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煮干し

魚臭くない出汁が取れるなら、昆布だしとあわせて塩加減を調節し、

背油無しの尾道ラーメンを再現できるんじゃないか?


テレビで尾道の映像を流しながら行った気になれば旅行費用も浮かせてコスパいいんじゃないか?

変な貧乏根性を丸出しにしたのがそもそもの始まりだった。



健康志向が浸透してきたのか、減塩で煮たものがスーパーでも出回るようになった。

白口と呼ばれるそれの場合はありがたいことに無添加だ。


カタクチイワシを使ったせとうちの煮干しは宣伝通り、

柔らかく、魚臭くない上品な出汁が取れた。


僕が身の部分とそれ以外、頭とはらわたを分けていたら子供が近寄ってきた。

いつもと違う様子に興味を持ったのだろう。


「いまから出汁をとろうと思ってね。

 雑味がでるからこうして身の部分とそれ以外を分けるんだよ。

 でも栄養があるのは、はらわたの部分だよ」


そうして僕は黒い、ミイラ化したところを一つつまんで食べて見せた。


「見た目はアレでも、意外に美味しいでしょ?」


子供も同感だったらしい。以前食べさせた煮干しは塩味がきついし堅かったが、

せとうちの煮干しは、しっとりしてて子供でも食べやすいようだ。


こうして食べ比べてみると内海と外海、同じイワシなのに違うんだなと思った。



一晩、冷蔵庫にミネラルウォーターに浸しておいた煮干しと昆布を器に入れて、

この他にホタテエキスや醤油を加えてスープにした。

後は梅干しを入れた鍋で麺を茹でて出来上がり。


「パパ、なんか物足りない」


そんなことを言われたから乾燥アオサを入れてみた。

それはみるみるうちにスープを吸ってしまい、もはや汁なしのそばだ。

しまった、と思った。


調子に乗りすぎた。僕にとって寿司とラーメンは鬼門だったんだ。

チヅルさんも一口食べてしまったようだ。

もうこれは何を言われるかわかったもんじゃない。


「カイさん。これ何?」


「小麦粉に塩分を加えて煮てみたような何か……でしょうか?」


「これ美味しいと思ってるの?」


どう答えよう……旅行につなげられると厄介だな。


「わかった、今からもうちょっと出汁を加えて味を濃くすればいいんじゃない?」


「あのさ……カイさん。それは外道のやることだっておっしゃってませんでしたっけ?」


「はい、申し訳ございません」


「この、まずいもの食わされました感はどうやったら私の記憶から消せるんだろうか?

 あなた午前中から至高の料理人な雰囲気を醸し出し、私たちの期待値MAXにしてましたよね?」


「はい、作り直します」


「作り直すって同じものが出てくるってことでしょ?

 これはもう他で償ってもらわないといけないよね?」


「そうだ、そうだ」


子供まで調子に乗って来てる。

二人とも目が笑ってるぞ。

なんとか、この状況を押し戻さねば。


「あのー、スーパーで買ってきたスープ付きの生麺あるじゃん。

 それ今から作ろうか……っね?」


「みんなそれを越える感動を期待してたのに平均点以下もぐらされてー、

 なんか台無しー、実験台にされた感じー」


あのな……これだから飲食単価上がるんだろが?

求めすぎ、しかもがゴールぼんやりしすぎ。


「チヅルさん、たまにはこういう事もあるよ」


「そうだね、カイさん一生懸命頑張ってるもんね」


良かった、妥協点が見いだせそうだ。

次のご飯は少し良いお肉にしよう。


「そうだね、じゃあ次は……」


「次はお口直しに尾道旅行、エステのオプション付きだね」


「オプ……なんで?」



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