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居酒屋のカウンター(前編)

テーブルはまだ埋まってないけれどあと小一時間もしたら騒がしい人達がやってくる。

昔はそんな人たちに声掛けしては取材していた。


今はコンドーさんの威光のおかげで、いくつかの店舗を仕切らせてもらってる。

お礼ってわけじゃないけど、お店のスタッフの食費をサポートしたりして、

大きな会社になるとお給料とか一存で上げたりできないからね。


一見チャラそうに見える子が、話してみると動きの良い奴だったりする。

僕の役目はそういう人を採用して長く居ついてもらうことかな。



「カイ君、おはようさん」


「オーナー、おはようございます。

 席、あたためときました」


そう言って、僕はオーナーがいつもすわる場所に加えて

もう一席あけて座った。


どうしてかって?

そりゃ、バイトの女の子がそろそろ上がる頃だからだよ。

オーナーはその子にご飯おごって、おしゃべりしてが趣味みたい。

自分の娘か孫みたいな感覚なんだろうね。


この店がもってるのはオーナーのキャラって感じだ。

立地は少し最寄り駅から離れている。

しかし過疎らず混まず、落ち着ける雰囲気が良いんだと思う。



というわけで、この人の真隣りに陣取ることにした。

この人はいつも同じ席、カウンターに座って食事をしている。

多分、自炊しないのだろう。服装からして会社員だ。

この早い時間からの入店ってことは金曜日は残業しないって決めてるんだろうね。


「すみませんいつも、テーブル席はそろそろお客さんが来る頃なので」


「やっぱりお店の方だったんですね」


「はい、左端にいらっしゃるのがオーナーで私はマネジメントみたいな仕事してます。

 いつもいらっしゃるようで、ありがとうございます」


「この店が一番、味付けが濃くないから」


「味が濃いと、美味しいって勘違いしちゃいますもんね」


僕はこの人とずっと会話しないといけないのかな、

機嫌損ねて帰られても店の売り上げが……どうしよう。

一通り、店の宣伝して間をつなげよう。


こうして僕は会社のホームページに記載されている文面を諳んじていった。

彼女にとって僕はBGMかラジオみたいな存在なんだろう。

これで、このお客さんが次も来てくれるならお安い御用だ。

ここはお店のこだわりをアピールだな。


「うちの店は土鍋でご飯を炊くルールにしてまして、

 そうすると食感がワンランク上がるんですよ……」


これってアレだよな……なんだっけっか、アラビアンナイトだ。

アラビアンナイトの逆バージョン。だったら落語居酒屋でいいんじゃない?

でも芸人さんスペースないしな、やっぱり自分の出番ってことになるんだ。

なんだろう、このボランティア感。


「お話面白かったです。

 特にせとうちの話が……地元はそちらなんですか?」


「ええ、まあ……母の実家が岡山でして」


「そうなんですか、私は淡路島です。

 同じせとうちですね!」


「(他県だけど)そうですね」


「私、ツムギっていいます」


「カイです」



そう言って、彼女は会計を終えて席を立った。

立ち姿はすらっとしてて、不思議と潮の香りがするような気がした。



なんだか視線を複数感じる。顔を見上げると初めに目が合ったのはオーナーだった。


「カイ君、困るな―お店でナンパしてもらっちゃ。

 他の子に示しがつかなくなるよねー」

「カイさんのこと好きだったのに、なんだか私ー瞬殺された気分です」

「先輩、仕事中に……見損ないましたよ正直」


「「「モテ期、到来だからってさー」」」


「なんでみんなそこハモれるんですか!」


「ニンニク多めで生姜焼き作ります」


「いらない!」


「LINEつなげとけば良かったのにー」

「こらっ!その若者言葉はカイ君、勘違いするぞ」


「少し一人にさせてください」


「だよねー、気持ちの整理? 作戦会議? 初動の遅れ取り返し?

 今からでも遅くない!みんなで追いかけよう」


「おかしな軍団、形成するのやめてください」


「カイ君、僕は自分の息子のようにうれしいよ。

 結婚式呼んでね」


「いつまで続くんですか、このネタで」


「ごめんね、酒の肴が足りなくて」


「ちゃんと注文してください!」


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