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タイム・スパイラル  作者: やあやあやあ


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第三十三章 Where

私はただ立ち尽くしていた。手に当たる風、首をつたう冷たい空気、そして私の瞳の前で繰り広げられる光景。(ここはどこなのだろう?)それがこの今を前にした私に湧き上がってきた問いだった。そしてその自問自答の問いかけが茫然となっていた私の意識を取り戻した。ここは小高い丘の上の様だ。日輪は私の斜め頭上からこの場所を照らしていた。私の視線はその光源から()の前の光景を経由して、そして私の今いる場所へと変わっていった。そこは二車線道路の右車線上だった。私は戸惑ってしまう。本当にどうして私はこんなところで、こんな危ないところで立ち尽くしていたのだろう?次の瞬間、私の背後から地面を削ぐ摩擦音の疾走が迫ってきた。私はその道路から、歩道へと間一髪で飛び込んだ。その音の正体はそのままの勢いで私の背後を、私がさっきまで立ち尽くしていた場所を通り抜けていった。私はその場でへたりこんで、私の視線はその車を見えなくなってしまうまで追い続けていた。

その車が見えなくなって、しばらくして私は立ち上がった。あたりを見渡すと、ここはどこかの丘、その頂上付近の様だ。丘の麓には広大な街並みが広がっていた。そしてこの丘には二車線道路の他に、歩道橋、公園、そして大きな建物群があった。歩道橋はこの坂の中腹にかけられていた。この道路には横断歩道はないからもし反対側に渡る必要があったなら、この歩道橋を利用しなければならないだろう。

私の今いる場所から少しこの丘を降りた場所には公園があった。遠くから見てもその公園は真新しいよう

に見えた。そして私のいる場所の反対側には大きな建物があった。それはたくさんのビルの集合体のように見えた。そのビル群もまだできたばかりの様だった。

私はこの丘から、眼下に広がる町に向かって歩き始めた。しばらくたって、私の歩みは丘の途中で止まった。歩みを止めた私の視線の先には公園があった。その公園の中には自動販売機があった。その自動販売機を見た瞬間に湧き上がる渇望。私はどういうわけか、この喉の渇きをすっかり忘れてしまっていたようだ。私は公園の中に入り、そこで麦茶を購入した。そしてその公園のベンチに腰掛けて、その麦茶を飲み始めた。どうやら私は、私が考えているよりもずっと喉が渇いていたようだ。私は一気に600㎖のペットボトルの半分を飲み干してしまっていた。私はそのペットボトルの飲み口から唇を離して、前へと向き直った。すると私の瞳の前には誰かが立っていた。それは一人の男だった。彼はこちらを睨んで、憎々し気な表情でこちらを見ていた。私は戸惑ってしまう。(いつからいたのだろう。私はどうして今の今まで気づかなかったのだろう。それにどうして私を見て睨んでいるの?)私は心の中で自問自答をしていた。いや、その答えはもうわかっていた。ただ、その答えに至った私自身を受け入れることができないで、ただ言い訳をしていただけだった。そう、これはこの状況を受け入れることができない、つまるところのわからないという結論の言い訳でしかなかったんだ。

私はベンチから立ち上がった。そしてその男に近づこうとする。「近づいてくれるなッ!」その男はそう言った。その顔は何かを覆い隠そうと...ここまで考えたところで私はこの状況に何か既視感のようなものを感じた。その感じた既視感は一つの予感だった。私はどうやら瞳の前の男にどこかで会ったことがある、それはそんな予感だった。

「ねえ?あなたは誰?」私は彼に問いかけた。彼は私を睨んだままでその問いかけには答えない。彼は真っ黒のリュックサックを背負い、その手には一冊の本を持っていた。その本は表紙に何も書かれていなかった。その本はボロボロで今にも崩れてしまいそうな本だった。

「ねえ?その本は何?」私は彼に問いかけた。その問いに答えるように彼は私を指さした。次の瞬間、私は倒れてしまう。身体を動かすことができない。全身に這いまわる激痛。私の視線の先にあった腕はボロボロで、ぐちゃぐちゃに鋭利な何かでめった刺しにされていた。地面に横たわった私は彼の方を見る。彼の視線は私を見下していた。そして何も書かれていなかったはずのその本の表紙には私の名前が刻みつけられていた。

「ねえ…ここは何なの?」私は彼に問いかけていた。彼は黙っていた。「ねえッ!ここはどこだってッいうのッ!」私は問いかける。「違う。そんな問いかけはただの言い訳だ。お前は今を呑み込むことのできない己自身に対して言い訳をしているだけなんだよッ!」その男の声がした。あれ?私の見間違い?いや、見間違いなんかじゃない。彼の唇は一切動いていなかった...「ねえッ!何とか言ったらどうなのッ!」彼はずっと黙っていた。どうして黙っていたのかって?もうあなたはわかっているはずだからさ。「何が言いたいの?」「この現実は世界の表象でしかないんだよ。もともと心象でしかなかった、嘘偽りのない称えるべき世界を、おぞましく醜悪なものとして断じた誰かが、光という名のナイフでこの世界を分つ楔を打ちこんだ。こうして始まった二層の世界、真実という嘘と本当の取り繕いにまみれた世界、そして本当のことしか存在できない醜悪で、そして残酷な心象(ダークウェブ)世界。そう、これが神の世界だったのさ。」彼の唇は動いていなかった。じゃあ、一体この声は、この言葉は一体どこから来ているというの?

続く

読んでくださってありがとうございます。

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