表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/129

第参拾伍章 Before → After

「どこに行くというんだい?この場所は袋小路、出口なんてないっていうのに。」彼の言葉があたりの空気を殺していく。それは私が感じていた解釈の崩壊、それは周囲の雰囲気に対して私自身が抱いていた感覚(感情)を彼のその言葉が殺してしまった、他でもない現実、まさに他でもない今その瞬間の残酷なリアリティのためにッ!そして、そのリアリティを直視してしまった私の瞳には焼けるような激痛が走った、しかし私はこの今からこの瞳を背けることなんて出来ないで、この光景を強いられたその視界はどんどん真っ白になっていった、そして彼の漆黒のガラスのような瞳にうつしだされていた私の瞳はその視界とは裏腹に漆黒に淀み始めていた。そう、まさに今、私の瞳の前で悪趣味な笑みを浮かべている彼のようにッ!

~~~

私(夜見)は疾走を続ける、この銃をタリスマンに向けながら、引き金に指をかけ構えながら、そしてこの銃につけられた照準具(サイト)を彼の持っている秤に向けて......

私の頬につたう緊張が汗となって、私の体へ纏わりついた粗熱を奪い去っていった。残されたのは生きるために必要最低限の熱と、最高の感覚(コンディション)のこの身体だった。私の最適化された思考回路が、私の身体を縛り付けるすべてを解き放ち、自由に振舞うのを可能にしていった。この時の私の心にあったのは一つの祈りだけだった。生きたい。そう、私はこんなわけのわからない場所で死ぬわけにはいかないんだ。そうだ、死んでたまるかッ!私は仲間のためにも、せっかく手に入れた自由のためにも、こんなどこかわからない場所で死ぬわけにはいかない。そうだろッ!今までも、そしてこれからだって、私は諦めるわけにも、逃げるわけにもいかないんだッ!タリスマン、お前の正体が何であろうと、私を殺すことなんて出来ないだろうよッ!私はたとえ死という運命を前にしたとしても、決して諦めることはない。むしろ、あなたのほうが諦めることになるだろうよッ!そう、それが私だって、﨑野夜見だって肯定できる意味だった、意味だったんだッ!さあ、あなたはこの意味の、私の生への贄と成り果てて、死んでしまえよ。そして私はあなたのその屍の上で自由になってくれようかッ!

~~~

私は彼の携えた秤に向けて五発、そして持っていた小型の閃光爆弾を彼の顔面に向けて放り投げた。彼の瞳の前で爆発する爆弾、しかしその爆発は私が思い描いていたものではなかった。彼は何かを唱え始めた。それは神への奏上、奇蹟への枕詞、ターニングポイントの発露、その契機そのもの、”祝詞”、その”しらべ”だった。「希望、それは開放。繰り返される暗示、貶められた意味。絶望、それは、あなた。閉塞の時の中で心中する咎人よ。俺は今、お前の死をもって果たそう。約束の運命、その(アクシス)をッ!」

彼の声が世界を知ろしめし、世界のまなざしは彼を見ていた。次の瞬間、彼の頭上に立ち込めていた雲は回転を始めた。その回転は彼の真上の雲から渦を描き、その渦は次第に大きく速くなり、そして次の瞬間、頭上に立ち込めた雲の一切が消えていた。その雲が無くなったその空には、どこかくすんだ青色の青空が広がっていた。

その青空を見上げて、その色に戸惑ってしまった私、そしてその青空を見た視線が前へと戻ることはなかった。私の左手と両足が切り落とされて、力なく倒れてしまった私は仰向けで、この青空の前に立っていた。

私は片手と両足が切り落とされてしまっていたのに、どうしてだろう?私はこの切られたことよって起きるはずの痛みのようなものを一切感じてはいなかった。むしろ、私はこの切られてしまったことに対する恐ろしさよりも、身動きが取れなくなってしまったことに対するやるせなさだったり、この青空に対しての気持ち悪さの方が大きくて、そのために私はどこか冷静だった。私は頭はこの状況を切り開く策を考え続けていた。しかし、そんな都合のいい策なんて思いつかない。そしてそんな仰向けで倒れている私に近づいてくる足音が聞こえてきた。

「残念だがチェックメイトだ。」そう言って私の顔を見下ろしているのはタリスマン。彼はもうさっきまでの白いローブを来たあの姿ではなく、私が彼と最初に出会ったあの時と全く同じ姿になっていた。「覚えているかい?この場所を?」彼は私に馴れ馴れしく話しかけてきた。私はその声に愛想笑いを返して見せる。「ハハハ......わからないな?たぶん、私、ここには初めて来たんだと思うけど...」そう、私は本当にこの場所がどこなのかわからなかった。そしてタリスマンは、動けない私をただ見ているだけだった。彼が携えていた剣と秤はもう彼の手には無かった。そして辺りに充満していた殺意は鳴りを潜めていた。私はこのタリスマンの様子を見て、彼はもう攻撃のする気がないように見えた。その様子を見た私はこの敵のことを、私の仲間に、同胞に伝えようと思い至った。そのために私は私の残された右手の中に、私のポケットの中にあった紙切れを隠し持った。

~~~

「お前はこの場所を知っているはずだよ。夜見。知らないわけがないんだ。」(わからない。本当に私はこの場所を......)「この雪には見覚えがあるだろう?」「ええ。この雪には見覚えがあるわ。おぞましい、死の象徴、”時の灰”。死んだ時間の形そのものでしょう?」「嗚呼、今のあなたはこの雪をおぞましいと形容してしまうんだな。あなたはかつてこの雪を好きだって言ってくれたのに......」彼は私の反応にどこか悲し気な表情を浮かべていた。

続く

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

個人的無意識

自己暗示の終わり

本来の姿、本当の名前?

過去と未来は同じだった、他でもないあなたにとってはッ!

次回 第参拾伍章 ”~~夜見”

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ