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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第十二章 強襲編 第七話

「助けてください。はやく助けてくださいよ。どうして?私はほかでもないあなたに助けを求めているのに、あなたじゃなきゃダメなのに。ねえッ!なんで笑っているのッ!」

ツー...ツー...(電話は沈黙を称えている。)


水族館で閉じ込められているお魚は、どうしてそうすました顔を浮かべているのだろう?

嗚呼、どうして私がここに来るといつもそんなことばかり考えてしまうのだろう?そんなこと考えて嫌な気持ちになるのはこの私だけだっていうのに。そして、こんな気持ちを、こんなわだかまりを抱いている人なんて私だけだろうに。


その時、私の視線の片隅に何かが動いた。それは黒い点状の何かだった。(虫?)私はその黒い点に視線を向けた。しかし、その視線が黒い何かを捉える前に、それは消えていた。(気のせいだったかな?)そう思い、私はその水槽に向き直った。私の前で広がっている大水槽。それは魚たちよりも目立っているように私は思っていた。圧迫感のあるガラス、そのガラスにのしかかっているように見て取れる確かな水の質感、そして旋回する魚たち。


その魚は死んでいるかの様だった。彼らは同じところを何度も何度も行ったり来たりを繰り返している。まるで観客を飽きさせるかのように。彼らはゆったりと泳いでいた。まるで忍び歩きをしている様をわざわざ見せつけるかのように。そして、彼らはそんな姿を毎日、毎日繰り返していた。まるで誰かに何かを当てつけているかのように。そう、たぶんそれはほかでもない私を飽きさせるために、そんなことをしているのだろう。「私が何かしたのだろうかな?」そんな言葉を言ってみる。しかし、そんな言葉はガラスの向こうの彼らには届かなかった。


ガシャーン!私はもっていた包丁でその水槽に傷をつけてみる。嗚呼、思っていたよりも脆弱な檻のようだ。私は何度もその包丁を振り下ろす。そう、彼らが私にやったように何度も、何度も振り下ろして見せる。しかし、その復讐に意味はなかったようだ。水槽から溢れた水によって周囲が青に染まる。それはまるであのくすんだ青空の様だった。


ガシャーンッ!この大きなガラスに入れられたひびは瞬く間に全体に広がり、そして耐えきれなくなって敢え無く決壊した。水族館が水に沈む。私はその水槽から溢れ出た流れによって押し流されていく。揺さぶられるからだ、失われていく意識、力強く握りしめていた包丁、そして私に話しかけてくる誰かの声。「助かったよ。閉じ込められてどうにかなってしまうと思っていたんだ。嗚呼、あなたは毎日ここに来て何度も何度も執拗に私たちを見に来ていたね。楽しかったかな?私たちの閉じ込められている様は。」


魚は死んでいた。彼らは水が無くなった水槽で死んだように横たわっていた。そして私はその空になった水槽の前で、水で満たされた水族館の中でもがき苦しんでいた。私はその水槽の中に入ろうとしたが、それは止められてしまった。


私はどうして水槽の中へと入ろうとしてしまったのだろう。水槽内は魚だけの世界だ。そう、私は魚なんかじゃない、あんな縛られている魚なんかじゃないんだッ!しかし、やっぱり息ができなくなっていく。二酸化炭素が口腔内でとぐろを巻いて、力も無くなっていく。それに比例して大きくなる絶望、それにあてられた私は辺りを見渡した。すると、私の目線の先にあったのは輝かしい光だった。どうしようもなく眩しい光だった。私は力なくその光に手を伸ばした。


私はその引き金を引いた。嗚呼、力なくても関係のないこの究極的極論的意志だけのみの代弁者の首根っこを私が掴むときが来るなんてね。バンッ!

次の瞬間、ここはもとの水族館に戻っていた。相も変わらず静寂で、そして退屈な空間が広がっていた。ただ、違う点を挙げるとすれば私の前の水槽には何もいなかった。いや、違う。一人だけその水槽の中にいた。それは、このガラスにうつった私だった。


私はナイフをその私に振り下ろして見せる。何度も何度も、執拗に繰り返すように。それに伴って、私の顔面が砕け散っていく。そして、その私の顔面に出来た傷は、私の全身に伝播して、そして私は何かを堪えているかのように胸を抑えた後、それは敢え無く決壊した。アハハハハハハッ!


~~~

突入した私たちが見たのは一面真っ白の世界だった。水族館の壁が、床が、天井が真っ白に染められていた。そして、その中央で死んでいる一人の少女。彼女は全身をめった刺しに、額に風穴を開け死んでいた。この死体はこんなわけがわからない場所で死んでいるだけでも不気味だったが、もっと気持ちの悪いことにその死体には血が一滴も残されていなかった。そしてその遺体は身元が分からなかった。データベースに登録されているDNA情報すべてと一切合致せず、そして顔面はわからないようにズタズタにされていた。


その死体には拳銃が握りしめられていた。彼女はその拳銃を力強く握りしめていた。どうして?彼女は明らかに死んでいるというのに。そう、私たちが見ているとその指がゆっくりと動き出した。

カチャカチャ、そんな擦れる金属音があたりに響いていく。どうしてだろう?私はその音が、どうしてか私の心臓の音のように思えてきた。同じリズムで、同じ音で、まるでこの今を一瞬一瞬を刻んでいるかのように......そして、その音はどんどん大きくなっていく。何だろう?誰かに見られている?気持ちが悪い、吐きそうだ。まるで私の心臓がどんどん大きくなっていくかのようだ。


そしてその心臓はこらえきれないほどに大きくなっていく。苦しくなって私は胸を抑えていたが、もう抑え込むことなんて出来ないみたいだ。次の瞬間、それは敢え無く破裂した。バンッ!

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

ついに犯人を追い詰めた。

罠、それとも運命。

ここは拉麺屋。そこで振舞われていたものは......

嗚呼、すべてを思い出してしまった。

次回 第十二章 強襲編 第八話 

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