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江埼灯台と本土の夜景

江埼灯台は江崎公園から丘を一つ登ったところにあって、数台分だけど駐車場もある。

徒歩で、しかも階段を使うしかなかった。

太ももが悲鳴を上げる前に丘の頂にたどり着いた。


灯台といっても、みんなが思ってるようなロウソクみたいな形ではなく、

ずんぐりむっくりとしていて、可愛らしさがあった。

その高さは灯台のレンズを手に取れるぐらいの高さだった。


あいにく空は曇ってしまって夕日を楽しむことは出来なかったけど、

それでもここからの眺めは素晴らしかった。


夜が始まると本土の明かりが海と雲を照らした。

明石海峡大橋のメインケーブルに取り付けられた照明は、

ネックレスのように輝いていた。


ナギさんから預かった『せとうち日記』にも江埼灯台は描かれていた。

どうやらナギさんも、ここからの夜景が良いと感じていたようだ。


しばらく僕は夜景を、本土からの明かりを眺めていた。

肩に触れる空気は少し冷たく感じた。


夜景はまるで道に迷った人がようやく人里にたどり着いた時のような、安堵の気持ちを誘うものだった。

ほっとさせられて、今までの努力は間違ってはいないと言われているようだった。


せとうち日記にはナギさんの予言めいた面白い描写があった。


『光の道に沿って、もっと西へ行ってみよう。

 そこには、私が選んだ未来の一つがあるはずだから』



停めていた車に戻ってエンジンをかけた。

それと同時にスマホにメッセージが届いた。

強烈なスマホのバックライトはすぐに僕を引き戻した。

コンドーさんからだった。



[カイ君、]


[お久しぶりです。コンドーさん]


[あのさ……カイ君って瀬戸内担当じゃん]



コンドーさん、いつから僕は瀬戸内観光大使なんですか。

そのざっくりだいたい大雑把なレッテル貼れるのって才能だな。

僕はサイドブレーキを引き直してメッセージの続きを読んだ。


コンドーさんによれば友達の友達の友達から、

FPSとかTPSのゲームのプロモーションをしたいということらしかった。

ゲームの世界に作ったリージョンを過疎らせないようにしたいとのことだった。


[コンドーさん。今のゲーム市場って、

 賞金上げるとかSNSのそれ系のインフルエンサーにお金出すとかじゃないですか?

 地元の観光局がインフルエンサー雇って宣伝してもらうのと同じですよね]


[そうなんだけどねー

 ゲーム強い奴しか賞金もらえないじゃん]


[それをプロのeスポーツって言うんじゃ……]


コンドーさんは僕とブレストしたいのだろうか?

そういえば一昔前に水軍の財宝伝説ってあったよな……って思いながら考えた。


[その賞金って埋蔵しておくってのはどうでしょう。

 んでもってある程度の金額にならないともらえないとか、

 神社に納めないともらえないとかにすればいいんじゃないですか?]



詳しい話はこんな感じだ。


①埋蔵金は瀬戸内の各所に散らす、無条件に獲得できるものや

 ミッションクリアすると獲得できるものにする。

②他のプレイヤーやパーティーから埋蔵金を奪うことができる。

 方法は二つあり、そのうち決闘方式は名誉ポイントが勝者に与えられる。

 この名誉ポイントはモブキャラから食料を得ることが出来たりする。

③埋蔵金はゲーム内通貨に両替はできない。

 両替は神社へ奉納することで初めて両替が可能となる。

④そうなると神社にたむろする輩が出てくるので、

 名誉ポイントを払い出してモブキャラをパーティに加えることができる。


[つまり最終的には合戦になるってことです。

 コンドーさん、そんなリージョン独自のルールでコンテスト企画したらどうですか?

 強い奴が生き残る確率が高いならジャイアントキリング要素を強めたらどうかって話です]



僕のコメントを最後に、コンドーさんから返事がなくなった。

そろそろ本土に戻らないといけないし。

ダメだ。この人を待っていたら明日になってしまう。

僕はサイドブレーキを下ろしてギアを入れた。



翌日、コンドーさんから返事が来ていた。

多分、コンドーさんの中で妄想が膨らみすぎて返事が出来なかったんだと思う。

返事はとても短かった。

短い時ほどカオスな案件になるんだよな……また事業部長にお願いしないとだよ。



「カイ君、それナイス!」


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