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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第三十三章 かつての私へ

「その写真、嘘なんでしょう?」その扉から入ってきた誰かの声が背後から聞こえてきた...私はその声を背にしたまま、金縛りにあったようにかたまってしまっていた。私はどうしても振り返ることができなかった。その声に見覚えがあったから。そう、忘れるはずのない彼の声、そしてそれはもう聞くことのないはずの声だった。「やっぱり、嘘だよな。そんな錠剤、貰っていないもんな。」背後から聞こえてくる足跡、それはゆっくりと私へと近づいてきた。嗚呼、これでもう私は終わりなんだろうな、そんな予感が私の首を絞めていく、しかしその絞められた首によって死ぬことは許されなかった、それはただ苦しむためだけの行為だった、息ができないで血液循環の盲目的振舞と、動くことのできない今とのどうしようもないコントラストを感じながら、私はその時を待っていた。嗚呼、第六感なんて必要ない力があるとしたら、それは今へのリバーブなんだろうな。

「でももっといい嘘をつきなよ。そんな笑えない嘘をついたって、それは何の救いにだってなってはくれないんだよ。」私はその言葉を聞きながら、過去を思い出していた。「あなたは知っていた。この錠剤”ブラックトローチ”のことを、そしてあなたはこの錠剤の効能が何なのか知っていた。だから隠したかった、そうなんでしょう?」私はもう話すべき言葉を見つけることができなかった。嗚呼、私はこの今という名の落とし穴に嵌められたんだ。「でも、やっぱり二枚目の写真の件は厳しかったんじゃない?どう考えてもそんなピンポイントの写真を運よく撮っていたなんておかしいって思わなかったのかい?まあ、今となってはもうどうでもいいんじゃない、あなたはもう終わりなんだからさッ!」

~~~

私は彼を電話で呼び出した。彼は私に笑いかける。「久しぶりだな?元気だったかい。」挨拶もそこそこに、私は彼に銃を突きつけた。「なんだよ、ソレ?」

バンッ!

彼は仰向けに吹き飛んだ。拳銃から飛び出した弾丸は血の散らばりの上を疾走していった。「これで八人目か...」私はそうやって笑っていた。これですべてはうまくいく。フフフ。そうだ、これですべてにケリがついたようだなッ!私は死んで横たわった彼が握りしめていたナイフを取り上げた。その瞬間、そのナイフはブラックトローチへと変わった。私はそれを呑み込んで、私の右手に握りしめた私のダガーナイフで彼の顔面をめった刺しにした。そのナイフに込めるのは憎しみだった。「よくもッ!よくも、よくもッ!消えてしまえ、私の前からッ!消えてしまえッ、私の世界からッ!消えてしまえッ!!私のこれからを穢してしまう前にッ!!」私の過去が虚構へと堕ちていく。私の記憶が曖昧模糊から、整理された棚へと変わっていく。その整理整頓が行き届いたこの棚を見て笑う私。そう、この光景を見て味わうのはそれはそれは気持ちがいいったらなんのってね。そうだ、私はこの気分を確かめるがために生きているんだ。まさに、これは能動的な存在証明だったんだ。→存在が無の中でしか成り立つことのできない概念であるのと同様に、生もまた死の中でしか成り立つことができないんだ。無は私の意識が創り出した否定であり拒絶でもあった。その拒絶によって今までたくさんの人を傷つけてきた私は私自身が嫌になってしまった。そう、意識とは記憶そのものであったからだ。私は自己嫌悪、言ってしまえば過去が嫌いになってしまったんだ。今の私が自分自身の記憶を再生すると、そこには幸せそうなかつての私自身がいた。しかし、その幸せとの出会いは今と言う裏切りでもって、不幸へと自分自身の手でもって堕としていく。それは忘却、そしてトラウマ、または個人的無意識(コンプレックス)として私の今を苦しめて貶めて、ついにはその不幸に相応しい姿へと、そして形へと変貌させていった。

鏡の前で立つ私。なんておぞましいんだ、お前はッ!私はそのガラスに立つ醜悪なお前を持っていたナイフでもってめった刺しにした。そしてそのぐちゃぐちゃになったその顔を嘲笑って見せる。そうだよッ!お前はその顔がお似合いさッ!しかし、それはただの言い訳に過ぎなかった。そしてその言い訳は逃避でしかなかった。その逃避が反って自分の逃げ道を一つ一つ失くしていった。そしてついに私に残された、たった一つの逃げ道は私自身の手の中に握りしめられていた。そして私がそのナイフを私自身の首筋に突き立てたその時、私の瞳の中に何かが落ちた。それは一冊の本だった。その本は緑色のボロボロな表紙に掠れた文字で”不完全な真球”と書かれていた。私はその本を開く。そしてそこに書かれていたものを見て私は衝撃を受けた。そこに書かれていたのは真実だった。私が知りたかったこの世界の真実、または本質のすべてがそこにあった。そう、その本はその存在がこの世界のすべてをまさしく例外なく否定した完全なる一つの自我(エゴ)であった。

過去と未来の否定、” Serial world” 、醜悪な原型の意味である原罪、そしてそれこそが集合的無意識の正体、心に仕掛けられた爆弾と約束された終わり、そしてそのことに対する完全なる肯定、まさに儀式。なるほど、これが運命、これが意味、そうか...意味ですら無意味の中からでしか生まれなかったのか...

~~~

「あなたは終わりの中に始まりがあるなんて勘違いをしているようだ。フフフ、それは違うよ。始まりと終わりは等価値なんだ。誰かの終わりは誰かの始まり、あなたがあなたのために誰かを殺すたびに、あなたはその始まりによって何度も何度も生まれ変わっていたんだ。まさにそれは新生と呼ぶべきなんだろうよ。」私は何もいうことができない。わからない、何もわからない。ただ私はどうしてか、一度感じたあの終わりの予感を、あの本にあった確信めいた終焉の予感を感じてしまっていた。その時、ずっと黙っていたこの店の店主が口を開いた。「そんなはずがないッ!そんなはずがないんだッ!俺が聖遺物を握っている。だから記憶の再生はできないはずだッ!そうだろッ!これはただの芝居、死人が俺を惑わすために、嘲笑うがための演技なんだよッ!むしろこれはチャンスだッ!俺はこの悪魔との因縁にケリをつけてくれるッ!この銃でもってッ!」その声は私の声だった。彼は迷いなくその銃の引き金を引いていた。頭に突き刺さる痛みの実感、そして私は地面に倒れ、小刻みに震えながら、垂れ堕ちる意識の感覚を、飛び散る記憶の忘却をひしひしと感じ取っていた。その薄れゆく意識の中で私は店主の顔を見た。その顔は...久瑠智海だった。「そうか...お前だったのか。智海...」「フフフ。今の俺はクロウスだよ。蒼汰ッ!」

智海は目の前で広がる血の海を眺めていた。そして彼はナイフで彼の体を切り裂いて、彼の体の中から完全なる真球を取り出した。そしてそのその真球を高らかに掲げ、握りつぶして、それを不完全な物へと変えていった。

~~~

彼は人形のようにただテーブル席に死んだように横になっていた。俺はカウンター席からあれを取り出した。それは拳銃だった。「今回は危なかったな。ゼクス。もう少しで俺たちの計画は何もかもお終いになってしまうところだったな。」そう彼はアトロの姿で独り言のように呟いていた。「嗚呼、十分な信心と贄は揃った。もう少しで彼が動き出し、計画は動き出す。今回の件によって失われた犠牲を差し引いても計画の許容範囲内だ。」彼は店主の真っ黒の瞳を見て言った。「わかるよ。お前の瞳にはすべてが無駄にうつることは。俺達の計画も滑稽に見えるんだろう?でも、ここまで来てしまったんだ。諦めるわけにはいかない。お前のためにも...フフフ。ほんと、自分たちの存在ってしょうがないな...」私はため息をついてゼクスのサングラスをかけた。「お前のそういうところ本当に尊敬するよ。ゼクス。俺はそんな風に死ぬことなんて出来ないだろうから。」彼は席を立って、この店を後にする。彼はもうここには戻らないのだろう。彼が出ていったこの店には血の海が広がっていて、そしてその海の上をさわやかな風が通り抜けていった。

四人目 完

読んでくださってありがとうございます。

次回予告 (仮称)

回天を始める聖遺物、

純白に還るホワイトボード

そして図書館と言う棚の中で、終わりを見てしまった天使

生まれ変わっても罪は消えないよ、ざまあみろ。

次回 (仮)第三十三章 Who

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