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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第三十三章 Who are you? 第二話

最新のフリーソフトウェアシステム、通称”ホワイトボード”。これは、情報技術分野において様々な事業に参入し、大きく注目されていたN社によって開発されたソフトウェアシステムである。このシステムには、N社が今まで着手したあらゆる分野に関するノウハウが注ぎこまれていた。具体的には巧みなユーザビリティが担保されている機能的でまた認知的にもわかりやすい設計、システムに内蔵されたユーザの癖を学習し効率的な業務を行えるようなサポートを行うAIシステム、そしてユーザにとって開発のしやすい環境(システムのプログラムを構成するソースコードは公開されており、独自の仕様変更、システムの研究・解析、そして改良版の流布の自由が認められていた。)等が構築されていた。


このソフトウェアは発表された段階から、注目の的になっていた。それはそのソフトウェアに内蔵されていたVRソフトウェアの存在だった。そのVRソフトウェアにはその会社独自の技術によってまさに現実が再現されていた。完全に投影されていた物理法則、反射的で、それでいて自然なVR空間におけるユーザとコンピュータ間の相互のやり取り(インターフェイス)の滑らかさ、そしてその中における自分自身の姿の現し方、その拡張性、他人ならこんなような姿に見えるように、そしてあなたならこんなように、というようなプライバシー保護と”仮想現実の夢のような超然とした感覚”を擁立したかのような機能が備わっていた。


この情報が解禁されてすぐ、ホワイトボードの一端である、オフィススイートがリリースされた。それは瞬く間に広がって、公開されたソースコード、その改変、開発によってこれは多種多様な形態になり、一般ユーザーや、警察、病院等、このソフトウェアは様々なユーザーによって多岐に渡って使われるものとなった。このソフトウェアに対する評価は増大して、このソフトウェアのVR開発ソフトウェアを含むホワイトベースの完全版と、このソフトウェアを最適化したN社の新たなコンピューターの発売が求める声が上がり始めたその時、N社は本社を参峰町へと移転した。そしてそのタイミングでこの機能”VR開発ソフトウェア”のテストを行うことを発表した。これはまさに、ホワイトボードシステム、その完成のために......


~~~

そのテストの内容は、参峰町のある情報系の高校に新型のコンピューターを期限付き提供し、そのコンピューターに内蔵されたVR開発システムを用いて、文化祭の出し物をつくってもらうことだった。もともと、この高校では二年生の文化祭はパソコンを使った何かしらの発表がメインだったために、俺はとても得したような気分だった。


文化祭の三か月前、俺の瞳の前にずらっと並んでいたのは47台(二年生全体の人数)のコンピューターだった。俺はそのコンピューターから漂う新しい、そしてどこか輝いているような雰囲気を味わっていた。嗚呼、なんて荘厳なんだろう?家電量販店だってここまではない。それに、この学校のコンピューター室だってこんなスタイリッシュな香りはしなかった。やっぱり、新しいのは違うようだなッ!


クラスの中で出し物が始まった。俺は司会をとりなし、学級委員長の横でチョーク片手に教室を見渡していた。クラスのみんなはコンピューターを触りながら、何をするのかの想像を膨らませていた。しかし、その中で一人その雰囲気にのまれない馬鹿な奴がいた。彼の名前は土伊中条。彼はいつも机に突っ伏して眠り呆けて、話し合いだったり授業だったりに参加しようとしなかった。まぁ、それだけなら彼が孤立してしまう原因が何だろうなんて考えてしまうかもしれない。しかし、彼は彼に強いる何かのためにそのような態度を取らざるを得ない、いわば受動的にそう振舞っているわけではなかったんだ。


俺が彼に声をかけた時のことは今でもありありと思い出す。彼は黙ってただ俺を見ていた。そしてその彼の表情を見て俺は戸惑っていた。彼の表情は俺が予想をしていたものを裏切っていたからだ。彼は俺を睨んでいた。そしてその瞳に殺意があった。俺はその殺意を見たその瞬間、死んだような感覚がした。そうだ、俺は、彼を気にかけようとしていた俺は、あの時死んだんだ。そして俺の中に残った彼を排斥したいこの気持ちが思いっきりアクセルを踏んでいく。そう、俺は彼をもっと孤立させるがために動き出した。俺が今まで距離を置いていた彼らに”カモがネギを背負って飛んできたかのように”これ見よがしに近づいて、俺は俺のテリトリーをつくりだした。そして彼らを通じて、噂を広めていく。彼をこのクラスから追い出すための噂を、あくまで間接的に、俺が責められることのないように、だけども効果的にありそうでない、ないようである、そんな噂を流布していく。俺の周りに漂う猿は何も考えないでただ俺の思うがまま、そしてこの噂に感化されたクラスメイトは彼からあからさまに距離を置くようになっていった。(しめしめ。)俺の心に湧き上がる安堵感。そうだ、このままだッ!このまま俺はお前を殺してくれるッ!かつてお前が俺にやったようにッ!そうだ、これは倍返しだッ!あの時の視線、お前が俺に込めて放ったあの殺意、これはその応酬、その報い、そしてその約束された末路、その成就なんだよッ!これはッ!


しかし、彼には幼馴染が一人いた。そしてそれは俺の噂をものともしない、俺と同等の影響力を持っていた彼女”﨑野預御”だった。彼女はこのクラスの学級委員長だった。彼女は鬱蒼とした森の中に現れた一筋の道のようにクラスの人々を一丸に纏め上げ、そして彼らをその道の先へと走らせる、そんな超人だった。俺は感じてしまう。彼女を前にしたすべての人は彼女の存在を前にして、一つの挫折を味わってしまうと......その挫折はどうしようもない、立ち直れない、そんな絶望と言うべきものだった。そう、彼女が普通の人として存在を許されているこの世界においての俺は、そして俺達は、ただの無知無能の盲目的末人に過ぎないのだろう。


彼女の視線には何が見える?俺は、いや、誰もいないんだろうな......彼女の瞳には何もいないのだろう。彼女の瞳はここじゃないどこかを映しているのだろう。そう、例えば未来、彼女が、いや俺が、いや俺達全員が最終的に行きついてしまうところを見ているのだろう。彼女はいつも笑っていた。そう、彼女の明るい笑顔が俺の死に顔をいつも照らしていたんだ。俺はその光を感じながら、心の奥底ではその光を消し去ってしまいたいと思っていた。そう、俺はお前の明るさに殺意を向けていたんだよ。しかし、彼女の影響力は俺と同等、もしくはそれ以上だった。彼女の存在のために、彼の排除も中途半端のままだった。俺は、彼の噂を流すのを止め、彼女の弱みを握ろうと観察していた。しかし、それはただ彼女の素晴らしさを直視してしまい、それがかえって俺の醜悪な本性を鏡のように映すだけだった。湧き上がる自己嫌悪。嗚呼、今が虚しくて虚しくてしょうがないよッ......次の瞬間、俺の右手に何かが触れた......

続く

読んでくださってありがとうございます。

波切翔は胡散臭い

懐から取り出された何か

彼女は彼と睨みあう

険悪な雰囲気があたりに満ち満ちていく......

次回 第三十三章 Who are You? 第三話

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