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道順組立X

1人の配達員として、立派なもんだと、思われる業務。

それが夜間配達。

そして、この夜間配達を”単独”でこなせれば、間違いなく良い配達員になっている証拠。


「それじゃあ、夜間配達の”道順組立”。基本の2と行きましょう」

「ええ」


前回で、何を配りに行くのか。どのタイミングで戻ってくるのかを話したわけだ。

これは配達する我々が行う業務の話しである。


「色々な郵便物が来るんだけれど、自分達が現地に着いた時には会社を閉めているところ、受付さんがいないところの会社には行かなくていい。無理に届けに行かなくて良いって事」

「あ、それはちょっとラッキー」

「たまに欲しかったーって事もあるけど。基本はないし、明日回しでいい」


夜間再配で配達地域に着くのは、17:30くらい。(作者とこの班は、局から遠いのもあるが)。

もう帰るよーって、感じの時に荷物を届けに行くってのは相手側も嫌がるもの。そして、特別に欲しいかというより、確実に届けて欲しいから。ちゃんと荷物を受け取る人がいる、午前や午後に来て欲しい。


「”速達”がよく該当するけど。不在だったらポスト入れるじゃん。夜勤の時、普段なら対面で渡すのに、入らないからポストに入れて。明後日になって、”速達”が届いてないって申告される事があるからね。特殊な配達をしているところは、ポストの確認はそんなにしないんだよ」


お客様の手元に行かなきゃ、”速達”じゃねーって話し。”速達書留”も、夜間配達の場合、ちょっと困るのだ。

こーいった話は、班内にいる詳しい配達員がきっと教えてくれる。夜間の時は行かなくていい郵便物もあるという事だ。翌日回し。


「そーいう点を踏まえた上で。大切なことは、お客様の意図を知る事にあるよ」

「”お客様の意図”。自分達で頼んでるくせに」

「そうだねぇ。お客様なんて自分勝手な人が多いし、目につくものだからね」


そう言って、さねは再配希望をまず、時間順に並べる。

”17:00~19:00”

”19:00~21:00”

”20:00~21:00”

この3つに、時間指定を分けるのである。


「ま、当たり前の話を言うけれど。”17:00~”の郵便物を、自分の好きなように”道順組立”をしてね(言い忘れたけど、定形外とゆうパケットと一緒に書留だけは混ぜないでね。受領印忘れになる)」

「勝手に組んでいいんすね。2区分の”道順組立”って初めてだな」


出発し、配達地域に到着する場合。どこから入っていくかで色々と代わってくる。

通常配達と比べて、物数が大きく減少しているため、1区につき……今回の山口の場合だと、その指定は6件か7件くらい。全体でも30件くらいしかない。

1区を終わらせて、すぐに隣の地域にいけるよう”道順組立”をしてみた。


「うん。私もそーいう道順にするね」


通常配達と違って、夜間配達は自由で結構である。というか、お客様の希望で回る以上、決まったルートというのは組み込めない。


「これ、さねさんが以前言ってくれた。”線”で道順組立をしろっていう意味と同じ?」

「そうそう。あの時に教えても意味ないからね(その応用で組んでるだけ)」


決まったルートこそないが、到着から終わりまでを、1本の線で結べるように”道順組立”ができるなら十分である。とはいえ、現実には一方通行の関係などもあるため、同じ道を通ることも珍しくない。

”道順組立”ができなくても、”夜間配達”はマンション配達の延長と捉えて、一つ一つ回る区の郵便物を確実に届け、寄りミスをしない事が最短になる。

そして、もう1つ。


「今度は逆に”19:00~”を、”17:00~”の最後の位置に近い場所から順に並べていこう。局によっては、とんぼ返りとかUターンとか、色んな呼び方があるよ」

「ポケ〇〇でいうところの交換技ってわけですか。俺は〇ルチェ〇派です」

「なんでもいいけど。君の一番好きなポケモンはプテ〇だっけ?」


”19:00~”指定の郵便物は、”17:00~”指定の最後に近いところから始める。さねが言うように、今度はその位置から戻っていくように”道順組立”をしていくと、”19:00~”の最後は、自分が配達地域に入ってきた時と同じように、配達地域から局へ戻る道の近くになる。


「今日は初めてだからね。普通にそーやっていこう」

「はい!……って、2回目の配達があるんじゃ?」

「今日と明日は私が2回目の配達をやるよ。木曜日から一緒に2回目の配達をやろうか」



”夜間再配”は、局内に残った不在の郵便物の数だけあるという考えで概ね合っている。そのため、水、木から、再配する郵便物の数が増加していく。

数が少ない、月、火は、なるべく夜勤者を一人体制にして欲しいと言われていたが



【おおぉぉんっ、できないよぉぉんっ】


……別の作品で書いてしまった事なのだが。夜勤しか任されない人は、配達能力などに問題がある人が多く、かなりの頻度で夜間応援を頼んでくる(しかも、困るのが客なのをいい事に)。

ダメとは言ってはいないが、限度は考えて欲しいと思われる人が何人もいたというのが、当時の現状であった。さねや矢木のような配達員が1人でやった方が早いとまで言われるのも、珍しくないほど酷かった。

いや~、クビになったおかげで気分が晴れましたよ。遅すぎるぐらいだったけれど。



挿絵(By みてみん)


◇        ◇



ブロロロロロ


山口は配達先に向かう途中。これまでの、木下、矢木、さねの指導について振り返っていた。

口や態度では、散々なことを3人から受けているわけだが。

3人から総じて、自分から”よくやっている”という評価をちゃんと受け止めたところだ。



ピンポーン



「郵便局でーす。書留でーす」


山口には業務には、3人と違って大きな足枷を付けられていた。

”道順組立”に該当する事をあげるならば、


交付された”書留”の住所を記録すること。

”時間指定”や”速達”を優先してから配達業務を行うこと。


新人としては、なんだよそのメンドクセーって思いをするのも、仕方のない事であった。今こうして、”夜間再配”をやっている時に思えば



マジで拘束時間がエグイな。

ちゃんと確実な業務をしている方がまだマシで、速く終わることなんだな。



という気持ちである。

その気持ちを感じ取った上で、あの3人が異常なレベルだと痛感する。全然、いる場所が見えないくらい高いレベルの配達員達だ。

もし自分が、さね達の言いつけを無視していたら……。おそらく、この”夜間再配”にはもっと早く出されていただろう。しかし、確実性が磨かれないまま、この業務……この拘束時間をこなしていくのは危ない。

長時間かつ夜間でのバイクの運転、各種郵便物の取り扱い。おまけにどちらもミスれば、大事おおごとに発展するという困ったこと。

すげー面倒な事をやらせているのは、人間が処理できる範囲内で少しずつできるようになってもらうため。そりゃあさ、夜間応援までやりたくない。5分、10分の面倒で確実な仕事をすれば見逃されるのなら、良い話だ。先輩達はズルをしてるって思うかもしれないけど、先輩達から見ればそーいう確実な処理をして、夜間応援の免除やら他区応援の免除をされていたら、羨ましく思える。



「手伝いってのは、大変だ」


そう思うと。班内で初めて、ちゃんとした他区応援というのをしたと言える。

優秀な配達員というのはこれを自然とできる事。


「木下さん、よくやるなー。誤配する癖に」


文句はあるけれど、確かに切るわけにはいかない人材だと思う。

さて、夜勤配達の業務についてだが……。


「エリア、狭っ」


別の話で書いた事なのであるが、夜勤の業務というのは1人でこなすのは難しいが、2人でこなすというのは軽すぎるという問題がある。月・火は、不在にした郵便物の数が少ないため、再配の本数が少ないのだ。

そして山口が呟くほど、エリアが狭く感じるのは、今の山口が”通区”をしている2区だけの、”時間指定”・”レターパック”・”AMAZON”・”速達”のみである。

通常郵便の束を各家に間違いなく配る仕事ではなく、1件1件を順々に向かう仕事であるため、設定されている1区に留まり続ける時間はそれほど長くない。

夜勤業務の速さ・遅さ。そこに影響するのは、現在地から次に向かうお宅までの速さにある。色んなルートが考えられ、当日の物数と中身を見なければ何とも言えない。

だが、確実に言える事がある。


分かっている区の”再配達”は、特に困らない。


夜間応援を任される上で、その人に求めたい能力は”通区率”。班にある区の数は置いておくとして、その応援者が”3区”をこなせると有り難い。正直、1区・2区の配達しかこなせないとしたら、あんまり役に立たない。”調整”や”合流”ができないからだ。


挿絵(By みてみん)



◇         ◇



今日は応援に山口がいるという事で、ちょっとは楽なさねであるが、


「それでもキツイなぁ」


今日は残念なことに、さね側に再配依頼とAMAZONの偏りがあった。とはいえ、こなせません。などという男ではない。

翌日、山口にやらせるのだが……。夜勤業務において、”コレ”が結構厄介。当たり前じゃないかと思う事でも、慣れていないと面喰らう。



”17:00~19:00”、”19:00~21:00”、”20:00~21:00”

と、時間指定ならこの3パターンで分けておけば大丈夫。

その時間指定の隙間に、”AMAZON”、”レターパック”、”速達”を差し込み、合間に配る。

山口が応援してくれることで、周るエリアが減ったのは良かったが、その分出発時刻が遅くなった。


業務が早い人は、この”出発時刻”が早いのだ。

出発できる=”道順組立”の完了を意味している。

指導をしていたせいもあるが、現地に着いたのが17:50とはいただけない。17:00~を全て回るまで1時間くらい。


「ん~」


それが回り切れないという事は、案外ない。多少、5~10分。寄りミスである事もあるが、そーいう心配を実はしてない。

問題となっているのが、19:00~以降の再配を抱えている点なのだ。


何度か書いているが、さねは2回目の19:00~とAMAZON当日便を、局に戻って取りに行かないといけない。そのため、今抱えている19:00~の再配分をできるだけ、処分しておきたいという考えなのだ。


「やっぱり、木下さんに指導頼んだ方が良かったですね。時間ない」



当時の当日再配依頼は、19:00までが原則とされている。(コールセンター経由だと、21:00まで可能だったんだけどね)。

2回目の再配分とAMAZON当日便。これらが、19:00になって、局内で用意が完了されているかというと……NOである。

まず、再配分の郵便物は、定形外・追跡郵便・レターパック・書留・国際郵便・ゆうパックなどなど、色んな種類の郵便物があり、こいつが日付事……正確には保管期限によって、棚に分かれている。そして、局が対応している地域事にも郵便物があるため、18:30~19:15ほどの郵便課の皆様は



『ああああああああ』

『どれだあああああ』


っと、4・5人くらいで棚の中を探し回ります。当日、昨日、一昨日……あるいは、保管期間ギリギリなど……。とにかく、送られてくる番号を頼りに探し回るのです。

こんな状況で



『あのー、書留の返納をお願いします』

『死ねテメェ!今忙しいんだよ、バーーーーカ!!』

『窓口でお客様が~』

『〇〇〇〇〇で〇〇〇〇〇〇〇だ!!』

『コールから、再配依頼が』

『〇〇〇〇〇!!今、何時だと思ってんだぁっ!!19:00過ぎたんだぞぉっ!』


などという事をすると、ガチギレものである。返納チェック・窓口対応などもこなしながらという状況です。木曜・金曜・土曜は、キレまくりである。番号・日付・種類が分かっても、発見まで時間が掛かるし、番号の照らし合わせもしっかりせねば、ダメである。


『これ1/3って書いてあるぞ!あと2つ捜せぇぇっ!』

『種類書いておけっ!!再配依頼は全て頼めぇぇっ!!クソ客があぁっ!!』


郵便課をよく困らせる事に、1件に複数の郵便があり、その分だけ不在票を配達員が投函しているわけだが……。お客様は1つ頼めば、残りも来るやろっ!という気持ちが非常に多い。そして、お客様の多くは郵便局の事をどう思っているのか、分からないが……各世帯ごとに棚があるんだと思ってるらしい。そんなのねぇーから!あったら、郵便局が県レベルに大きくなるから!


『はあぁっ!?先週金曜日に不在切られた郵便物が、なんで一緒にこねぇーんだ!だって……再配依頼してねぇからだろ!!クズがあぁっ!』


1件に複数の郵便の場合、配達員は気を利かせ、1/2や1/3といった数字を、郵便物の保管期間下にチョロと書くことを言われているのだが……。それはその時、複数の郵便物を持っている事を示しているだけであり、前の日に不在をきった郵便物とは関係ないのである。

そのため、コレが届かないのはオカシイと、再配時にお客様から配達員に直接文句を言い、あるいはコールセンターに電話をして、頼み忘れていた郵便物を2回目で届けるという事がある。

これは当日の再配でもある。(とりあえず、それは次回)


『あーーーっ!ふざけんなっ、ふざけんなっ!』


2回目の再配依頼は、17:00~19:00までに問い合わせがあった、郵便物である。17:00~はそうでもないのだが、18:15~はかなりの数で再配依頼が来るため、それに追われている。

ちなみに1回目の時は、16:30~ぐらいから追われているのだが……。こちらは事前に1回目の分を用意しているため、比較的、郵便課は落ち着いていた。

そんな郵便課を超える忙しさになるのが


プルルルルル


「はい、こちら〇〇郵便局。コールセンターの隅田川です」

『ちょっと!なんであんた達は、二度手間、三度手間すんのよ!!再配依頼をしたのに、1つしか来なかったのよ!!黒猫ヤマトや佐川急便のように、纏めて届けなさいよ!!役立たず!!』

「うっせー、全部再配依頼をかけろよ、クソ婆(大変申し訳ございません)」

『心と声が逆ーーー!!?』


コールセンターだと、作者は思っている。ホントにこの部署の仕事はしたくねぇなって思う。

昼間などはそんなに多くはないのだが、夕方~夜間にかけての、電話の鳴り具合はハンパではない。そして、その再配は苦情・誤配・対応の悪さなどなど……言いがかりを含め、色々。今でこそ、郵便局・黒猫・佐川といった配送会社を始め、西濃、赤帽、AMAZON、ヨドバシカメラなどなど……色んな会社もお客様に知れただろう。


『黄色のバイクが一般道で80キロ以上も出して、私達を追い抜いたんですよ!交通マナーがなってないですよ!郵便局の方々は!!』

『郵便局に黄色のバイクはねぇよ!!(どうして運転しているあなたが、相手方の速度を把握できるんですかね?)』



こんなクレームが来て、責任者を呼べとか言われましたが……。それは、たぶん”ソクハイ”さんという最高速度で荷物をお届けするプロの方々です。高速道路だと見かけやすいと思います。運転上手いっすよ。

……今はかなり少ないですが、当時は、なんで郵便局に電話してくんねんってのが結構多いです。特にこの当時の高齢の方々には配達の仕事=郵便局だって思われていました。2010年代だと、まだ佐川さんも有名じゃないっていうね。末恐ろしい。


そーいった事などを含め、コールセンターが大変だったと思います。お客様に怒鳴られ、集配課、郵便課、課長席、使えねぇ部長共、……。というか、どいつもこいつもミスしやがって、なんでドヤ顔してんだ、この馬鹿共はって感じの面をして


「菓子とコーヒー、タバコもねぇとやってらんねぇ」


コールセンターの隅田川ちゃんは結構キレている。

ともあれ、2回目の再配達は、19:00までが原則として、要望できるリミットではあるが。そのリミットになったからといって、夜勤者の配達員が戻って来てすぐに出発ができる体制になる事はあまりない。

用意が早くても、10分はかかる。(まだ描写していないが、AMAZON当日便があるからな)。

遅いと、19:30、19:40という時間帯になる事もある。その原因の一つに



「書留が一本合わねぇーーー!!」

「こっちは荷物が見つかりませーーん!お客様、番号間違えてませんか~~!!」


全班に影響が出る事ではないが、書留の数が1本合わないとか、捜している荷物が見つからずに時間だけが過ぎていくとか。

ともかく、2回目の再配達の用意が終わるまでの間。現場で再配を配る担当者は、なるべく、1回目で受け取った19:00~の郵便物をお客様に渡しておきたい。

だが、やり切る事よりも大事なものがある。


「19:20まで粘りますか」


挿絵(By みてみん)

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