道順組立P
業務の指導方法はいくつかあるが。
レベルアップする上で、純粋に作業に取り組む時間を増やすのがいい。
「どぅああああぁぁっ!」
山口、書留87本。ポストに入らないタイプの郵便物、17件。7コマのみであるが、自力で組立を行った郵便物の配達完了!!
「はーはーはー」
戻ってきたのは、15時27分。
無論、昼休憩なし。
「まぁまぁの速度だな」
「うっせーーーーー!!!ぶっ殺すぞ、テメェ!!俺、今!超パワハラされたと感じたわ!!ここまでぶっ通しで午前配達したの初めてだよ!!出発、9時32分だぞ!!」
矢木の辛口評価に対し、さすがの山口もブチ切れ。
その山口に追い打ちをかけるように
「じゃあ、残りのコマの”道順組立”をしてから午後の配達に出ろよ。1コマも組んでねぇからな。時間指定は俺が持ってやったからな」
「夕方・夜間の配達になるわ、ボケぇっ!!」
何考えてんだ、ボケェというこのイカレぶり。
並の配達員なら逃げ出してもおかしくない。
「というか、この班に所属したら誰でも逃げ出したくなりますよ」
真面目にそう思うレベルなんだよな。って、すれ違う形で出発したのは実である。ホントに組立をしなくていいのかと、矢木に交渉したのだが。するんじゃないと、矢木に止められた。
ここは任せろっていうアドバイス。
これほど長い時間までやらせるのは、この班ぐらいである。今日の物増でやらせるのは、こいつ等しかいない。
さすがの山口も30分の休憩と遅い昼飯を頂く
班内に戻って来た時には、マジで誰もいなかった。強いて言うなら
「兵多、頑張れよ」
「手伝えよ!!出発、18:00になっても知らんぞ!!」
自分の父親、山口部長が矢木に代わって山口を監視するという。こいつもパワハラ部長じゃねぇかという、直球の感想を抱く。
これに関しては仕方ない事だが、”道順組立”の厄介ぶりを説明するためと、山口がよーやっとるわっていうせいでもある。
「はーっ、クソが……」
午前の”道順組立”と午後の”道順組立”は、難易度が違っている。
簡単に言えば、仕事が始まったばかりで疲れが出てない午前の”道順組立”は楽で、いくら昼飯をとって休憩したとはいえ、疲れが残る午後の”道順組立”はキツイ。
「ねむぃっ……」
”道順組立”は配達と違って、とんでもなく単調な作業で眠気を誘う。昼飯を食べると、これが結構な眠気に襲われる。配達で疲れた下半身がもっともっと、休息を求めて脳内に眠るよう指示を出す。
配達員の中には、休憩前に”道順組立”を終わらせてから休憩をとる人もいる。理由は眠すぎて、”誤組立”をしてしまうため、帰局後なら集中し切った状態で”道順組立”を行えるからだ。”誤組立”をしてしまうと、配達のどうのこうのでは”誤配”を防ぐのは難しい。
山口が今までこーいう経験がないのは、やっぱり才能の面が多い。未経験の人は、2週間ほどで仕事の疲れを感じ、集中力を切らしてしまうケースになりやすい。
矢木はしょうがねぇからパワハラをして、その状態を無理矢理作らせた、と言っていい。
「うぅぅ」
こんな疲れた状態で仕事とかやってらんねぇ。
「ふぁっ……」
仕事の大半は、やってらんねぇ事ばかりなものだがね……元ニート。
仕事内容を理解するのと、実際に仕事をいつもの状況・状態でこなせるかは別問題。学校で言えば、授業でしてきた事がテストで活かされるものか。そーいうところである。
疲れがある、疲れが残っている状態で、いかにして普段通りの作業をこなすか。あらゆる仕事において、大事である。一歩間違えば、パワハラ認定も仕方ないこと。そうすぐに叫ばずに、そんな普段と違っている状態で普段通りになれるか。
”道順組立”、”配達”という業務ではどのような出来事が生じるものか。
「っ……」
まず、疎かになってしまうのが、郵便物を道順に組めないという現象である。
思いの外、頭を使い、手を使う動作。体力がある午前中ならば、しっかりと”配達原簿”を見たり、頭の記憶から引っ張り出して郵便物を並べていくのであるが、疲れていたり眠かったりすると、目による確認や手の動きがいつもと違う動きになる。
野球の投手が球数が増えるに連れ、球速と制球を乱していくのは筋肉の疲労だけでなく、投球動作においてもなんらかの手抜き、通常と異なる不自然な動作が起きているからだ。その疲れた状態の中でどのような動きになってしまうのかを把握し、また疲れた状態になり辛いようフォームを試行錯誤して、一流のプロになるというもの。単純な力の世界ではない、技術の世界でもある。
”数字と漢字を目で見て、道順に並べる”
それでは不十分。疲れた状態で、そのような頭で”道順組立”をしている新人は、必ずミスをする。(たまに寝ながら、組立する人もいるし)
間違いやすい箇所。同性同番地があるか、似たような住所があるか。
たぶん、いるだろう。
そーいう気持ちが”誤組立”を生んでしまう。
気持ちを維持するのが難しいのは分かる。そんなのは誰だって分かる。それでも仕事でそーなると、突然に堕ちていく事もある。車やバイクに乗るんだったら、その危険性も把握して欲しい。
「………………」
間違えて”誤組立”をしてしまう原因の7割は、担当者の疲労、精神状態にある。
それを改善するとしたら、日ごろの私生活を見直すとかして欲しいものであるが……。
ここではそーいう厳しい状態で、どうやって”道順組立”をするべきか。普段からどーいう風に思っているかという話になる。もちろん、私生活の見直しが最も有効であるけれど、難しいんで……。
”道順組立”における単純作業の場合、担当者が普段からどーいう”道順組立”をしているか。規則を、身体に染みつかせることが大事である。
最初の方で、木下が言っていた事ではあるが。
『郵便物の並べ順を、小さい方から並べている』
『郵便物の向きを一定にする』
『同性同番地の場合は、付箋やクリアファイルの使用をするか、郵便物の向きを逆さにする』
『追跡郵便物は裏返しにして、道順に並べる』
このような基本動作を普段からしているかどうかが、とても助けになる。
疲れた状態でも基本動作を徹底していれば、必ず身体もそー動く。そーならないのは、基本動作が染みついていないからだ。反復練習で精度が良くなる仕事だ。
癖そのものを基本動作として、取り込むことが正確になる。
また、自分自身が時折間違えてしまう。通常の状態でも”誤組立”をしてしまう箇所や特徴を把握するのも有効である。人それぞれなのであるが、
作者の場合。
”追跡郵便”が比較的多い家が、同番地の平地で前の方に並びやすい。
これは裏返しや向きを変えたりするせい、毎日のように来ている意識が強くて、順番を間違えてしまうからだ。対策として、投函する際に注意しながら見る……それでカバーする。
集合住宅で、昔住んでいた住民の郵便物を誤って組んでしまう。記憶頼みで組んでいると、1週間~1か月前にいた住民を思い込みで組み込んでしまうケースがある。もちろん、杞憂で終わったりする事もあるが、配達先では誰かが転居していたはずの箇所には注意をしており、なんか違うなってわずかでも現地で感じたら、持ち戻ってくる。誤配の方が面倒になるので、翌日回しも構わないとする。(表札を出してくれてれば、基本は入れてるんだけど)




