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道順組立Q

誤配をしてしまった。


「すみませんでした」

「いや、珍しいなーって……。くっついてたんですよね~」


その謝罪対応をしたのは矢木である。それで誤配をしたのは彼ではない。山口だ。

作者の短編だと、大抵お客様がキレているような描写が多いが、9割はどーでもいいとか、正当処理してーぐらいの感覚で渡してくれる。こーいうお客様にはホントに以後気を付けております。

残り1割は滅茶苦茶怒るし、うぜっとか思ってますし、その誤配回収の4割くらいの確率でウチじゃねぇーんだもん……。



◇       ◇


「気を付けろよ、山口。客は特に怒ってなかったけどよ」

「…………うっす」


意外なことに矢木は山口に怒らない。キツイ指導方法をさせている自覚はあるからだ。自分自身も、相当なミスをしてきたからだ。


「だははははは!山口よー、誰にだってミスはあっからよ!なー、矢木!怒るんじゃねぇぞ?」

「お前昨日”追跡郵便”を2か所も誤配しやがっただろうがぁぁっ!!くだらねぇミスしてんじゃねぇぞ!!ゴラァァッ!!何十年やってんだ、テメェっ!!」

「だははははは!わり~」


一方で、長年勤めてやがるのに、相も変わらずウッカリで”追跡郵便”を誤配していた木下。その1軒の回収と謝罪をしていた矢木は、当然のように激怒である。なお、木下は慣れているから飄々と流し。強い。メンタル強い。そのメンタルを配達の方に割り振れ!

郵便物に品質の差があり、特に”追跡郵便”の誤配の叱咤は結構大きい。不着申告の話にもなるが、”追跡郵便”の不着は、9割方は郵便局側が悪く、担当者まで特定されるからだ。班全体から配達員個人に叱責があるのは、悪いんだけど当然。パワハラでもなんでもねぇんだよ。



「うーん……気付かなかったか、俺」


山口の誤配内容だが、郵便物の”圧着による誤配”である。これは”道順組立”よりも、”大区分”作業によるミスなので、こちらで取り上げるのはどうかと思っているんだが、せっかくという事でザックリと原因を見ていこうと思う。


「そーいう”誤配”だったらよ、”何やってんだ郵便課、ちゃんと仕事しやがれ、馬鹿野郎!”って感じに開き直った方がいいぜ」

「木下さんが言うと、マジでムカつく」



配達員だけじゃない、誤配の原因についての研究をする。

今回、山口がやってしまった誤配。

郵便物圧着による誤配。


このケースは薄っぺらいビニール袋で包まれたDMダイレクトメール、ファンクラブの郵便物や、”公共料金”や”年金機構”、”年賀状”などの大量のハガキサイズの郵便物で発生しやすい。


配達員も内務の郵便課も指サックを付けて、業務をしているのだが。それでもこのタイプの郵便物の圧着に気付けない。機械なんてもっと気付かないで分けてしまっている。今でも人の手で分けられている物も多い。

原因の多くは、郵便物同士に発生する静電気によるものである。これはホントに馬鹿にできなくて、一通の郵便に3通もの郵便物がくっついてる事も珍しくない。そして、配達員の集配も内務の郵便課も全然気付かない。

身近な事例だと、スーパーの野菜バラ売りコーナーにある、小さい袋などをひらけない状態。指を濡れタオルや舌で濡らしておかないと、開けないような現象。


「これでミスしたらよ、俺達しか怒られないんだぜ。郵便課も行ってこいよ」


お客様目線だと、当たり前であるが。配達員にしか怒らないし怒れない。ポストに入れているのは、お前だろって感じである。ただ、郵便物の圧着に関しては、郵便課がなんとかしろって作者だけじゃなく、配達員の方々は思っております。

なんで?っていうと、圧着をやらかしてる時点でくっついている郵便物の大半は、翌日に届く事が確定していて、誤配の危険性も増やしているから。お前等のミスで郵便物の到着が遅れるんだよ!……滅多にないですが、ファンクラブの郵便物や”公共料金”でこれをやられると……


【みんなが届いているのに、どーして私だけ届かないんですか!?】

【いや、知らんけど……】


集配側はなーんにも分からず、ボコボコにされるだけである。捜しようもないのである。

そして、郵便課は


【圧着する郵便物あるから、気を付けて組立、配達して~、俺達知ら~ん。責任ねぇから】


そんな態度です。

前に少し書きましたが、集配課と郵便課はクソ仲悪いです。個人個人では仲が良いのはいますが、組織で見ると、とても仲が悪いです。色んな原因がありますが、水と油です。いちお、集配課が異端過ぎますし、悪みたいな印象が同じ職場で働く人も、お客様からしても思われております。


「”道順組立”でハガキが連続して並ぶ場合は気を付けろ。”区分”以外の時でも、くっつく可能性がある。指サックして捲るだけじゃなく、人差し指と中指で、持ってる郵便物の厚さでくっついているかいないかの区別はつけろ」

「そんなん気付けるもんですか?矢木さん」




矢木の場合。

かなり上級者向けではあるが、慣れた配達員や内務さんは、郵便物を手に持っただけでハガキの圧着にすぐに気付いたりする。ハガキが圧着しやすい原因に、一つの差出人から大量に発送されている事が要因になっている(公共料金はこれが起きやすい)。

そのため、1枚1枚の厚さが異なっている郵便物、あるいは端っこで段差みたいにできた郵便物があると、気付いたらサラッと剥がしてしまう。

新人さんなどは”道順組立”や”配達”ばかりに気を取られてしまうので、このような圧着する郵便物の配達はかなり苦手としている方が多い。配達されたお客様も気付かない事だってある。

ビニール袋の薄っぺらいのは、静電気がヤバイ。その手の郵便物を手に持ったら、角を人差し指で触れながら下になぞるといい。チクチクって、2,3回ほど感じたらくっついてるんだなって分かる。けれども、それでも気付けないくらいピタッとなってる事もある。厚みや固さが足らないからだ。



「それでも気付けるが、郵便物の”質感”も大事だな。ハンターハンターのヒソ〇の薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)は、見た目は変わっていても、触れば簡単にバレるというものだ」

「露骨なハ〇ターハン〇ーネタ。ホントに好きだな。木下さんにではないですけど……」

「封筒とハガキは指が触れた感覚だけで違いがハッキリしてるし、ハガキ同士でも使用しているハガキによって大きく異なる。ペラペラしているのとしっかりとした固さのあるハガキは、気を付けてれば分かるぜ。これは配達時にも役立つから覚えておくように。指先で違い把握できるようにな」


木下の場合。

こちらは大量に差し出された、似たようなサイズの郵便物が複数もあった場合に有効なもの。”年賀状”が比較的分かりやすい。”年賀状”はサイズこそ、ほぼ同じであるが、裏面に印刷された質感は1枚1枚異なっている。


「”指サック”してる親指でも、強めに握れば質感は分かる。親指と人差し指、中指で同じ”質感”だったら、まず1枚しか手に持ってねぇ。”公共料金”のハガキと、DMダイレクトメールのハガキはこの”質感”が大きく異なるから、その違いで”圧着誤配”を察しろ。経験しろ。感覚の問題が多い」

「そうそう。焦る必要はねぇ。数をこなせ」


”公共料金”類のハガキは、厚みが大きい。これは広げるタイプが多く。逆にDMダイレクトメールのハガキは、広げるとかは特にないため、ホントに1枚だけになっていて、薄い。

”公共料金”のハガキも圧着はしやすいが、ハガキそのものに厚みがある分、”指サック”の指送りで圧着をとれることが多い。基本動作の徹底さえすれば、回避できる。


「”道順組立”で、基本は同じところに複数の郵便物がある場合、小さい順から並べるって言ってるだろ。あれには色々な目的があるが、まずはこの”圧着誤配”を防止するためだ」


薄っぺらいハガキだと、一通しかとっていないと思ったら、後ろにくっついていた。というパターンの誤配もある。

”道順組立”にしっかりとした法則を用いていない場合、その時の違和感に気付けないで誤配をするケースが多々あるからだ。普通に気付くだろって思うけれど、”質感”が非常に似てたり、集中を切らしているとホントにある。



「仕事って集中力と体力が必要なんですね」

「つーか、どんな仕事も一定の水準は必要だよ」

「足りないもんなんかない」


簡単そうに思える仕事も、実は大変に思える事はしばしば。

むしろ、アリアリか。


挿絵(By みてみん)

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