↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/255

し殺人 温泉~無に今までを閉じ込めたとしても~ 第15+1話

違う。何かがおかしいと、僕はこの今に対して、感じてしまっていた。それはまるで、走馬灯を見ているように、まるで時間が逆行しているような、まるで誰かが僕を引き込んでしまうような、。そんな感覚を僕は感じてしまっていた。なのに、僕は動いていなかった......そうそれは、まるで過去が、僕の今までが、この僕に近づいてきてしまっているみたいだったッ!「嗚呼、どうやら、気づいたみたいだなぁ。この人殺しがッ!」そう、その瞬間、僕の背後から聞こえてきたのは、僕が殺したはずの、そして彼女を殺したあの男の声だった。


(どうして?)そう僕は彼を殺した。(どうしてッ!)僕はその、男の首筋にこのナイフを、何度も何度も、執拗に抉り出すように突き立てた後、僕はその男の額をこの包丁で一突きで貫いて、そして終いには、その男の胸を、心臓を貫いた。そう、貫いたはずだった。(どうして、お前がッ!)僕の手が汚れていく。その胸から溢れ出す血。それはまるで雨のように、僕の身体を、この手を穢していった。僕の手がとても重ったるいものに変わっていった。僕の感じているそんな重さは、まるでこの僕の身体が、もう動かないでくれと叫んでいるみたいだった。だけど、僕は、僕の心はこの雨を、今まで見たことのないこの雨を見て、なぜか美しいと思ってしまっていた。(一体、どうして、お前がッ!)だから、その男が、僕の背後にいる今を、その男が僕の後ろで、ほくそ笑んでいるこの今を、彼が死んでいないこの今を僕は呑み込むことなんて出来なかった。いや、本当にただ呑み込むことができないと、僕はそう思っていただけだったのだろうかァ!嗚呼、違う。僕はこの今なんて呑み込めないんじゃない、呑み込みたくなんて無かったんだッ!(一体、どうしてお前が生きているんだ、生きてしまっているんだよッ!)


~~~

俺は彼女に蹴り飛ばされ、この水たまりの上に仰向けに倒れていた。俺はしばらくの間、その水たまりの上で横たわったままで、呆然とくすんだ曇天を見つめていた。俺はその曇天を見て、それがまるで何かを隠しているみたいだって、俺は思っていた。カラスの鳴き声がして、その曇天に薄っすらとオレンジ色の靄がかかった。その景色を見た俺は起き上がって、家に向かって歩き出した。


歩き始めて、しばらく......あの時の俺は、何処か晴れ晴れとした、清々したような、そんな気持ちを抱いていた。その気持ちは、すべてが俺の思い通りになった時のような、長いこと続けていた努力が実を結んだ時のような、そんな瞬間に抱くもののような、そんな気持ちだった。だが俺は、そんな今抱いてしまっていた、そんな気持ちに対して戸惑いを浮かべてしまっていた。あの時の俺は、そんな気持ちを抱くに相応しいような、そんな瞬間からあまりにもかけ離れてしまっていたから。何も解決していない。何も変わらない。むしろ状況はどんどん悪くなっていくような、そんな状況の中にいたから。何も解決なんてしていない。むしろ問題は増えるばかり、問題を解決して、その解決した問題が生み出す価値は、新しい問題で、その問題を解決したならば......なんていう渦に閉じ込められてしまっているみたいで、たくさんの人が死んで、屍の山ができて、血の海が広がるこの光景を、ただ見ていることしかできない俺は、その渦に対して憎しみを抱き、恨みつらみを零し、焦燥感を抱き、ついには何もできない自分自身に対して殺意なんて抱いてしまって......そのたびに、俺はその選択とその選択をする俺自身に対して湧き上がる余りある無価値さに虚しさを感じてしまっていた。そして、今まさに、俺は最後の頼みの綱を失ってしまった。俺は感じてしまったんだ。すべてが終わったそんな今を呑み込んでしまったんだって。そう、俺はこの時に、この今までに対して、ずっとずっと、恐れを抱き続けてしまっていた。俺はこんな状況に、もし陥ってしまったなら、俺はたぶん死を選んでしまうと、死を選ぶしかないんだろうと思っていたから。それほどまでに、この今は苦痛で苦痛で仕方がないと、そう思っていたから。でも実際には、そんな状況、まさにこの今に、どん底に落ちてしまってみれば、そんなことはなくて、むしろ、俺は、俺の今までを、まるで他人事のように見て、考えてしまっていた。今までの過去が、この今をひどく恐れていた今までが滑稽に見えてしまう。そう、俺がそうな風に、俺の過去を振り返っていたその時、俺の頭上に広がる曇天の切れ目から、夕暮れが顔を出した。そしてその夕暮れは、この俺の足を、そして足元を照らしていた。俺はその足元を、そこにあった足跡を茫然と、白昼夢を見るようなまどろみの中で呆然と眺めていた。その足跡は俺の背後で、一本の道をつくっていた。俺はその足跡を照らす夕日に引き寄せられるように、その足跡を追い始めた。


その足跡の先で、俺は一人の少女と出会った。彼女は唐突に言い放つ。「あなたが、あなた自身、その存在をたらしめる、その(サイン)は何?」俺はその問いかけに戸惑ってしまった。(サイン)?俺はしばらく、黙り込んで考えていたが、その時、その少女の顔が、別人に変わった。そう、それはまごうことなき彼女だった。彼女は、俺を、あの時のように蹴り飛ばした。そして俺はそのまま仰向けに倒れて......どうしてだろう?体が動かない。動かすことができない。そして頭が痛い。まるで震えるように......嗚呼、そうか俺はもう死んでいたんだ。なら、この今までは走馬灯?でも、俺はその少女を今までに見たことが無かった。走馬灯じゃない?そう、俺が考えていると、彼女は問いかけた。「あなたの存在、あなたがあなたである、その理由を自覚することができた?」「・・・」俺が答えられないで、ただ黙っていると彼女は軽蔑するような視線で俺を見下してた。「嗚呼、期待外れね......」彼女は俺を一瞥し、俺からゆっくりと離れるように、歩き出していった。俺は彼女が離れていってしまう今を眺めていた。何だろう。何か、俺は致命的な間違いをしてしまったような気がする。その刹那、俺の心に湧き上がる、苦痛。それは、俺がずっと想像していた、イメージしていた死ぬ前の痛みだった。その痛みを感じて、俺は否が応でも理解してしまった。死なんて言う状態を、そして同時に生なんていう状態をッ!嗚呼、俺は諦めてしまっていたんだ。彼女に蹴り飛ばされて、もう俺は先に進むことができないと、そしてそれが死だって、勘違いしてしまっていたみたいだ。だけど違ったんだ。それは確かに終わりだった、だけど、死なんて言う無ではなかったんだッ!そして、終わりには始まりが、そして始まりと終わりをつなぐ今までの存在が、その今までの中で生きている自分自身の姿があったんだ。嗚呼、なんでこんなことに、こんな簡単なことに、ずっと気づくことができなかったんだろう。俺は、生きていた。そう、俺はわかっていたんだ。この終わりをとっくの昔にはわかっていたんだ。だけど、俺はこの終わりまで歩いてきたんだ。そう、俺はこの終わりをずっと追い続けていたんだッ!「あなたの存在を、あなたがあなたであると、感じることのできる、あなただけの(サイン)は何?」「『今まで』......それがこの終わりを瞳の前にした俺の、俺だけの(サイン)だ。」その瞬間、この世界は一変した。「フフフ。おめでとう、あなたは遂に許されたよ。」夕暮れが無くなった。終わりが遠ざけられて、夜という名の夢が始まる。その夢の中で、俺は銀河を見た。その銀河は八つ裂きにされた宇宙(そら)だった。そして俺はその中から見つけ出す。まさに俺だけの証、その象徴する星座をッ!

~~~


空間がうねり、消えていく。時間が戻り、蘇れEVER. 

そして俺の価値は終わりに帰るこの今でもって、幕開けの時を告げるだろうッ!

俺は『タイム・ストーカー』を発動した。

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

逃避行

桃源郷

等間隔

十銃拾

次回 (仮)し殺人 温泉~無←今まで~ 第17話

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。