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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ
Angel

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殺人温泉~密室に真実を閉じ込めたッ! 第13話

呆然としていた僕、まるで僕の手が、この血にまみれた手が僕の首を絞めて、この意識を手放そうとしているような、そんな推理が頭の中に渦を成していく。


「警察だァ!」食堂の扉が開け放たれて、誰かがここに入り込んできた。その男はその手に携えた銃の銃口を、こちらに向けながら、無線で誰かと連絡を取り出した。「こちら、”C-Name” 痒い所に手が届かない(ストーカー)。対象”C-Name”プロデューサーを発見。ただ、残念ながら、もう死んでしまっていますな、これは......」僕はその男が持っている拳銃の銃口を、突き付けられたままで、動くこともできないで、動きたくもなくて、ただその柱を背にしたまま、うなだれていた。


彼は今を嘲笑っていた。そう、僕の今抱えているこの気持ちを嘲笑っているように、その手に握りしめられた人の命を奪うための道具を強く押し付けた。彼は言う。まるで僕の存在を否定するような、拒絶してしまう憎しみを溢れさせるように。


「まさか、さ。お前みたいな猫を被った奴がいるなんてさッ。それで、今まで散々もてはやされていた今までを、それでいい思いをした恩を、こんな仇でよくも返してくれたよなァ!」一体誰なのだろう?そしてどんな立場なんだろう?たぶん、目の前の彼は、久留智海の同僚なんだろうけれど...どうやら、彼は今のすべてを僕の所為にして、罵声を浴びせているみたいだった。その刹那、彼は拳銃の引き金に手をかける。「さあッ、死んでくれよ。そして、お前の死でもってこの事件を終わらせることにしようッ!そうすれば、俺はこの現状と、おまえみたいな奴とを一緒に処理することが出来て、一石二鳥なんだからさァ!」その拳銃から、カチャと地に足ついた音がした。そして彼がその拳銃の引き金を引いたまさにその時だった。


バッシャァーンッ!食堂の、あの大きな窓ガラスが大きな音を立てながら割れて、その割れた硝子窓から、雨が入りこんできた。その雨はまるでこの食堂内に染みついたおぞましさを洗い流していくように、悲しくて、とりとめもない雨だった。そして、それはまるで今の僕に寄り添ってくれるような、そんな雨のようにも感じられた。そのガラスが割れたことに、僕の目の前の男は戸惑って、その窓ガラスを割った衝撃によって吹き飛ばされていった。僕はその吹き飛ばされた男を見た後、その割れた窓ガラスの方を見て、そこに誰かがいることに気づいた。

それは彼女、”五月雨丹”だった。


彼女はその窓の先に広がっていた木造のバルコニー、鬱蒼とした森をまじかで堪能することができる、この食堂のテラス席、その割れた窓ガラスから、こちらに手を伸ばしていた。「五月雨?どうして。」「説明は後にしましょう?もう私たちには、時間が無いのよ。」彼女はこちらに手を伸ばす。だけど、僕はその僕に差し伸べている手を取る気になんてならなかった。「どうして?何を躊躇っているの?」「どうしてだって?嗚呼、それは、もう僕にその手を取る資格がないからさッ!もうわかるだろ?この事件の、この食堂内に広がっているこの事件は、久留智海の死は、この僕がやったんだって、この僕がいつの間にか握りしめていた包丁で、この携えていた銃で、やってしまったんだって、もう、そう思えて仕方がないんだッ!」「どうして?落ち着いてよ。名探偵?」「僕はもう名探偵なんかじゃない。僕は夢で見たんだ、現実と遜色ないような、誰かをこの包丁で刺す感覚をッ!そして、あの拳銃の引き金を引いて、誰かを殺すそんな紛れもない感覚をッ!一体どうして、あの感覚を、あの誰かを殺した感覚を、嘘なんて言い聞かせて、僕はあなたの手を掴むことなんて、嗚呼、できるわけがない、できるわけがないんだッ!僕はもう推理して、僕が犯人だってそう結論づけてしまったっていうのに、あなたの手を取ることに、どんな意味があるっていうんだよッ!」


彼女は首を振る。「意味がない?意味がないって、本当に、本当にあなたは今のままでいいの?そんな夢で見た現実と遜色ない感覚、その手に握りしめられた凶器、そして食堂内の現状、その三つの物的と、あなたの精神的ともいえる感覚で、犯人を決めつけてしまっていいの?どうやら、あなたは自分自身に厳しすぎるみたいね。フフフ。あなたは疲れているのよ。あなたはいつもそう、事件を解決してしまえば、その事件の推理が完結してしまうなら、あなたはもう考えることができなくなってしまう。あなたはいつも、事件が解決したら、何もできないというように、自分の部屋に閉じこもって、あのソファの上で何もしないで、何もできないで、呆然と過ごしていることしかできないもの。それが今のあなたなんでしょう?でも、でもね、あなたのその態度は、あなたが名探偵だから、あなたの推理に間違いがない、そして事件がもう解決したって、そんな前提があって、初めて許されるのよ。そして今、私は知っているよ。この事件があなたが犯人なんかじゃないって、だってそんな証を持っているのだからッ!」彼女はもう一度、僕にその手を指し伸ばした。「はやくこの手を掴んでよ。そう、あなたは取り戻すのよ。あなた自身をッ!もう、あなたは疲れてなんていられないはずよッ!あなたの推理はまだ終わってない。むしろ、あなたの推理はこれからなんだからさッ!」」僕は彼女に近づいていく。そして僕は、その彼女に差し伸べられている手を掴もうとした。その刹那、彼女の手は崩れ去ってしまう。彼女は仰向けに倒れてしまった。僕の背後から聞こえてくる銃声、僕は背後を振り返る、そしてそこにはあの男がいた。「おっと、狙いを外しちまった。まあ、いいさ。どうせ、彼を助けようとした以上、処理しないといけないんだからなァ!むしろ、生き生きしている奴を先に始末できたのは、まさに行幸ッ!このまま、すべてを終わらせて、俺はこんな場所から、消えてしまおうとするかなッ!」


僕は地面に倒れた彼女を見ていた。彼女は何かを話している。「どうやら、私はここまで見たい。ごめんね。私、あなたを助けるつもりだったのに、あなたの足を引っ張ってしまってさ......」「どうして?どうして、こんな僕なんて、見捨ててしまえばいいのに、あなたのいう証拠だって見て見ぬふりをしてしまえば、五月雨......あなたがこんなことになることはなかったのに......」「それは、違うよ。それは、違う。私はあなたの猫だったんだ。これが私の生きる意味、役割だったのよ。だから、私がこんなことになってしまうことは、あなたのせいなんかじゃない。それだけは忘れないで?あなたがあなたを責めることなんてしないでよ。むしろ、あなたがあなたを責めるなら、この私を恨んでくれないかな?」「そんなことできないよ......」「なら、約束してくれる?あなたは死なないって、あなたは私の分まで、生きるってッ!こんなしょうもない事件に命を懸けないで、あなたは幸せに生きてよッ!この私がいない世界でもねッ!」次の瞬間、彼女は動かなくなった。


なんて楽な仕事なんだろう。俺はすべてがうまくいくような、そんな予感を、いや確信を感じていた。あとはお前が死んでくれれば、俺はこの世界を幸せに生きていくことができるからッ!それにしても、なんて楽なんだろう。すべてを諦めたような奴が、ラスボスなんてさッ!俺は天国を思い描きながら、その女の前で立ち尽くしているその男の、後頭部に銃を突きつけた。この一撃で確実に葬り去るためにッ!「チェックメイトだよッ!ここがお前の最期だァ!」しかし、その銃から銃弾が放たれることはなかった。


どうしてだよォ!俺は何度も何度も、引き金を引いて、引いて、引いてッ!だけど、その銃から、銃弾が放たれることはなかった。どうして?銃は何不自由ないままで、さっきまで、あの女を殺すまでは、なんの不自由も起きていなかったのにッ!一体どうしてッ?

その刹那、俺はその銃に意識を向けていたために、目の前の男、彼がこちらを振り向いていたことに、そしてその手にはいまだに包丁と拳銃が握りしめられていたことに気づけなかった。銃声がする。俺のわき腹が撃ち抜かれた。俺は痛みに倒れて、この食堂内でのたうち回ってしまう。そんな俺を彼は眺めていた。その顔は、微笑んでッ...!


嗚呼、五月雨......今、今の僕はもうわかっているよ。あの夢で感じていたあの感覚は嘘なんだって、まがい物だったってッ!だって、あの夢は、その夢の中は形だけだったから。あの夢の中で、僕は第三者の殺人を傍から、まるで他人事のように眺めていただけだった、そうまるで他人事のように眺めていただけだったから、僕はあの夢に対しての気持ち悪さ、おぞましさしか感じることができなかったんだよ。そう、こんなおぞましい行為に走る人の気が知れないってねッ!だけど、今ならわかるよ。あの夢の中の殺人には、僕の感情が、そして相手への憎しみが、殺意がッ、伴っていなかったんだってッ!


いま、僕はこの男に、強い憎しみを抱くことができてしまっているんだ。そう、僕が今まで感じたことのないような強い、強い、憎しみ、そして殺意をッ!そう、その憎しみが、僕に教えてくれたんだッ!自分のこころを開いて、相手の心を傷つけることの楽しさを、まさに自分勝手で独りよがりな快楽をッ!そしてこの殺意が教えてくれたんだッ!その憎しみをどう、ここに見せるのか、表現してしまうのかッ!それはまるで芸術のように、今この心に湧き上がる渦を、その勢いのままに、このどうしようもない今を切り取ることだったんだよッ!この瞬間、この刹那、この些少の刻、まさにこの今が、この世界のすべてなんだって、そしてこの世界だけは僕のものだって、そんな全能感を知らしめるような力を籠めて、そんな万力のような力をこの殺意なんて生き物を殺すように、強く、強く、強くッ!そう、僕はこのナイフを、その男の首筋に突き立てた後、その男の脳天をそのナイフで突き刺し、そして終いには、その胸を突き刺した。僕の手が本当に汚れていく。僕の身体が返り血で穢れていく。だけど、僕の心は、もうすでに彼女が死んで穢れ切ったこの心は浄化されていくみたいだッ!


僕はこの感覚を今までに感じたことなんてなかった。そして、その確信が今を、この食堂の惨状を冷静に観察させたッ!その死体たちは、惨たらしく殺されていた。そう、まさに僕の目の前のこの男のようにッ!嗚呼、なるほど、彼女の言うとおり、この食堂の惨状は僕がやったんじゃない。別の誰かがやったんだッ!そう、ここで僕はようやく心の底から信じることができた。そして、僕はこの食堂の惨状を創り出し、この拳銃を、この包丁を僕の手の中に持たせて、僕に罪を着せようとした何者かの存在を感じとっていた。嗚呼、よくもやってくれたじゃないかッ!僕は懐から、サングラスを取り出した。そしてそのサングラスをかけるッ!

それはいつものジンクス、だけど、これが最期の約束。

彼女が贈った最期の言葉への”ありがとう(answer)”だった。

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

状況確認

カードが指し示した部屋

謎の銃

Seek & Hide

次回 殺人温泉~密室に真実を閉じ込めたなら 第14話

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