表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄されたので辺境で本気を出したら、王国の制度を全部書き換えてしまいました ―戦わずに国家を動かす追放領主の改革録―  作者: 水無月カレン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/101

第82話「遅れた真実」

「――違う、これは……」


エリスの声は、ほとんど息だった。


通信塔の中は、張り詰めている。


紙の束。

航路ログ。

信号記録。


すべてが“正しい”。


だが現実だけが狂っている。


「第三船団、現在位置!」


ガルドが怒鳴る。


「予定より南へ逸れてる!」


「なぜそんな……!」


誰かが叫ぶ。


エリスは目を閉じた。


呼吸を整える。


――崩れるな。


「……時間軸を確認します」


ゆっくりと目を開く。


指が紙をなぞる。


「出航時刻」

「通信送信時刻」

「受信確認」


順番に並べる。


一つずつ。


確実に。


レオンは何も言わない。


ただ見ている。


エリスの思考を。


「……ここ」


小さな声。


指が止まる。


「通信更新、三分前」


ガルドが眉をひそめる。


「それがどうした?」


エリスは言う。


「本来は“出航直前”に更新される」


「でもこれは……」


紙を見せる。


「出航“後”に更新されている」


沈黙。


レオンが静かに言う。


「届いていない」


エリスは頷く。


「はい」


「古い航路のまま出ている」


それだけなら遅延で済む。


だが。


「……違う」


エリスの声が低くなる。


「その後の修正が」


「別の航路に変わっている」


空気が凍る。


「誰かが書き換えてる……?」


ガルドの声。


エリスは首を振る。


「違う」


「書き換えじゃない」


一拍。


「“上書き”です」


通信の中に混ざった。


本物の後に、偽物が届いた。


どちらも“正しい形式”。


だから気づかない。


「二重信号……」


レオンが呟く。


エリスは頷く。


「はい」


「本物と同じ形式で、偽物を送っている」


「しかも……」


紙をめくる。


「遅延を利用して」


理解が広がる。


「……わざとか」


ガルドが低く言う。


「はい」


エリスの声は震えていない。


もう崩れていない。


「通信の遅れを“作って”」


「その隙に偽情報を差し込んでいる」


レオンが静かに問う。


「できるのか?」


エリスは答える。


「通常は無理です」


「ですが」


目を上げる。


「通信記録を持っているなら」


沈黙。


黒海。


ラグナー。


「……やられた」


ガルドが吐き捨てる。


「完全に情報戦だ」


だがエリスは首を振る。


「完全じゃない」


全員が彼女を見る。


「偽情報は完璧じゃない」


紙を指す。


「微妙にズレてる」


「三分」


「五分」


「七分」


レオンが言う。


「精度が甘い」


「はい」


エリスは頷く。


「だから見抜ける」


その瞬間。


空気が変わる。


さっきまでの混乱が消える。


代わりに――


集中。


「全通信、時刻差でフィルタリング」


エリスが指示を出す。


「許容誤差を一分以内に」


「それ以上は破棄」


伝令が走る。


通信が切り替わる。


「第三船団に再送信!」


「正規航路を再指示!」


光信号が飛ぶ。


時間が流れる。


数分。


長い数分。


そして――


「応答あり!」


エリスの手が止まる。


「第三船団、航路修正!」


息を吐く。


「……戻った」


小さな声。


だが確かな一歩。


レオンが言う。


「一つ取り戻した」


エリスは頷く。


だが顔は晴れない。


「でも……」


窓の外を見る。


海。


見えない航路。


「相手は分かってる」


低い声。


「私たちの仕組みを」


沈黙。


その時。


新しい報告が入る。


「通信塔、外部信号を検知!」


エリスが顔を上げる。


「外部?」


「未登録の中継信号です!」


空気が一変する。


レオンの目が細くなる。


「中継……?」


エリスの顔から血の気が引く。


「……そんな」


小さな声。


「ありえない」


だが報告は続く。


「位置は――」


地図が広げられる。


指が示す。


黒海と基準航路の中間。


「……海上です」


沈黙。


エリスが呟く。


「通信塔が……海にある?」


理解が追いつかない。


だが現実はそこにある。


レオンは静かに言う。


「作ったな」


黒海が。


新しい戦場を。


情報の中継点。


それは――


「通信の支配だ」


エリスの指が震える。


「……負ける」


小さな声。


「このままじゃ」


初めての弱音。


だがレオンは即答しない。


ただ言う。


「見に行く」


エリスが顔を上げる。


「え?」


レオンの目は変わらない。


「中継点を潰す」


その一言で、


次の戦いが決まった。


海ではなく。


情報の中心で。


決戦が始まる。

情報戦が本格的に始まりました。


ここからは「見えない戦い」が中心になります。

そしてエリスも、ここからさらに追い込まれていきます。


続きが気になる方は、ぜひブックマークと評価で応援していただけると嬉しいです。


次話もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ