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テロ

 数年《すうねん》で海岸《かいがん》に近《ちか》いところは水没《すいぼつ》する。つまりは、復旧《ふっきゅう》しても無駄《むだ》になる。こうして、東京《とうきょう》、ニューヨーク、香港《ほんこん》などの海抜《かいばつ》の低《ひく》い大都市《だいとし》は廃墟《はいきょ》となった。人々(ひとびと)は被害《ひがい》の少《すく》ない、より高台《たかだい》の地方《ちほう》へと都市機能《としきのう》を移《うつ》そうとした。しかし、次々(つぎつぎ)と起《お》こる不可解《ふかかい》な事故《じこ》により、建設《けんせつ》は遅々(ちち)として進《すす》まない。

「まるで、モグラの大群《たいぐん》でもいるかのように、工事現場《こうじげんば》は一晩《ひとばん》で穴《あな》だらけになる。この国《くに》は祟《たた》られている。」

 工事関係者《こうじかんけいしゃ》は気味悪《きみわる》がって逃《に》げていく。物資《ぶっし》は不安定《ふあんてい》ながらかろうじて流通《りゅうつう》していたが、いつ道路《どうろ》が陥没《かんぼつ》するかわからない状況《じょうきょう》にあった。


 ロシアの永久凍土《えいきゅうとうど》の溶解《ようかい》は国《くに》を東西《とうざい》に分断《ぶんだん》した。西側《にしがわ》は比較的被害《ひかくてきひがい》が少《すく》なかったものの、東側《ひがしがわ》は孤立《こりつ》した。かれらの救済《きゅうさい》は絶望的《ぜつぼうてき》だった。現時点《げんじてん》ではヨーロッパと南半球《みなみはんきゅう》だけが被害《ひがい》は局所的《きょくしょてき》だった。

 アメリカでは、職《しょく》を失《うしな》った移民《いみん》たちの暴動《ぼうどう》が起《お》こり、逃《に》げ出《だ》す労働者《ろうどうしゃ》も増《ふ》えた。政治機能《せいじきのう》は正常《せいじょう》だったが、生産《せいさん》や治安《ちあん》に関《かん》しては停滞《ていたい》してしまった。


 数日後《すうじつご》、世界中《せかいじゅう》の政府《せいふ》が隠《かく》し続《つづ》けてきた情報《じょうほう》が暴露《ばくろ》される事態《じたい》になった。各国《かっこく》の主要《しゅよう》な原子力発電所《げんしりょくはつでんしょ》が相次《あいつ》いで制御不能《せいぎょふのう》に落《お》ちいっていたことが公表《こうひょう》された。暴走《ぼうそう》したわけではない。テロだ。何者《なにもの》かに一斉《いっせい》に占拠《せんきょ》された。

「われらは、神獣組《しんじゅうぐみ》。主要国《しゅようこく》の原子力施設《げんしりょくしせつ》のいくつかを占拠《せんきょ》した。いつでも暴走《ぼうそう》させることができる。」

 冷却《れいきゃく》を止《や》めれば勝手《かって》に暴走《ぼうそう》してくれる。これほど簡単《かんたん》な爆弾《ばくだん》はない。逆《ぎゃく》に、孤立《こりつ》させようとして外部《がいぶ》から電力《でんりょく》を絶《た》たれることもない。篭城《ろうじょう》するにはうってつけな場所《ばしょ》だ。施設《しせつ》は地下《ちか》から突如現《とつじょあらわ》れた未知《みち》の小型生物《こがたせいぶつ》によっていともたやすく占拠《せんきょ》された。植物由来《しょくぶつゆらい》のシナプスの放射線《ほうしゃせん》への耐性《たいせい》は、動物《どうぶつ》とは比《くら》べ物《もの》にならないほど高《たか》い。設備《せつび》に関《かん》しては進化《しんか》したアルマの脳《のう》にインプットされている。すべては、おろかな人間達《にんげんたち》が無防備《むぼうび》に与《あた》えてしまった知識《ちしき》だ。

 こうして人類《じんるい》はその地位《ちい》を最上位《さいじょうい》から最下位《さいかい》へと一気《いっき》に転落《てんらく》させた。

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