そんな僕の思考を否定するかのように......「あ~あ。残念だなぁ!俺は知っているのに、この家の扉を開ける”鍵”の在りかをッ!」僕はその声に耳を疑った。

読んでくださってありがとうございます。

鍵を見つけ出して、

鍵、それは開放の象徴

扉が開け放たれる今、

表れる彼女、イブ?

次回 (仮)第三十三章 扉を開けて...

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