表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/31

道順組立T

カキーーーーンッ


ラジオから流れる豪快な一発。快音響かせたバットに、飛んでいくボールに


「おっしゃああああぁぁっ!!桐島のサヨナラホームラン!!こいつ、天才過ぎるだろーー!!」


絶頂の雄叫びを夜の22:12にあげる、木下。

夜間応援が終わってから野球中継を見る。

そんな至福の時間に


プルルルルル


「おう、木下だ」

『配達の仕事終わったらとっとと帰って来い!!夜勤の管理者が帰れねぇだろうが!!いつまで野球を外で見てんだ!!』

「ヒーローインタビューまで待ってろよ」


課長に叱られようが、我が道を歩く男。木下。

最近嵌まっているのは、若い野球選手の活躍を応援する事である。ビールを飲みながらやりたいもんだが、タバコで我慢してやる優しさ。


今回は彼がメインの話で、”道順組立”を上達させる業務についてのこと。


◇        ◇



プロスポーツ選手に限らず、その道のプロというのは恐れ入る。

しかし、郵便のようなインフラ事業は、その日に入った奴はプロ認定される。プロテストなんか参加するだけで合格をもらえる……貰っちまうのが、正しい事である。



「あ~~、木下。クビにしてぇ~」


誤配の多さと勤務の怠慢を思うと、木下をクビにしたい管理者や他班の人間などはいるが。配達能力と他区応援、メンタルの強さ、頑丈具合など……他の連中を圧倒できるモノを持っているから、とんでもなく自由な男。

経験年数だけの人間じゃない。それだけの人間だったら慕われもしない。


「だははははは、数をこなせ。数だ数!」

「ホント、ムカつくくらいに早い(誤配はするけど)」


2区を覚えた山口。ただ今週からは、ずーっと同じくに入るのではなく、交互に区を代えるという勤務にされた。2区くらいなら記憶で頼れるのもあるが、


「お前はまだ未熟。技術と体力、両方を鍛えてこいよ」


”道順組立”において、”記憶”が武器になるのは間違いない。だからこそ、記憶力が大正義と思っている配達員も多いし。どうすれば”記憶”できるかを考える。シンプルに毎日業務をこなしていくのが、無理のない成長。しかし、どこか甘えた成長になるかもしれない。

そんな甘えた成長で良しとするべきものだと思うんだけど、そうも言ってられない。


「くそ……」


”道順組立”をする際。記憶力に想像力、経験を放り込んでおくといい。……ようは、郵便物に記載された住所と配達原簿の情報を見比べるという、2次元のような記憶力では物足りない。数式、公式を覚えている程度では不完全。

区分口にある郵便物を引っ張り出したついでに、その区分口にある配達地域の情報まで頭に降ろしておく。それくらいの記憶を引っ張る。

慣れた地域における平地の”道順組立”をすると、苗字を見てれば道順に並べられる。山口が冷静で慎重な立ち回りをしやすい事と、木下が豪胆でいい加減だからこその違いがある。

練度の高い配達地区を任された配達員は、”配達原簿”を用意しても、眺めることはあんまりない。注意するべき箇所や最近、転出入があったところを見るくらいだ。

山口は”配達原簿”を1回は見るも、木下は自信があるところは見もしない。彼の経験に追いつくには、新人には不可能ではあるが、追いつく姿勢は大事



ブロロロロロ



「おーーーいっ、手伝いに来たぞ~!山口~」

「っ!……じゃー、お願いしますよ」

「おうよ!だはははは、あと1時間で雨が降るから、それまでに片づけるぞ!気合入れろー!」

「はい!」



木下の”道順組立”、配達能力の高さ。その第一の基本となるのは、”他区応援”である。この率が非常に高いため、本来の1区分よりも多くの配達地域をこなしている。

”道順を記憶する上で、配達する事が一番簡単な方法だからだ。”

そーいう意味で、午後の配達地域に関しては木下の”道順組立”の精度は良いし、久々に担当する地域であっても、知っている情報は矢木や山口よりも多い。


「!へー、こんな奴が入って来たんだ」


自分の覚えている世帯と、現在いる世帯の違いも、”他区応援”ならば知ることができる。

しかし、”他区応援”をするというのは、本人に相当な実力がないとそもそもできない。難しいレベルでこなしている事だ。


◇        ◇



パンッパンッパンッ


”道順組立”を上達させるうえで必要な記憶力。単純に配達をする、単純に”道順組立”をする。この2つが効果的であり、継続するべき事である。その次に来るのが、



パンッパンッ



”大区分”作業である。今日配る郵便物を区分口に入れる作業のことである。

郵便物を見て、適した区分口に投函、あるいは差す。そんな感じ。業務については、また今度として。

木下の”大区分”は、誤配の多さの割にかなり正確である(一言余計だ)。

郵便課についての文句を前回に書いたが、……配達業務において、あらゆるミスは配達員1人の責任である。正確な”道順組立”には、正確な”大区分”ができていないと成立は難しく、”道順組立”が遅い人ほど”大区分”のスピードと正確性がないというのが主にある。


2パスは機械で並べるが、手区分は配達員が分けるのだ。お前が間違えたら、お前は間違うぞ。そんな感じの気持ちを持って欲しい。


「ふーっ」


サービス残業やらの話になってしまいそうで、申し訳ない事ではあるが。

”道順組立”を早く、正確に、なっていきたいという場合。前日の”大区分”をするというのが、合理的な事だと思う。この”大区分”が終わっていないと、”道順組立”ができない。前日の内に”大区分”をしていれば、正確に組める時間くらいは”道順組立”に回せる。

そーいう業務的な利点もあるが、”大区分”作業のミスを無くすためのが大きい。


”道順組立”と”大区分”の作業の違うところとして、


”道順組立”は”配達原簿”などのおかげで、業務中に確認する事が徹底された作業に対し。

”大区分”は、区分中に郵便物をちゃんとした位置に入れたかどうか、確認する術がないのだ。特に定形外の誤配が多い人に、間違いなく言える事は、”大区分”を間違えているからだ。定形外は機械処理されても、地域事に分けているだけ。



配達や”道順組立”による”他区応援”が難しい場合は、”大区分”をする事を勧める。ただし、次の日に違う人が担当される場合。郵便物の入れ間違いは、腹が立つので気を付けて欲しい。

色んな地域をたらい回しにされると、”大区分”の業務で転居こそは把握できないが、どーいう人がいるのかは分かるため、記憶に繋げられる。


木下の他区応援は、配達だけではなく、大区分においても結構してくれる。



◇        ◇


バンバンバンッ



机の上に郵便物を置いて、”あて所”事故印を押す木下。これを自分が配達できる区で行う。

木下からすれば、全区の担当である。

彼もまた、さねと同様に郵便物がなんなのかを察して、事故づけをしている。(さすがに毎日じゃねぇけど)


「んーー」


何気ない事であるが、事故印を押す際というか、その配達地区の郵便物を手に取る以上。その机にいくからか。

転居データや転送シールの期限などを確認する事も珍しくない。



「転送切れてんのか。ほーん」


そして、数日、数週間、数か月と。担当する事のなかった配達地域であっても、どいつがいないのかは判断するし、その住居がどーいうところなのかは把握しておく。

木下の感覚では、”なんとなく”。そんな感じではあるが、ポストに投函する配達時になると、非常に警戒を強めて


ガコォンッ



「……あ、やべっ。隣の家の奴を入れちまった」


昔、住んでいた住人の郵便物はいれない。(なのにこいつ、隣の家の郵便物を誤配しやすい)。



◇      ◇


木下本人も言っているように、まずは”数をこなせ”という。

新人くらいの配達員ならば、”道順組立”、”配達”、”大区分”、”事故づけ”の順に、担当地域の事を覚えておくと良いだろう。

色んな地域をたらい回しにされている身として、久しぶりに入るところも覚える方法の1つに



ピンポーン


「おーい!書留で~す」

「あなたホントに軽いわね」


”夜間応援”に出るというものもある。(本音、やりたくはないが)

夜間再配のお宅というのは、当たり前の事ではあるが、その地域に住んでいるという事である。もう一つに非常に郵便物や書留を頼みやすいという傾向もあるのだ。


とても正直に酷い話を言うと。


追跡郵便や書留などをちゃんと配達して頂ければ、受け取るお客様達は、どーーーーでもいいとか思っていらっしゃいます。

追跡郵便や書留などが頻繁にあるお宅は、どの地域だろうが覚えておくと、”道順組立”などでも迷わないで業務する事ができる。


ともかく、木下ほどの能力のある人間となると、そもそもの業務量が非常に多いため。結果的に出来てしまうという人間になる。自分がやった方がミスも対処しやすいし。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ