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絶望

 台風《たいふう》が通過《つうか》すると、日本列島《にほんれっとう》はすっかり様変《さまが》わりしていた。都市部《としぶ》では、いたるところに巨大《きょだい》な穴《あな》が開《ひら》いていた。舗装道路《ほそうどうろ》の下《した》の土《つち》が流《なが》されていたからだ。事前《じぜん》にシナプスたちがスカスカにしておいた。そこへ、台風《たいふう》による地下水《ちかすい》の上昇《じょうしょう》で、かろうじて支《ささ》えていた土《つち》が流《なが》されてしまった。ビルが1つ傾《かたむ》くと、隣《とな》り合《あ》ったビルが次々将棋倒《つぎつぎしょうぎだお》しのように倒《たお》れこんでいった。都会《とかい》のミステリーサークル。0メートル地帯《ちたい》では水没《すいぼつ》するところも出《で》た。

 山間部《さんかんぶ》では、果樹園《かじゅえん》など保水力《ほすいりょく》のない斜面《しゃめん》が崩落《ほうらく》していた。その土砂《どしゃ》により川《かわ》が氾濫《はんらん》。下流《かりゅう》の街《まち》も水《みず》に飲《の》み込《こ》まれていた。国《くに》は都市部《としぶ》を復旧《ふっきゅう》させようとした。そのため地方《ちほう》は完全《かんぜん》に孤立《こりつ》した。

 未曾有《みぞう》の危機《きき》にもよらず、交通《こうつう》や通信《つうしん》が麻痺《まひ》した官邸《かんてい》は終日閣僚不在《しゅうじつかくりょうふざい》のまま時《とき》が流《なが》れた。


 ロシアでは永久凍土《えいきゅうとうど》が溶《と》け始《はじ》め、太古《たいこ》の微生物《びせいぶつ》たちが復活《ふっかつ》を始《はじ》めた。それらのいくつかは免疫《めんえき》のない人類《じんるい》に伝染《でんせん》していった。


 アメリカは火災《かさい》がカリフォルニアやロサンゼルスなどの大都市《だいとし》にまで次々(つぎつぎ)と迫《せま》ってきていた。一見森林火災《いっけんしんりんかさい》は植物《しょくぶつ》にとって不利《ふり》に思《おも》える。しかし、放置《ほうち》されている山々(やまやま)には成長《せいちょう》の余地《よち》が無《な》く、害獣《がいじゅう》たちがはびこっていた。これらを一掃《いっそう》し、気候《きこう》の変化《へんか》に適応《てきおう》した植生《しょくせい》に変《か》えるには焼《や》き払《はら》うのが効果的《こうかてき》だった。それに、大規模火災《だいきぼかさい》によりCO2濃度《のうど》が上《あ》がればより温暖化《おんだんか》が進《すす》み、裸子植物《らししょくぶつ》にとって都合《つごう》がよくなる。


 人間達《にんげんたち》は、数年以内《すうねんいない》に地球《ちきゅう》の平均気温《へいきんきおん》が3から4度上昇《どじょうしょう》し主要《しゅよう》な沿岸都市《えんがんとし》は水没《すいぼつ》するというシミュレーション結果《けっか》が公表《こうひょう》され、戸惑《とまど》っていた。特《とく》に沿岸部《えんがんぶ》に工業地帯《こうぎょうちたい》の多《おお》い中国《ちゅうごく》は株《かぶ》が暴落《ぼうらく》し、人々(ひとびと)は海岸《かいがん》の都市《とし》から逃《に》げ出《だ》す準備《じゅんび》を始《はじ》めた。

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