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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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無に今までを閉じ込めたとしても、          あなたはただの”人殺し” 第15+2話

生きてしまっている?なんて言葉をどうして発することができるのだろう?お前は俺の何を知っているんだろうか。嗚呼、そうか、お前は知っているつもりなんだ。俺を殺して、俺を殺したから、お前は俺のすべてを知った気になっているんだ。なるほど、だったら、今頃、お前のこころはこの今を呑み込むことができないんだろうな。どうしようもないこの今を、呑み込むことなんて出来ないまま混乱して、そしてその怒りを、そんなやるせなさを感じてしまっているのだろう。本当に短絡的でどうしようもないね。嗚呼、そうだった。

お前は殺人なんて手段に走った......”人でなし”だったな。


その男は、その僕の背後にいる男は、僕の心を見透かすように、話し出した。「アハハハッ!なんて顔を、表情をしているんだよッ!どうやら、俺はお前のあまりにもわかりやすい、その表情を見るだけで、お前が何を考えているか、手に取るようにわかってしまうみたいだッ!」そう煽るような俺の言葉を聞いて、彼は問いかけた。「一体どうしてッ!お前が生きているんだ?お前は......確かにお前は殺したはずだった。なのに......」「その答えは簡単だ。お前は人殺し失格だったってことだよ。その証拠に俺は今、生きてしまっているからさ!

(俺はそう言い放って後、少し考えていた。一体どうやって、彼は気づくことができたのだろうか?この自己完結している、俺のための宇宙、その存在を?)」


僕の後頭部に突き付けられる拳銃。途端に湧き上がる感覚、それは既視感。そして僕は背後を振り返って、そしてそこにいる男を見た。そこには引き金を引き続ける、一人の男の姿があった。「どうして......この引き金を引くことが、できないんだッ?」どうしてだろう。僕は知っている。この状況を......僕は自然と声に出す。あの機械音声を、この銃から発せられるあの言葉を、まるで重ねるように......「レーベルパターン0......」ハッとしてしまう僕。嗚呼、どうしてか、僕はこの後何が起こるのか、すべてわかる、わかってしまう。


パラダイムシフトが起きて、俺は俺の死生観をアップデートすることができていたはずだった。この力で俺は、俺自身の存在証明を為すことができていた。そのはずだったのに、この”今”は、この”今まで”は、このまるで渦の様な今はなんだっていうのだろう?どうして、この男の記憶、今までの中に、今の俺の姿があるのだろう?そしてどうしてその俺は死んでしまっているのだろうか。嗚呼、一体俺は何を見てしまっているのだろう。この力は、俺が俺自身を肯定するための、俺が俺であるための、そんな力だったはずなのに、どうしてこの今は、この俺の死にざまを、何度も何度も、執拗に見せつけられているこの今はなんなんだよッ!まるで俺の生きているこの今を否定するような、まるで俺が、この力で俺を殺してしまうようなそんな感覚、そう、それはまるで自殺......あぁあぁぁぁッ!


「どこに行くっていうのッ!アハハハハハハッ!」


俺はこの力を解除することはもうできなかった。もし、この力を今、解除してしまったなら、その瞬間、俺は死んでしまうから。しかし、このまま俺が、このどうしようもないその男の今までを、この足跡を、追い続けてしまうなら、俺はもうどうしようもなくなってしまう。そう、俺は迷い込んでしまったんだ。この行き止まりへ。まさにこの堂々巡りの渦の中に取り込まれている、取り込まれてしまっているみたいだった。そして、この空間に、この俺しか存在できないはずの、あのかつての町並みの中に、俺のかつての足跡を追う、誰かの声が背後から聞こえてきてしまっていた。俺は背後を振り返ることができなかった。もし、振り返ってしまったならば、俺はもう後戻りができない、まるで俺が俺でなくなってしまうようなそんな予感を感じていた。だから、俺はこの俺の前の足跡を、ただ追い続けることしかできなかった。


「俺は足跡を追って、そこに現れた記憶を見て、そして彼が殺していたのは、俺だけだったことに気づいてしまった。どうして?二重人格?いや、違う。まさか、彼は犯人なんかじゃない?あの食堂の惨劇は、彼でないなら、でもあの場所で、俺は確かに、犯人の顔を見たんだッ”。」「本当に?あなたは本当に、見たの?あの顔、あの表情、まさに犯人の顔を?」その背後からの声がそんな問いかけを零したその瞬間、俺が確かに見た、あの顔の輪郭は、その顔にあった鼻孔は、唇は、そしてその顔全体は消えて無くなっていってしまった。「あなたは何を見たの?あの何もない顔に何を見ていたっていうの?」その言葉が、俺の背後で発せられたその言葉が、俺の耳の中に入ったその瞬間、その無くなった顔が、その純然たる白色の、特徴も何も捉えることのできないような無が、顔全体、その男全体、そして食堂全体、そして俺の頭の中いっぱいに広がっていった。その途端、食堂が消えて、温泉宿が消えて、あの鬱蒼とした森が消えて、そして、俺の今までが消えていく。消えていってしまうッ!痛い。気持ち悪い。これはまさに苦痛、まさにあの時感じた耐えがたい苦痛だった。(~~~俺はただ逃げていただけだったのかもしれない。死んだ後のことを考えることを諦めてしまっていた、ただそれだけだったのかもしれない。俺はもうこの俺が俺であるための証があればいいなんて強がっていただけ、そんな言い訳に逃げていただけなのかもしれない。{可能性に逃げてしまっている。それが一番の苦痛だって、俺は知っていたはずなのに、どうして今更こんな思考に陥ってしまっているんだろう。}なんでこんなことになってしまったのだろう。俺は、ただ、俺の役割を全うしていただけだったのに、そう、それだけだったのに......)


「どこに逃げるっていうんだよッ!この何も無いこの場所のどこに逃げる場所があるっていうんだろうッ!」俺は、俺の目の前で俺の後ろ姿を見た。俺は、今までを勘違いしていたのか?俺が今まで追い続けていた、今までは、死ぬまでの生きてきたこの記憶には意味が無かったって......その時、前を歩いていた俺の後ろ姿が振り返った。そしてそこで言い放つ。「どうして?どうしてッ!お前が、一体どうしてお前が、生きているんだッ!生きてしまっているんだよ......なんてね、バァ~カッ!どうしようもないあなたよッ!」その男の手にはナイフが握りしめられていた。そう、この今を体現するような、まるで星々を呑み込んでしまうような、そんなナイフを握りしめていた。


俺は、俺であるためのサインは上書きされてしまった。俺が俺だって、わかってくれるような、まさに俺だけの証は、オリジナリティーは消えてしまった。だから、俺はもう思い出すことができなかった。俺の顔を、表情を、俺の今まで、まさに今ここにいてしまっているその理由を、そして俺はもう俺の名前を思い出すことができなかった。なぁ、教えてくれよッ!俺の名前はなんだっていうんだよ......しかし、この町には、もう誰の姿もなかった。


さびれた商店街の路地の片隅でうずくまる俺の目の前には、俺を蹴り飛ばした彼女の姿があった。その彼女は俺の顔を見て、微笑んでいた。まるで、その微笑みは、この俺を嘲笑っているようで、よく見ればその微笑みは、その彼女の瞳は俺を捉えていなかった。俺の姿はその瞳の中にうつらなかった。俺は無色透明になってしまったのだろうか。それとも、もう存在していないのだろうか?俺は確かめるように、恐る恐る彼女の手に触れた。しかし、もうその手に触れた感触は無かった......次の瞬間、俺をかき消すような、かき消していってしまうような、雨が降りだした......


嗚呼、なんて綺麗なんだろう。この雨はッ!僕はこの雨に感動していた。この手を穢す神秘が、この身体を穢す血の臭いが、心につけられた罪の枷が、翻るような、そのすべてがどうでもよくなってくれるような、これはそんな雨だった。僕がそんな雨を味わいながら、ゆっくりと背後を振り返ると、そこには何もいなかった。僕は、何もいなくなった、でも確かにあった声、まさに既視感を感じて、その誰かの存在が消えてしまったことを想っていた。嗚呼、彼の今までは、無に閉じ込められてしまったんだ。


だけど、どうやら僕は、もうどうしようもないみたいだ。僕はもう忘れることができないから。あの血を、あの罪の香りを、心にのしかかる重さを、もう忘れることなんて出来ないからッ!

どうやら僕は今まで生きてなんていなかった、なのに死んでもいなかったんだ。そんな生き方はなんて卑怯なんだろうって僕はようやく気付くことができたんだ。そして、そのことに気づいてしまったならもう僕は今までを否定してしまうことを止めることなんてできないッ!、後戻りなんてできないッ!そんな風に生きるんだったら死んだ方がましなんだッ!そう、だから僕は殺すことにしたんだ。そんな日常を、まさにそんな茶番を享受していた、六波羅万華鏡をッ!


僕はこの部屋を見回した後、僕の前に横たわる一丁の銃を拾い上げた。僕はこの拾い上げた銃を眺めながら考える。「本当に、本当にあなたは今のままでいいの?」彼女の声が頭の中で木霊する。「どうやらあなたは自分自身に厳しすぎるみたいね。」彼女は寂しげに僕に語るように、告げていた。「この事件が、あなたが犯人なんかじゃないって、だってそんな(サイン)を持っているのだからッ!」

たぶん、これが僕が、名探偵”ゼクス”として立ち向かう最初で最期の事件になるだろう。僕はこの銃を携えて、この部屋を後にした。それはこの事件に終止符を打つため、彼女の最期の祈りを叶えるため、そして他でもないこの探偵の自分自身を殺してしまうために......

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

食堂で何があったのか

何も知らない男 PartⅡ

次回 殺人温泉~真実~ 第九章 #2

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