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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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殺人温泉~密室に真実を閉じ込めて 第一話

「さすがですッ!さすが名探偵ッ!まさか、犯人がもう死んでいたなんてさすがの推理ですッ!」そう言って笑う彼女。そして、僕の瞳の前で死んでいる犯人と、膝から崩れ落ちる共犯者、いやこの状況をさんざん引っ掻きまわした指揮者とでも呼ぼうか?そして俺の背後にはこの部屋のドアに寄りかかっている一人の刑事がいた。「流石ですな、名探偵。おかげで楽できましたよ。」彼はそう言って薄ら笑いを浮かべながら、僕の肩を二度叩いた後、その犯人と指揮者を連れ去っていった。僕はこの部屋から出ていく彼らを瞳で追っていた。彼らが開けたドアの先は真っ白だった。そしてその光に包まれたドアの外側に立った、その刑事はこちらを振り返る。「また、頼みますよ。名探偵......」


僕の名前は”六波羅万華鏡(ろくはらまんげきょう)。巷では名探偵と呼ばれている。そう、僕はその呼び名通り、今まで様々な難事件を解決してきた。そう、まさに今だって......そう言えば、いつからだっただろうか?僕がこんな風に”名探偵”なんて呼ばれるようになったのは......?わからない、僕はただ淡々と事件を解決していただけだった。いや、そんなこと考えても無駄だよな。そう、こういう呼び名は不可視の名声によるところが大きいのだろうから......


僕がソファの上でうつらうつら瞼を擦りながら仰向けに横たわっていると、その視界の隅から誰かが飛び出した。「フフフ。どうやら、目に見えて疲れているようね?名探偵。」「やめろよ。今はただの六波羅だ。今、そう呼ぶのはやめてくれよ。」「なんでよ?かっこいい呼び名なのに......」


彼女の名前は五月雨丹。僕の幼馴染だ。彼女はいつもふらりとこのアパートに現れて、そして気づいたときには消えている。そう、彼女はまるで猫の様だった。「からかわないでくれよッ!もう!」「えへへ。ごめんごめん。それよりこれを渡しに会いに来たんだ。」彼女の手には二枚の紙切れが握りしめられていた。そこには特徴的なマークがあった。「それは......?」「疲れているでしょう?これはそんなあなたへのプレゼントッ!」そのマークは三本のうねった線があり、そしてその線を囲むような円が縁取られていた。そう、そのマークは温泉のマークだった。「これは温泉宿の宿泊チケットよ。」「どうしてこれを......?」「商店街の福引で当てたの。どう?疲れているなら、一緒に行かない?」僕は今、彼女の姿が天使、いや女神のように感じていた。「行きます。行きますともッ!喜んでいかせていただきますッ!ありがとう、ありがとうッ!」


その温泉宿は山奥にあった。麓の町から、バスに乗られて一時間半。今、僕は少し酔ってしまっていた。この曲がりくねったカーブによって、何度も揺さぶられてしまった僕の意識は吐き気と疲れとの間を行ったり来たりを繰り返していた。耐えるんだ、名探偵。今、耐えれば、天国が待っている。癒しの天国がッ!

嗚呼、気持ち悪いや。嗚呼、疲れたわ。嗚呼、待ち遠しいや。この気持ち悪さを癒してくれる温泉がッ!


バスが停車した。「着いたよッ!六ちゃん。」「嗚呼、ようやくか?何度も......意識が飛んじまったよ。」彼女は死んだような僕をいつもの元気な顔で眺めていた。「酔わなかったのか?あなたは......?」嗚呼、鬱陶しいや。いや、彼女のおかげでここに来れたんだ。そう思ってくれるな、名探偵。「ねえ、はやく行こ~よッ!そんな座席で横たわってなんていないでさッ!」このバスにはもう、僕と彼女以外の人はいなかった。そして彼女の手は僕の腕を掴んで、そしてそのままバスの外へと連れて行った。「ちょっと、待って......待ってよ。」僕はバスの外へと半ば無理やり出されてしまった。そしてそんな僕の視線の先には立派な温泉宿があった。


その温泉宿はこの山奥に不釣り合いのように感じられた。そう、それほどまでにその建物は立派で荘厳で、そしてまるで鬱蒼とした森の木々の枝葉のようにしなやかで揺蕩っているかのように感じられていた。しかし、僕はゆっくりとその景色を見ることができなかった。なぜなら、彼女に腕を掴まれたままの僕は、そのままの勢いで温泉宿の中へと入れられてしまった。


建物の中はとてもにぎわっていた。入って右手に広がるのは客室と食事処、左手に広がるのはお土産処、そして正面には赤と青の暖簾が口を開けていた。彼女はカウンターにその券を見せていた。そして、彼女はその券と引き換えにそのカウンターから何かを受け取っていた。それは何かのマークのようなものだった。そのマークについて僕はなんなのかわからないで、彼女に聞いてみたが、彼女は意味ありげに笑って、そして「秘密......」と言っていた。


彼女と別れて、さっそく僕は温泉へと入っていった。僕は着替えをロッカーの中へと入れながら、彼女にもらったそのマークを眺めていた。そのマークは白い紙に一文字のアルファベットが印字されていた。

              『F』


読んでくださってありがとうございます。


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