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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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あたしはアタシ(何も知らない男 PartⅡ) #2

僕は起き上がった。そして、僕の身体は無意識に動き出す。あらかじめ仕組まれた朝のルーティーンが、僕を洗面所へと急かしていった。僕はその洗面所の前に立ち、いつものようにみすぼらしい自身の顔を眺めていた。そう、まさにその時だった、僕の顔に何か既視感が湧き上がって...


「ついに見つけたッ!このサングラスをッ!」遥か遠くから、それでいて限りなく近いような、意識と無意識の狭間からそんな声が聞こえてきて、その瞬間、走馬灯が始まった。思い出される今までの思い出、いや記憶?違う、僕はその記憶をなぜか俯瞰するように眺めていた。そう、僕は見ていたその僕の記憶の中で、まるで神の視点のように、僕の姿を見てしまっていたんだ。そして僕は、そんな新鮮な視線で見てしまったから、このうつる自分自身の姿が、まるで他人のように思えてしまっていた。感情移入なんて出来ないで、確かにあった今までが、今という名の未来になって、そしてその新鮮さが、存在しないはずの、これから、の存在を示唆してしまっていたッ!拳銃の音、撃ち抜かれて倒れる僕、そして僕は誰かに揺さぶられて、僕は僕の意識を取り戻す。本当に?僕はもう僕の主観に感情移入ができるの?できない、嗚呼、できないと感じてしまう。この走馬灯?で一度、神の視点で、すべてを観てしまったなら、この僕のアカシックレコードを見てしまったなら、この記憶はなんて馬鹿馬鹿しいのだろう、僕が僕である証だって言えるわけがない、茶番にありふれた今までに、価値を見出せるはずがないんだッ!


僕はその鏡にいる僕に問いかけた。「お前は誰だッ!」すると、その鏡の中の誰かは笑う。「あたしはアタシ。」


~~~

「お前は、もうすべてを観てしまったんだろう?お前の今までを、神様のつもりで見てしまったんだろう?フフフ、楽しかったかな、なんて言葉はもういらないみたいねッ!」「すべて、すべてがお前のせいで、僕は、もう僕はまともに死ぬことすらできなくなってしまったんだッ!」「いいじゃない。不老不死なんて、誰もが一度は見た夢でしょう?」「ふざけるなッ!こんなの僕の夢じゃない。そう、これはほかでもないお前自身の夢なんだよッ!」「そうよ。これは私の夢、私の祈り。でも、あなただって私と同じ業を背負っているのよ?そして、私はあなたが抱えてしまっているその業も一緒に解放してあげるって、そう思っているよ。あなたに拒絶されてしまった今でもね?」「お前はどこまで行っても自分勝手なんだなッ!嗚呼、どうしてお前はそんな風に振舞うことができる?そんな振舞いの行きつく先は闇だっていうのにッ!」「それはこっちのセリフだよ。あなたはすべてを知ったんでしょう。それであなたはこの現実が茶番だってことを知った。そう知ったはずなのに、あなたはまだこの今を現実だって、そのつもりで生きようだなんて、それこそ自分勝手じゃないの?あなたの振舞いは、そんな生き方はただの驕りなんでしょう。そう、あなたはそのこころの中でほくそ笑んでいるのよ。その時点で、あなたはもうこの今を現実を生きてなんていないのよ。むしろ、あなたは私なんかよりもずっと、ず~~っと卑怯者なんだよ。あなたは現実なんていう夢を生きているんだよ。」「夢?違う。これは紛れもない現実......」「夢、それは既視感のツギハギ、夢には自分の知らない単語、事柄なんて現れようがないでしょう?大体、自分の記憶に関連づけられたような事柄の連続的な流れなんだって、現実と夢の大きな違いは、新しい知識を経験を得ることができるのかどうかなんだって、私は思うよ。だけど、もう私たちは知ってしまった。私たちの宇宙(存在するものすべての総称)すべてを知ってしまった。そう、そのすべてを知ってしまった私たちにとって、もう新しい知識を、経験を積むことができない私たちにとってこの現実と夢、それらに一体何が違うっていうの?いえるっていうのッ!ねえ、あなたは言えるんでしょう?答えてよ。そんな馬鹿な生き方で、幸せになれるってまだ思っているんだったらッ、その理由を、見せて、教えて、私に証明してよッ!(嗚呼、そんなことなんてできるわけがないというのにッ!)」


~~~

僕は走っていた。走って、走って、そしてこの森を取り囲んでいる有刺鉄線の張り巡らされた立ち入り禁止のフェンスを飛び越えた。そして僕はこの森に、かつての面影、僕の記憶を重ねながら、その記憶をまさに辿っていくように走り、そして終に見つけた。嗚呼、やっぱりあったんだッ!参峰町はあったんだッ!アハハハっ...僕はこの今に対して、乾いた笑いを零してしまっていた。否定し続けた今までを取り戻すことができたことに対しての小さな安堵と、僕が見慣れた町、その変わり果てた姿に対しての悲しさ、そして失われてしまったかつての町並みに対しての寂しさが、ないまぜになってしまったから、僕はただ笑うことしかできなかった。鬱蒼とした森が、この町並みを包み込んで、まるで隠してしまうように、広がってしまっていた。そしてツタ状の茨が、そこら中に張り巡らされていた。その茨のとげのために僕の靴は気づかぬうちにボロボロに成り果ててしまっていた。


僕がこの町を見回していると、どこからか音が聞こえてきた。それはクラシックのような音だった。僕はその音が聞こえてきた方を見た。そしてその向いた視線の先には、家が一軒ポツンと、僕の視線の中央に建っていた。僕がその家を見た瞬間、僕はその家は何かが違うと、感じてしまった。この町を取り囲んでしまっている森のありふれた感じ、鬱陶しいような感じをその家からは感じることができないで、それはまるでその家だけこの場所、この森から隔絶されてしまっているみたいな感覚だった。そしてその家から、明らかに人為的な音が流れ続けてきていた。僕はその音に惹かれるように、この町に何があったのか、その手掛かりをつかむために、その家に近づいていった。


その家はこの状態になってから、まるで長い間放置されてしまっているような状態だった。たぶん、間近で見ればそんな感想を誰だって感じてしまう、そんなありさまだった。苔むした玄関前のフローリングに、その家に張り巡らされているたくさんの茨。なんて痛々しいのだろう。僕はその家を覆っている茨が突き立てるたくさんのとげを見てそんな風に感じていた。また、この家を覆いつくしていたツタ状の茨は、他の建物の壁面や、地面を這っている茨と比べて、より一層多いと思っていた。


僕がこの家の扉を開けると、僕は戸惑ってしまった。そこには、僕の予想だにしていない光景が広がってしまっていたから。そこにあった光景は、簡易的な台所、簡易的なテレビが置かれていて、黒色のカーテンと、真っ白な壁、床、天井...既視感。僕がその既視感の正体に気づくのに時間はいらなかった。僕は見てしまう。僕が横たわっていた真っ黒のソファを...ここは、あの五月雨丹の部屋と同じ?


このソファの傾き、このカーテンの質感、あの生活感のないようで、清潔な感じは、紛れもなく、あの部屋そのものだった。どうしてあの部屋が、今、僕の瞳の前で広がってしまっているのだろう?僕はしばらくこの部屋を茫然と眺めて、そして考えていた。しかし、納得のいく考えは思いつかなかった。そもそも、この家の外装を見ればこの家は長い間放置されている、そのはずなのに、どうしてこの室内は綺麗なままなのだろう?そう疑問に思った僕がそのソファの表面を指で擦った後、その指先を見てみれば、やっぱりその指には塵一つ見つけることができなかった。それはまるで、もともとこの場所に埃なんて存在しなかったと、そんな超常的な状態がこの家の中で広がっているというようで、そう僕は考えてしまったから、もう僕はこの場所に対しての理解を手放してしまっていた。


僕は辺りを見渡して、そして気づく。彼女の家と、この家には違うところがあることを...彼女の家はアパートの一室だった。しかし、この家は、二階建ての一軒家だった。そう、この家には二階があった。そしてその二階からだった、僕がこの家の外で聞いたあの音が流れてきていたのは......


僕は階段を登った先には、一つの扉があった。その扉は木造の扉で、その扉の先から、あの音が聞こえてきていた。ここまで近づいた僕は、その音がこの扉の先にいる誰かの鼻歌だってことに気づいた。本当に、誰かがこの家に住んでいるのだろうか?僕はそう思いながら、あの埃の存在しない、この異常な屋内を慮りながら、もう何が起こっても不思議なんて思えないな......なんてため息をついてしまっていた。僕は扉を三度ノックした。しかし、中からは同様の音が、相も変わらず流れているだけだった。僕は「すいません。」なんて呼びかけてみた。しかし、やっぱり反応は一切感じられなかった。僕はその扉を開けようと、その取っ手を掴んでいた。しかし、その扉は開かなかった。どうやら鍵がかかってしまっているみたいだった。僕はその取ってを掴んでいた手を放した。そしてこの場を後にしようとしたまさにその時だった。階段へと戻り始めた僕の背後で何かが崩れ落ちるような音がして、僕は振り返る。そこには、変わり果てた扉の姿が......その扉の表面には、僕がその扉を開けようとしたその時には存在しなかった、レリーフのようなものがあしらわれており、そのレリーフの中央には、瞳覚まし時計(いばら姫)と書かれていた。


~~~

(その理由を、証明して見せろよだって?嗚呼、できるよ。やってやるよ。)僕は僕の手にナイフを握りしめて、そのナイフ自分自身に突き立てた。「何をやっているの?そんな無駄なことを...」「無駄?無駄だって?あなたはこの行為を無駄だって、そう断じることができるんだ。なるほど、どうやらお前は、まだ幸せになれると、まだ幸せに生きていくことができる、なんて勘違いをしてしまっているみたいだなァ!そんなわけがない、そんな都合の良すぎる話なんてないだろうよッ!現実のない、夢の世界で、失うことの悲しみも、だからこそ生まれる価値もない世界で、そんな世界だって知ってしまった僕たちがどうして幸せになることができるっていうんだッ!嗚呼、言えない、言えないんだッ!そう、お前は、自分勝手に生きて、その不幸せを誤魔化しているだけなんだッ!」「待って、まさか......」「確かに、お前の言うように、俺は俺の幸せを、俺の生き方で証明することはできない。でも、たとえそんなことができたとしても、お前になんて見せてやるかよ、バァ~カッ!そう、俺はお前を許せない。だから、俺は俺の不幸せを証明することにしたんだッ!ほかでもない、俺の自己犠牲でもってッ!そして、俺の不幸せでもってお前の幸せに致命的な傷を、決して拭えることのない傷痕を、贖うことのできない罪を刻み付けてくれようかッ!」

読んでくださって、本当にありがとうございます。

次回予告 (仮称)

100年の刻み

パンドラの箱

木漏れ日

尺匙豹

次回 あたしはアタシ #3

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