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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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第三十三章 Who are you? 第四話         {何も知らない男{人殺し{あたし}}}

「アハハハハハハッ!なんてことなのッ!こんなに私の想像通りにうまくいってくれるなんてッ!嗚呼、私の瞳に狂いなんて無かったんだわッ!」橘「なんで?あの眠ってばかりのあいつが、一体どうして、こんな演技を?」波切「嗚呼、全くだ。まさに、まさしくこれは俺達が思い描いていた理想、名探偵”六波羅万華鏡”じゃないかッ!」


彼は緑色のサングラスをかけて、このソファの上で横たわっていた。そのソファに横たわる彼の姿はまさに脱力して、力が全く入っていない。そう、それもそのはず、彼の意識は今、この現実世界には存在していないから。彼の意識は、意識だって自分自身で感じることができる意識も、そしてそう感じることのできない無意識の感覚も、そのすべてを、その記憶世界の彼へと投影していたから。


~~~

意識、それは記憶が象ったあなたらしさ。記憶、それは今までにしたあなたの評価の蓄積。評価、それは経験、そして感情。感情、それはこころ。こころ、それは神秘と畏怖の象徴。神秘と畏怖、それは、かつての奇蹟、その残骸だった。

~~~


この記憶世界にアクセスするためには、その創り出した記録世界とこの現実世界を、その記録世界の登場人物と、私たちを結び付ける中継地点の設定が必要だった。その中継地点には、具体的な物、現実世界に存在し、記憶世界においても再現可能な物であるということ、そしてそれは、ありふれていない、それだけの価値を持っているということが求められた。例えば、特徴的なマークが付けられていたり、唯一無二の形状を有しているものであったり、そして一番楽なのは、その中継地点に名前を付けることによる唯一無二の価値を付与することが挙げられるだろう。そう、私たちは名前を付けることによる中継地点、その独立性を確保していた。例えば、ソファの上で横たわっている彼がかけているサングラス、それは名探偵”六波羅万華鏡”と彼とをつなげている中継地点、その名前は”ゼクス”。これは六波羅万華鏡の頭文字にちなんでつけられた名前だった。


~~~

「こんなの推理なんかじゃないッ!こんなの間違ってるッ!」「黙れッ!この人でなしがッ!」ついに始まったメメント・モリ。咎人を無辜の民によって囲み、彼らの視線、彼らの嘲りでもって犯人を突き刺し、浮世離れの咎人の心を、現実という名の絶望に叩き堕とす、そんな刻がやってきたッ!「流石ですッ!流石名探偵ッ!まさか、犯人がもう死んでいたなんて、さすがの推理ですッ!」

探偵の周囲には、この事件に関係していた、すべての人が集められていた。彼らはみんな、探偵が指し示した指の先を見て、そこでたったひとり、叫んで、そして膝から崩れ堕ちていく、その男に視線を向けていた。その視線はまるで動物園の檻に閉じ込められている獰猛な獣を見るときのような、好色めいた視線だった。


「やっぱさッ!あいつだって思っていたんだよ。あいつ、何考えているか、いつもわからないもんなぁ!」「うん。私もそう、思っていたの。実は......私、探偵が指し示す前にはもう、彼だってことになんとなく気づいていたの。彼から漂う雰囲気っていうの?なんか嫌な感じがするもの。それに、今、思い返せば、はじめっから、彼のやること、成すこと、全部気持ち悪かったじゃない?」「私もッ!そう、私もそう思っていたのッ!嗚呼、それにしても最悪な気分ね。こんな真相なんて知ってしまえば、こんな奴が犯人なんだって知っていれば、私はこんな奴に恐怖を覚えていた、だなんて、ほんとっ、恥ずかしィ~~よッ!」「確かに、なんか拍子抜けだよね。俺は犯人はたぶん、怪物なんだって思っていたもん。人を殺すことに、躊躇うこともなく、殺した後だって罪悪感を感じない、そんな怪物だってッ!なのに、こんな奴が犯人?こんな惨めったらしく、俺達の前でうずくまっているこんな奴が犯人なんてッ!嗚呼、なんて、はた迷惑な野郎なんだろうなァ!」警察が彼らを黙らせようとする。「皆さん、静粛に、静粛にッ!」しかし、そんなことに意味は無かった。


僕は彼らが、周りの知らない第三者も、彼と親しい間柄だった人物も、一緒になって同じような瞳をして、まるで僕を突き放すような、そんな視線をしているのを見て、まさに僕はピニャータだって、聴衆の面前に吊るされて、何度も何度も叩きつけられて、そして、今にも彼らの立っているところから遥か地の底へと堕とされようとしている、そんな人形に成り果ててしまう、違う、もう成り果ててしまっているんだッ!


「自分勝手でしょう?あなたがあなたの幸せのために、誰かを犠牲にして、犠牲を選ぶことができるなんて、本当......自分勝手、あなたは偉くなって神にでもなろうなんて思っていたの?それとも自己犠牲によってこの現実を壊そうとでも、考えたの?嗚呼、どちらも本質は同じだよ。自分勝手も、自己犠牲も、誰かを傷つけてしまう、そしてその誰かは決まってお前にとって一番大事な、大事だった人なんだよ。そう、お前はそのことに盲目になってしまっていて、気づくことができないんだ。そして......できなかったんだ。だから、おまえはこんな行為に走ってしまったんだろう?」「黙れッ!お前が僕の何を知っているんだッ!」そう、その男がそんな言葉を口走って、その途端、”私”は笑い出してしまっていた。「馬鹿馬鹿しい。どうやら、お前は未だに信じているみたいだな。お前の人生には価値があるって、もしお前の人生が小説になったなら、読者は感情移入をしてくれるって、そう思っているみたいだなッ!嗚呼、なんて馬鹿なのだろう?嗚呼、そうか、どこまでいってもお前はやっぱり馬鹿なやつだった、どうしようもない奴だったんだ。お前みたいな、人でなしに感情移入なんて出来るわけがないだろうが、その小説を読んでくれる読者がよッ!お前は慰めてほしいんだろう?すべてを知って、この今を、まるで自分事のように見てくれる、そんな誰かに慰めてほしいんだろうッ!本当、なんて荒唐無稽な夢をお前は見ているんだろう?そんな誰かなんて存在できるはずがないのにッ!もしそんな誰かが存在してくれたなら、お前はこんな行為になんて走らなかっただろうからなァ!」

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

緑色に惹かれるサングラス

いばら姫

”僕”は起き上がった。

あなたは誰?

次回 第三十三章 あなたは誰? 第五話

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